ラウンド3:激論!『真理』の価値と実践~何のための真理か?~
あすか:「さあ、ラウンド3!いよいよ核心に迫りますよー!ラウンド1でそれぞれの『真理』の定義と到達法を、ラウンド2ではその『射程距離』、普遍性か個別性かについて伺いました。そして、ここからは…ズバリ、『じゃあ、その真理って、何なの?何のためにあるの?』という、価値と実践について、徹底的にぶつけ合っていただきましょう!」
あすか:「皆さん、ご自身の信じる真理を、それはもう熱く語ってくださいましたけど…正直に言って、わたくしのような凡人には、ちょっと難しすぎたり、現実離れして聞こえたりするところも…なーんて言ったら怒られちゃいますかね?」(ちらっと対談者たちの顔色をうかがう)
あすか:「ぶっちゃけて聞いちゃいますが、皆さんが命懸けで(?)追い求めるその『真理』、それは私たちに、どんないいことがあるんでしょうか?それで私たちは幸せになれるんですか?…現実世界で、役に立つんですか!?」
あすか:「この問いに、まずは最も『役に立つ』ことを重視されていそうな…曹操閣下!他の皆さんのご意見も踏まえつつ、閣下の考える『真理の価値』を、ガツンとぶちかましてください!」
曹操:(待ってましたとばかりに、ニヤリと笑い、他の三人を睥睨するように見渡す)「いいだろう、小娘。俺から言わせてもらおうか。御三方が高尚な言葉で語る『真理』とやらはな…結局、ただの言葉遊びか、現実から目を背けるための言い訳に過ぎんのではないか、と俺は思う。」
ピタゴラス:「ほう、言い切るな。」
ヘーゲル:「ふむ、手厳しい評価だ。」
曹操:「ああ、言い切ってやるさ!ピタゴラス殿、あなたの言う『数』の調和は美しいかもしれん。だが、その美しさで、凍える民に衣を与えられるか?飢えた兵に糧を与えられるか?」(ピタゴラスに鋭い視線を送る)
曹操:「ヘーゲル殿、あなたの言う『絶対精神』とやらは壮大かもしれん。だが、その小難しい理屈で、いつ終わるとも知れぬ戦乱を収められるか?疫病に苦しむ者を救えるか?」(ヘーゲルに向き直る)
曹操:「そしてキルケゴール殿、あなたの言う『主体性』は尊いかもしれん。だが、個人の内面ばかり見つめていて、迫りくる敵から国を守れるか?民の暮らしを豊かにできるか!?」(キルケゴールを指さすように)
曹操:「俺が求めるのは、そんな絵に描いた餅ではない!この手で掴める現実的な『結果』だ!乱世を平定し、天下に秩序をもたらし、民が安心して暮らせる世を創る!そのための知略、戦略、人心掌握、そして時には非情な決断を下す力!これこそが、真に価値ある『真』なのだ!他の御三方の『真理』など、この現実の前では無力!虚しい戯言よ!」(テーブルをドンと叩く)
あすか:「うわーっ!曹操閣下、一刀両断!他の皆さんの真理を『虚しい戯言』とまで…!」
キルケゴール:(カッと目を見開き、立ち上がりかける)「待ちなさい、曹操殿!あなたの言う『役に立つ』とは、なんと…なんと浅はかで、物質的な基準か!腹が満たされ、安全であれば、それで人間は本当に『生きている』と言えるのですか!?あなたの言う『結果』のために、どれだけの個人の尊厳が踏みにじられ、心が殺されていくのか、考えたことがあるのですか!?」
キルケゴール:「あなたの言う力や秩序も、結局は砂上の楼閣だ!内なる魂の渇き、虚無、絶望…この『死に至る病』の前では、あなたの覇業すらも虚しいものではないのか!?人間の真の価値は、現世的な成功などではない!この私が、いかに絶望と向き合い、主体的に自己を選び取り、神の前に立つか!個人の魂の救済なくして、真の価値などありはしない!」(声を震わせ、曹操を睨みつける)
曹操:「ふん、青臭い若造が。理想ばかり語って、現実から逃げているだけではないか。」
キルケゴール:「(今度はヘーゲルに向き直り、悲痛な叫びにも似た声で)そしてヘーゲル先生!あなたの言う壮大な『絶対精神』の発展のために、この私の苦悩や涙が、ただの『過程』や『道具』だというのなら…そんな冷酷な『真理』など、私には到底受け入れられない!それは人間を、巨大な体系の部品としか見ていない、あまりにも非人間的な思想だ!」
ヘーゲル:(冷静さを保とうと努めながらも、やや苛立ちを見せ)「キルケゴール君、それは感傷的な誤解だ!個人の苦悩を軽視しているわけではない。だが、個人の幸福は、孤立した単独者としてではなく、家族、市民社会、そして最終的には『理性的国家』という共同体の中でこそ、真に実現されるのだ。真理の価値とは、まさにその自由で理性的な世界の完成にある。君の言うような主観的な感情に閉じこもっていては、真の自由も幸福も得られんのだよ。」
あすか:「理性的国家…!ヘーゲル先生にとっては、個人の幸せも、ちゃんとした社会の中でこそ、ってことなんですね。」
ヘーゲル:「然り。そして、曹操君の言う現実的な統治も、その方法は未熟かもしれんが、無秩序な状態から国家という理性の形へと向かう、歴史の必然的な一歩として捉えることもできるのだ。」
曹操:「ほう、俺のやり方も肯定してくれるのかね?それはありがたいが、小難しい理屈は好かんな。」
ピタゴラス:(それまで静かに聞いていたが、ゆっくりと口を開く。その声は静かだが、強い意志を感じさせる)「…皆、目先のことに囚われすぎているようだ。物質的な豊かさ、一時的な感情の慰め、あるいは国家の安定…それらは全て、移ろいゆく、かりそめの価値に過ぎん。」
ピタゴラス:「曹操殿、あなたが求める力や結果は、しょせん現世限りのもの。死ねば全て失われるではないか。キルケゴール君、あなたの言う個人の主体性や情熱も、肉体の牢獄に囚われている限り、不完全なものだ。そしてヘーゲル殿、あなたの言う歴史や国家も、宇宙の永遠のサイクルから見れば、瞬きのようなものに過ぎん。」(一同を見渡す)
ピタゴラス:「真の、そして唯一の価値とは何か?それは、この輪廻転生の苦しみから解脱し、我々の魂が、その故郷である宇宙の根源…すなわち、数の調和と完全に一体となることなのだ。そのためには、現世的な欲望や感情から離れ、魂を徹底的に浄化し、数学と瞑想を通じて、宇宙の真理を観想するしかない。目先の『役に立つ、立たない』という矮小な尺度で、この永遠の価値を測ること自体が、根本的な誤りなのだよ!」(厳かに言い放つ)
曹操:「はっ!死んだ後のことなど、知ったことか!俺は今を生き、今を制するのみよ!」
キルケゴール:「永遠の調和…!しかし、この『私』という燃えるような個性が、その中に消えてしまうというのですか!?」
ヘーゲル:「ピタゴラス君、君の言う永遠性も、精神の弁証法的発展の、いわば『静止した』側面を捉えているに過ぎないかもしれんぞ。」
あすか:「おおおおーっと!ここに来て、4者4様、それぞれの『真理の価値』が真っ向から大激突!曹操閣下の『現世での結果が全て!』、キルケゴールさんの『個人の魂の救済こそ!』、ヘーゲル先生の『理性的な世界の完成!』、そしてピタゴラスさんの『魂の解脱と宇宙との一体化!』…もう、何が何だか!(笑)」
あすか:「これは…すごい!それぞれ譲れないものがあるんですね!ちょっとスタジオの温度、上がりすぎてませんか!?皆さん、一回落ち着きましょう!ね?曹操さん、その睨み、怖いですって!キルケゴールさん、拳、震えてますよ!ヘーゲル先生、一度座ってください!ピタゴラスさん、その神秘的なオーラ、ちょっと冷気を感じます…!」(慌てながらも、少し楽しそうに仲裁に入る)
あすか:「ふぅー!これは歴史に残る大激論ですね!ちょっと皆さん、頭も体もクールダウンが必要でしょう!この続きは、少し休憩を挟んでからにしましょうか!皆さん、わたくしたち自慢の休憩所、『失われし星空のサロン』へ、どうぞご案内いたします!」(ホッとしたように、そして次の展開に期待を込めて)