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七翼の恩災  作者: 井ノ上雪恵
“七翼の恩災”捜索編〜貫波〜
40/49

始まった滅亡のカウントダウン

 翌朝。

 異様な空気の重さを感じて、マイハは目が覚めた。

 すぐさま朝の支度を終え、エール号の自室から外へと移動する。


 ……コレは……。


 マイハの視線の先では、シーナフォレストがザワザワと不気味な音を立てて、目に見える程の濃く暗い“瘴気”に包まれていた。


「お嬢!!」


 ラキも起きて来たようだ。慌てた様子で、エール号から飛び出しマイハの隣まで駆けて来る。


「コレ……お嬢の言ってた“瘴気”、ですよね?……昨日より酷くなってませんか?」

「…………」


 マイハは応えない。その表情は険しく、眉間に皺が寄っている。

 それが何よりの答えだ。

 昨日アルテとテトが祓った“瘴気”よりも、明らかに濃い。森に入ってすらいないのに、嫌な空気の圧迫感で押し潰されそうである。つまり“瘴気”の範囲が森の中だけに留まっていないということだ。


 ……何で……祓った“瘴気”が復活するなんて、そんなの一度も……しかも威力が上がってる……まさか……また“悪魔”が復活した……!?


 口に出さず疑問に思うマイハだが、そう悩んでいる時間もない。

 今日はレインを救いに行く日だ。


「マイハさーん!!!ラキさーん!!!」

「ッハァ!ハァ!ハァ!……」


 とそこで、森の中からアルテとテトが走って来た。二人に“瘴気”による空気の重さは感じない筈だが、流石に一晩でこうも様変わりした森を見れば、異変に気付いたらしい。

 焦った様子でマイハの元までやって来ると、乱れる息もそのままに「マイハさん」とアルテが口を開いた。


「あ、朝起きたら、森がすっごく暗くてッ……ハァ……テトさんが、『森の狼や植物達の様子が変だ』って言ってますしッ……マイハさん、コレって“瘴気”ですよね!?」


 アルテが尋ねる。

 森の異変を指摘したと言うテトは、アルテの隣でへばって倒れ込んでいるが、今はそんなことを気にしている状況でもない。

 今度はマイハも応えてくれるようで「そうだね」と重く頷いた。


「間違いなく“瘴気”……それも昨日までのモノより、一段と酷い。この分だと、森に入らずとも“瘴気”に侵される人間が出てくるだろうね」

「な、何でッ……“瘴気”は昨日、俺とテトさんで祓えた筈なんですよね!?何でまたこんな……!」


 アルテの疑問も最もだが、残念ながらマイハにも今回は知り得ないことが多い。

 マイハは首を横に振ると、「一つだけ言えることがあるとすれば」と前置きをした。


「誰かが意図的に“悪魔”を復活させてるってことだよ」

「「「!!?」」」


 マイハが断定すれば、三人がそれぞれ目を見開く。

 そんな中、ラキは昨日のマイハとの会話を思い出していた。



 〜       〜       〜



「『この国の滅亡』って……一体何でそんなこと……!?」


「さあね。でも……千年以上もの間、何処にも現れることのなかった“悪魔”が偶然シーナ国で蘇って、国民達の不満や怒りが募って来たタイミングで偶然『革命団レジスタンス』を名乗る連中が現れて、果ては都合良く武器の施しをしてくれました?有り得ないでしょ。それに加えて、“祟り”問題が起こる前に、森に怪しい人物が現れたって……どう考えても作為的なモノを感じる。恨みか嫌悪か、それともただの気紛れか。まあ何にせよ……ただ国を滅ぼしたいだけに、わざわざ『“悪魔”の復活』なんて馬鹿げた手段を使った、ふざけた奴が居るのは確かだよ」


「…………」



 〜       〜       〜



 昨日マイハから聞いた通り、祓った翌日に“瘴気”がまた復活したとなれば、“悪魔”を故意で蘇らせている人物が居るのは確かだ。


 ……本当に“悪魔”を復活させている奴が……この国を滅ぼそうとしている野郎が居るのか……。


 ラキが改めてシーナ国を襲う問題の闇深さを理解する。

 とそこで、隣に立っていたマイハの身体がグラついた。


「ッお嬢ッ!?」


 慌ててラキがマイハの身体を支える。

 マイハの顔を覗き込めば、青白くなった肌が見えた。間違いなく“瘴気”の影響だろう。


「マイハさん!!……テトさん、もう一度昨日みたいに魔力でッ……「待った!」」


 アルテの言葉をマイハが遮る。

 マイハはラキの身体を押し退け、ちゃんと自分の足で立った。


「誰かが故意に“悪魔”を復活させてるなら、いくら“瘴気”を祓っても無駄だよ。それに、今日の目的はソレじゃないでしょ。いま昨日みたいな大技使えば、また魔力切れで倒れるよ。そんなことより、アルテにはやって貰いたいことがある」

「『やって貰いたいこと』、ですか?」


 アルテが聞き返す。

 その時……。


 ……ユルサナイ!コロセ!

 ……王ヲ殺セ!


 急に流れ込んで来たコエに、テトが「ウッ!!」と呻き声を上げて、頭を押さえて苦しみ出した。


「テトさん!?どうしたんですか!?」


 テトに“瘴気”の影響はない。アルテが驚いてテトの肩を抱く。テトは固く目を閉じ、唇をギュッと噛んでいた。


「……こ、コエが……」

「『コエ』……?」


 マイハが首を傾げる……と同時に、街の方から一羽の鳥が飛んで来た。


「ピィ!!ピィピィ!!」


 バサバサと忙しなく羽をバタつかせ、テトの頭上をグルグルと飛び回る。尋常じゃない様子だ。

 鳥の言いたいことがわかるテトは、段々と顔を青褪めさせていった。


「……テト?どうかしたのか?」


 ラキが恐る恐る聞けば、テトは震える唇で「どうしよう」と小さく漏らした。


「……反乱軍レジスタンスが……城に向けて進撃を開始したって……」

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