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七翼の恩災  作者: 井ノ上雪恵
“七翼の恩災”捜索編〜貫波〜
38/49

能力の元

 シーナフォレスト中心部。

 先程までと打って変わって明るくなった森の中、アルテが辺りをグルリと見回して口を開く。


「……本当にコレで“祟り”の効果は無くなったんですか?」


 アルテとテトは“祟り”の効果を受けない。その為、目視以外で違いがわからないのだ。

 アルテの疑問に対して、マイハではなくテトが「うん」と答える。


「……森のコエが正常に戻ってる。少なくとも、動植物達への影響は無くなった筈だよ」

「そうですか……」


 テトの言葉に、アルテはホッと胸を撫で下ろし「良かったですね」と笑い掛けた。テトも同じく微笑み返す。


「うん、ありがとう。マイハ達が居なかったら、きっと俺だけじゃ何もできなかった……だから、本当にありがとう」


 テトからの素直な感謝の気持ちに、三人はそれぞれ笑顔を浮かべる。

 だがコレで終わりではない。

 マイハは「お礼を言うのはまだ早いよ」と、テトの唇に自身の指を持っていく。


「ここからでしょ?オヒメサマを助けて、反乱をめさせる。今、漸くスタートラインに立ったんだよ。気合い、入れ直しな」


 諌めるような口調だが、声音も表情も温かい。テトも「うん、そうだね」と柔らかく返した。

 とそこで、ラキが「ところでお嬢」と話に割って入る。


「何故“七翼の恩災”の魔力で、“祟り”の効果を打ち消せたんで?」


 当然の疑問だ。

 言われて「確かに」とアルテが首を傾げる。


「マイハさんに至っては、森の中で魔力を使うことすらできなかったのに……“恩災”の魔力とその他の魔力では何か違うんでしょうか?」


 アルテもラキに続けて尋ねる。

 二人からの質問に、マイハは「ああ」と今度は勿体振らずに答えてくれた。


「“七翼の恩災”の魔力は……千年以上前、“悪魔”達を滅した種族……黒羊族の能力ちからを元にしてるからね。だからお前ら“恩災”は“瘴気”に侵されることもないし、“悪魔”の能力ちからに打ち克つことだってできる。まあでも、今回森の“瘴気”を祓えたのは運が良かったね。運良く見つけてた“恩災”の魔力が“光”と“水”だったから、スムーズに祓えたけど……もしアルテやテトの魔力が“炎”や“金属”なら、一旦森を更地にしないとダメだっただろうし」


 アッサリ言われた内容に、アルテとテトは自身の魔力に心の底から安堵した。

 いくらシーナ国を襲う禍事の発端と言えど、これ程立派な森を破壊するなんて心が痛む。特にテトにとっては、友達である動物達と自分自身の大切な家だ。

 ラキもラキで森を消すような事態にならなくて済んで良かったと思いながら、「まあ何にせよ」と話題を元に戻す。


「これで森に入って倒れることはなくなったし、お前らの魔力さえあれば“祟り”の効果は消せるんだ。後は王女を助けさえすれば、一先ずは問題解決だな」

「そうですね。早速レインさんを助けに……行きたいところですけど……すみません。ちょっと今、一歩も動けそうにないです……」

「俺も……身体動かないかも……」


 揃って倒れたまま、アルテとテトが肩で息を繰り返す。疲れ切った二人の様子に、マイハは「魔力を一気に限界まで使った後遺症だね」と告げた。


「今日一日はその状態だよ。少なくとも魔力が戻るのは明日の朝だろうから、今日はゆっくり休みな。どうせオヒメサマは逃げも隠れもしないんだし、助けに行くのは明日で充分でしょ」


 マイハの言う通りだ。

 そもそも助けに行きたくても動けないので、アルテもテトも大人しく首を縦に振った。そして「あのぅ……」と言い辛そうに苦笑いを浮かべる。


「そんな訳で、せめて小屋の中まで運んで頂けませんか?」

「俺もお願い」

「…………ラキ……」

「はい……」



 *       *       *



 テトの住んでいる小屋の中。

 身動きが取れないアルテとテトを、それぞれソファとベッドの上まで運んだラキは、隣で椅子に座っているマイハへと視線を向けた。


「お嬢、どうしますか?ここでの本来の目的はもう果たせたし、一度森を出て、エール号の自室で休みますか?夜もこの小屋に全員泊まる訳にはいかねぇだろうし……」

「……そうだね。少し調べないといけないこともあるし……アルテは此処でテトと留守番ね。ラキはお使いを頼まれてくれるかな?」


 マイハは椅子から腰を上げると、ラキに手招きしながら、小屋の扉から外へと出た。勿論ラキも後に付いて行く。


「お嬢、お使いと言うのは?」


 ラキが尋ねれば、マイハは少し考え込みながら「うん」と答えた。


「念の為、町に戻って反乱軍レジスタンスの動向を探って来て。後は国から追放された医者達の行方も、できる限りで良いから調べて来な。それが済んだら、船で待ってて」

「『待ってて』って……お嬢も何処か出掛けるんで?」


 少し気になったラキだが、マイハは「まあね」と笑ってはぐらかすだけだ。その表情に、コレは教える気がないなとラキは悟る。

 一つ溜め息を溢して、ラキは後頭部を乱雑に掻いた。


「無茶とか目立つことだけはしないでくださいよ?」

「相変わらず生意気な犬だね」

「お褒めに預かり光栄です」

「可愛くない奴……さっさと行きな」


 面白くなさそうに呟けば、マイハはビシッと町の方を指さした。逆に、ラキの方は少し愉快そうに「行って来ます」と頬を緩める。

 不機嫌そうにラキの後ろ姿を見送って、マイハは「さて」と森を見据えた。


「……調べようか…………」

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