14.いつもと違う
『今日、1人になっちゃうらしいから優ちゃんを泊めてあげてね。あと、優ちゃんが可愛いからって手を出しちゃダメよ?』
優は妹のような存在なのに手を出すわけないだろ...
この母親、息子になんてことを言っているんだ...
しかし、俺の母もちょうど今日の夜は、用事があるらしく、家で優と2人っきりで過ごすことになってしまった。
「秋人…入っていい?」
俺の部屋のドアがノックされ、外から優の声が聞こえた。
「どうした?」
優は、なぜか枕を体の前にして俺のお古で優には少し大きくの袖が優の腕に対して少し長いシャツを着た両手で抱えていた。
「一緒の部屋で寝ていい…?」
え…?
俺は一瞬混乱した。
朝、布団に入ってくる時はあるが一緒に一夜を共にすることはもちろん初めてだ。
しかも今の状況とは意味も全く違ってくる。
「昔のこととか夜の学校とか思い出しちゃって寝れないの…」
「でも…一緒に寝るはだめだろ…?俺たちは高校生なんだから」
優には、俺がちゃんとした男子高校生だと早く認識して欲しい…
「お願いだよ…あきひとぉ」
優は、懇願するような目で俺を見てきた。
俺がその目をされたら断れないことを知っててやってるだろ…
「わかったよ…ただしあまりくっついて寝るなよ」
「はぁい!やった」
そう言って優は、ベッドの中に入ってきた。
「もしかして...起こしちゃった?」
電気を消して数分経った時、隣を向くと優もまだ寝ていなかった。
「いや...優のせいじゃないんだけど、毎朝、優が布団の中に入ってくるのとあまり変わらないはずなのに今日はどうしてか寝つけなくてな」
「緊張してるの...?」
「そ、そんなわけないだろ...」
「私は緊張してるよ。」
優でも、緊張はするんだな。
普段の姿と家での優の姿は違うが、どちらも緊張とは全く疎遠なものだった。
でも、今の優はいつもとは少し違った雰囲気でなんとも余裕がなさそうな感じだ。
「秋人」
「どうした?」
「私たち...悪いことしてるみたいだね」
「......!?」
「ふふ....おやすみあきひと」
それを言った時の優の顔は、いたずらっ子のような笑みを向けてきた。
その笑顔には幼女のようなもの無邪気さが感じられるものだった。
全く...優には勝てないな...。
──朝、俺は起きて横を見るとまだ優は気持ちそうな寝息を立てていた。
こうして寝顔を見ると、昔と全く変わらないな。
俺はふと、時計を見たら朝の8時を過ぎているのに気づき焦りだした。
なぜなら、もう少しで母さんが帰ってくる時間なはずだからだ。
しかし、ベッドから出ようとすると優が俺の腰周りをしっかり腕で固めていて出ようにも出れなかった。
「優、起きてくれ…!」
俺は起こすのに罪悪感を感じながらも必死に体を揺さぶり起こそうとした。
だが、優は気持ちそうな寝息を立てて全く起きる気配がない。
すると、家の玄関の方からガチャっと音が聞こえ、
階段をのぼる音が聞こえてきた。
「お、終わった…」
俺は何となく誰かわかったのでこの状況を勘違いすることは確実だが、優のせいで動くことが出来ないので諦めるしか無かった。
「ただいまー!って、あれ?あれれ…もう言ったことが本当になりそうね。あ…私はお邪魔ね!」
母は少しにやけながら、優を起こさないようにドアを再び閉めようとした。
帰ってきたのは案の定母親で、文化祭で別れたあと用事を済ませて家に帰ってきたらしい。
「おい、誤解だ!何もしてない!」
「……ん…あれ…?秋人おはよぉ…って清子さん!?」
なんでこんなタイミングが悪い意味でいいんだ…
「あら、起こしちゃったわね。優ちゃんおはよう
秋人と夜お楽しみだったようね!いつでも嫁に来て貰ってもいいわよ」
「え…?えっと…あ…あの……楽しみました(?)」
優はまだ寝起きなのと状況を把握してないせいか意味のわからないことを言いだした。
「母さん!」
「冗談よ」
「でも、高校生男女2人で寝る事の意味を勘違いされるのは仕方がないとは思うわよ?」
「それは分かってるよ……」
何も言い返せない。
「まぁそれは置いといて、朝ごはんを作るから朝の身支度を済ませておいてね」
「わかったよ……」
「はい……」
優と俺は少し反省したように返事をした。