13.星空
遅れてすいません!
「ねぇ…覚えてる?昔、秋人と一緒にこうやって星空を見たの」
「覚えてるよ。小学生の時に家族ぐるみで行ったやつだろ?」
昔俺と優の家族ぐるみでキャンプに行った時、夜に2人でテントを抜け出して星空を見に行ったことがあった。
「うん、あの時本当に楽しかったなぁ...」
「確かその時に優が『お化け怖い!』って言って全然星空に集中出来てなかったけどな」
優はその時涙目になりながら星空を見上げていた事を思い出したので俺は少し笑いながら言った。
「そこまでは思い出さなくていいの!」
優は頬を真っ赤に染め俺の口を両手で抑えてきた。
それから、俺と優は星を眺めながら昔話に花を咲かせた。
「ねぇねぇ…秋人、来年も一緒に来ようね…」
優は俺の右腕の服の裾を引っ張りながら言った。
「……そうだな」
「よし!綺麗な星空も見れたし、帰ろ秋人」
「そうだな、後夜祭はもういいのか?」
後夜祭はまだ続いているのでもし優がやりたいことがあっては申し訳ない。
「うん、ほら…今行ったら結構めんどくさいことになりそうだから」
「あー……そうだな」
優は、クラスだけでなくその容姿から学校中から人気があるのにも関わらずさっきの行動をしたので後夜祭に戻ると何が起こるかは考えるまでもない。
「じゃあ帰るか」
「うん!」
そう言って優は、俺の後ろに付いて服の裾を掴んだ。
「どうした?」
「いや…だって夜の学校って怖いじゃん!」
「来る時は大丈夫じゃなかったか?」
「それは…勢いで来ちゃったから…」
俺は、優はやっぱり昔から変わらないなと思いながら利き腕を出した。
「はぁ…いいよ。でも、こっちの方が歩く時にいいだろ?」
「なんか今日の秋人、気遣いできすぎじゃない?」
「おい、いつも出来てないみたいに言うな」
「えーホントのことじゃん」
「そんな無駄口叩けるなら気遣いは要らなそうだな。」
そう言って俺は出した利き腕を元に戻した。
「嘘だよぉ…!だから、怖いから裾掴ませてぇ!」
優は、俺の利き腕の裾を掴んだ。
俺たちは誰かにあったらめんどくさい事になりそうなので正門じゃないところから出ようとそこへ向かった。
すると、門の前に男女のカップルらしき人影がいた。
「あ、誰かと思ったら秋人じゃん!お疲れー」
「あーおつかれ」
その人影は奏と葵だったらしく、ちょうど2人も帰るところだったらしい。
「あれ…?へー…」
葵が俺たちの方を見てニヤけた。
「なんだよ」
「いやぁ?仲が良くていい事だなってね」
葵はいたずらっぽく笑った。奏も、葵の意図を読み取ったのか「あ〜そういう事か」と言ってニヤケだした。
「ん……?」
優は、どういうことか分かっていないので首を傾げる。
「それだよ」
葵はにやけながら俺の服の裾を掴んでいる優の手を指して言った。
「……あ!」
優はようやく気づいたのか恥ずかしがりながらパッと服の裾を掴んでいた手を元に戻した。
「ち…違うんです!これは…その!えーと………」
「うんうん、大丈夫だよ分かってるから」
「絶対分かってないですよね!?」
「まぁまぁ仲が良いことはいいことなんだからさ、この話はまた今度にしてもう時間だから帰らないか?」
優と葵が言い合いをしているところに奏が仲裁に入った。
奏は仲裁と同時になぜか俺に対して何か含みのありそうなウインクをしてきた。