17.蘇るトラウマ
「うわぁ、ほんとに凄かったね!」
「そうだな。最後のあの花火は俺的に一番好きだったな」
「わかる!でも、わたし的には2番目にやったあの大きい花火が1番好きだなー」
「たしかにそれも良かったな...」
花火大会の演目が終わり、その余韻に浸りながら優と語り合っていると見に来ていた人達がぞろぞろ帰りだした。
「そろそろ帰るか」
「そうだね。混む前に帰ろうか」
遅すぎると身動きが取れないほど混んでしまうので早めに帰ることにした。
「あれ?もしかして遠藤さん?」
優と一緒に歩いていると、前の方から聞いた事があるような声で話しかけられた。
俺はその声に、胸騒ぎを覚えた。
優の方を見てみると、その嫌な予感は当たっていたらしく、優の顔が少し強ばっていた。
「あ、やっぱり遠藤さんだ!浴衣着てるんだ。似合うね!」
話しかけてきたのは、中学の時同じクラスだった柳洋介だった。
さらに彼だけでなく、女子を含む昔のクラスメイトたちも彼の後ろにいた。
そして、優に明らかに下心を込めた視線を優に向けて
言った。
「ありがとうございます...」
優は、少し声を震わせながら言った。
「もし、良かったらこのあとボーリングに行こうと思ってるんだけど俺たちと一緒にいかない?」
柳は、俺に少し視線を向け、まるで俺が居ないかのように隣の優を誘った。
俺は、その行動をした柳に怒りを覚え言おうと思ったが、後ろにいたいじめの主犯格の女子-神田三春が怒った様子でこちらへ向かってきた。
「ちょっと!洋介!どういうこと?」
「三春、遠藤さんも誘っていいだろ?」
「ダメに決まってるでしょ!」
2人は喧嘩のような言い合いを始めた。
優の方を見ると、彼女は下を向き体を小刻みに震わせていた。
「優...大丈夫か……?」
優のこの姿を見たくなかったから会いたくなかったのに...
「うん...大丈夫だよ?」
ゆっくり顔を上げ怖いはずなのに無理して少し強ばった笑顔を俺に向けた。
俺が望んだのはこんな表情じゃない
優に、こんな表情には二度とさせないって決めたのに…!
俺はぎゅっと拳を握った。
「ごめんごめん、待たせたかな。えーとそれで一緒にどうかな?」
洋介は、話を終えたのかまた優に嫌な視線を向けた。
さらに、隣にいる女子は優を牽制するかのように睨んでいた。
優は、その場で固まってしまい何も答えられずにいる。
「洋介、やめろ。どういうつもりだ俺達にはもう関わるなと言ったはずだ」
俺は、優と洋介の間に入り視線を遮ると洋介は俺を睨んできた。
「お前には関係ないだろ」
少し強い口調で言ってきたが、俺はもう引かないとあの時決めたのでさらに優を睨んだ女子と洋介を目で牽制をした。
「あぁ...もしかして、まだ遠藤さんの彼氏面でもしてるのか?」
洋介は、嘲け笑うように言った。
「違う...俺は、ただ優がまたあの時のようになるのが嫌なんだ」
優は、またあの時のようにはなって欲しくない。
「それこそお前には関係なくね?それともまた虐められたいの?」
洋介は少し余裕が出てきたようで俺を煽るように言った。
「また……?」
すると、優は震えていた体が止まった。
「秋人、またってどういうこと……?」
優を、見てみるといつも通りだが少し怒っているようにも見えた。
「もしかして遠藤さん知らないの?」
優が、口を開くと後ろにいたが神田三春が優を煽るような口調で出てきた。