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80話  全てが終わる。

「父様……海が綺麗だね」


「ああ、うん……この夏の青い海もブロア様がみたら喜ばれただろう」


 親子は二人屋敷の近くの砂浜を歩いた。


 ブロア様と知り合ったのは数ヶ月前。元々ブロア様には恩があった。だからこそ彼女があと少しの人生ならと手助けすることにした。


 一緒に過ごすうちに彼女の為人に触れて、助けると言うより何かできることがあれば、して差し上げたいと言う気持ちになった。


 『死んでもいい』と思っているところがある。生きることに諦めてしまっていた。だけど、『海が見たい』とか『助けたい』とか少しだけ自分の望みを口にしてまともに動けない体でもなんとか頑張ろうとする人だった。


 ブロア様は主治医の頑張りで、一度だけ目覚めた。しかし、すぐに意識がなくなり今も眠り続けている。


 もうそれが3年も続いている。

 痣が消えることはない。


 心臓だけが微かに動いている状態で主治医の先生も毎日ブロア様のそばから離れない。


 その治療費はブロア様の実家の公爵家当主を継いだカイラン様から毎月送られてきている。


 ブロア様の父親の宰相だった彼は今もアリーゼ国のために働いている。

 処刑するよりも国のために一生働き続けさせるとのことだ。

 死んだ方が楽だろうと思う。


 それは罰ではない?いや彼は、地下牢に入れられて一生そこから出ることはできない。

 朝から晩までいろんな部署の仕事を持って来られてひたすら仕事をさせられる。もちろん雑用だけ。重要な仕事には一切関わらせてもらえない。有能な彼にとって屈辱でしかない。


 名を奪われ誰からも敬われることなく、仕事を少しでもサボれば「101番何をサボっているんだ!」と鞭で叩かれる。


 傷の手当てもされることなく食事は1日2回だけ。


 心が壊れた彼は言葉を発することもなく、ひたすら仕事をしているらしい。


 これがアリーゼ国で優秀と言われた宰相なのか?と言うくらい顔も姿も変わりきっているらしい。


 そしてサイロは結局輸血が間に合わずに亡くなった。


 牢での拷問に耐え続け、最後はブロア様の代わりに斬られて亡くなった。


 ヨゼフは今もわたしの屋敷で庭仕事をしながらのんびりと過ごしている。


 最近はミリナの好きな花をたくさん植えてミリナと話すのが毎日の日課らしい。



 そしてセフィルはうちの商会で働いている。


 貴族としての地位も騎士としての地位も仕事も全て捨てた。


 一度だけ目覚めたブロア様とセフィル様は少しだけ言葉を交わした。そのあと、ブロア様は静かに眠りについた。


 このまま亡くなるのか目覚めるのかわからない。

 カイラン様はもうブロアのことは忘れて新しい人生を歩むように周りからも言われたが、セフィルは首を横に振った。


 サイロが亡くなる前にブロア様とセフィルは会うことができた。その時のこともわたし達は遠慮してるいたので、どうなったのかわからない。


 セフィルは口を閉ざし今もブロア様が目覚める時を待ち続けて過ごしている。


 ミリナは毎日ブロア様に話しかけに行く。


「ブロア様……今日は綺麗なお花が咲いていたからここに飾りますね」


「うん?お顔の色がいいみたい。早く一緒にお話ししましょう」






 そして……セフィルもまた朝必ずブロア様の部屋に顔を出して、仕事から帰ってくるとずっと寝るまで部屋にいる。


 二人の関係を詮索することはできない。



「セフィル、そろそろ時間だ、ブロア様の部屋の鍵を締める時間になる」


「あっ、もうそんな時間ですか……ブロア明日もまた会いにくるよ。おやすみ」


 セフィルはいつものように眠るブロア様の頬にキスを落とす。






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