11.気まずい
文化祭もいよいよ終盤に差し掛かってきたが、学校内は未だに人が多く、色々なクラスに列を成していた。
俺たちは、母さんがバザー見たいと言うのでその教室に向かうことにした。
案の定、優と母さんは結構目立つので周りの視線が2人に向いていた。
母さんも40代だがまだスキンケアなどをしっかりしているおかげか周りにはまだ20代と言われることも少なくないらしい。
バザーをやっている教室へ入ると奏が会計の前に立っていた。
「どうぞ見ていってくださーいって...え?」
「あ...」
「ふーん...」
「おい、なんか変なこと考えてるだろ」
「いやぁ?もう親と面識もある仲なんだなーてな」
「……幼なじみだから当然だろ」
「まぁそういうことにしておくよ」
奏はニヤケながら言う。
「あら、秋人のお友達?」
バザーの商品を見ていた母さんがこちらに気づき、近づいてきた。
「はい 秋人と仲良くさせてもらっている佐伯奏といいます」
「これからも息子と仲良くしてちょうだいね」
「はい、もちろん」
あまり会って欲しくなかった二人が会ってしまった。
なぜ思うのかというと、2人の性格は似ているからだ。特に俺を見てきて面白がるところだ。
「2人も文化祭楽しんでな」
奏は俺と優に向かってにやけて言う。
「余計なお世話だ...」
俺はその言葉に含みがあるのがわかったので少し小さい声で文句を言う。
「遠藤さんも秋人と楽しんで!」
「はい...」
優は少し恥ずかしそうに言う。
バザーで色々買えたようなので俺たちはその場を後にした。そこから色々周って文化祭も残り30分になった。
「そろそろ時間だから帰るわ。2人とも後夜祭楽しんでね」
母さんは少し名残惜しそうに言ったが両手には紙袋を持って文化祭自体は結構満足してくれたようだ。
「はい...」
あまり会える機会がないため優は少し悲しそうに下を向いた。
「優ちゃんまたね!いつでも嫁入りしてきてもいいからねー!」
母さんは別れ際にそう言って帰って行った。
「え...?......っ!!」
優は急に頬を真っ赤にし両手で頬を包み込む。
「母さん!?」
俺は母さんは何を言っているんだ!?と思い母さんの方をパッと向くと、母さんは遠くでニヤケながら去っていった。
「清子さん変わらないね...」
優はさっきの影響か少し恥ずかしそうに下を向いて言う。
『さっきので恥ずかしくて秋人の顔見れないよ...!』
「そうだな...」
俺も母さんのせいで少し気まずいので優の目を見ないで言う。
気まずいながらも俺たちはなんとか気を取り直して後夜祭の準備に取り掛かった。