78話 セフィル編 14
いつも読んで頂きありがとうございます。
あと少しで最終話です。
そのあと少し番外編も投稿予定です。
なかなか投稿に日にちがあいてしまいますが、のんびりお待ちいただけたらと思っております。
よろしくおねがいします。
「ブロアとサイロを早く医者にみせろ」
陛下の声が部屋中に響く。
その中で宰相が、床に取り押さえられたまま、笑い始めた。
「ブロアが死んだ……くくくくくっ………」
「宰相、いや、ジョーン………お前は自分が何をしでかしたのかわかっているのか?」
「陛下……やっと……苦痛でしかなかったあの瞳がわたしの前から消えるんです」
宰相は、突然、安心した安らかな顔になった。その顔はとても不気味で……
「お前は娘を愛していた………のではないのか?あんなに婚約破棄された時怒り、うちの息子に喰ってかかったではないか?
もしジェリーヌ夫人と同じ病気になったらいけないと主治医に治療法を探させていたはず……わたしに見せていた姿はなんだったんだ?」
「愛していましたよ……ジェリーヌを……ブロアがわたしを見つめるとゾッとするんです。ジェリーヌに責められているようで……病のことも知らず守ってやれなかったこと……ジェリーヌが体調が悪くなって彼女の代わりにサマンサを抱いて、浮気を知られていたと知った時……彼女の辛そうな顔、悲しそうな顔………あの顔が忘れられない………」
ハァーっと大きな溜息。
「…………同じ顔をしたブロアを見ると責められているようで居心地が悪くてゾワゾワと気持ち悪くなるんです。
………ブロアのことなんか考えないように切り捨てたはずなのに……目の前でちょろちょろして……煩わしい……だから、同じ目についてしまうなら、いっそわたしの好きなように扱える人形として生かすつもりだったんです」
「ジョーン……何故……そこまで歪んでしまったんだ?」
「歪む?はははは………ジェリーヌだけを愛していたんです……ブロアなんか要らない……あいつが死ねばよかったんだ……なんでジェリーヌが亡くなってあいつがまだ生きているんだ……」
「お前は……ブロアもジェリーヌ夫人と同じ病にかかっていることに気がついていないのか?その目には娘の病が見えていないのか?」
「……………」
宰相は大きく目を見開いて陛下を見た。そしてもうこの場にいないブロアの姿をキョロキョロと探していた。
「………ブロア?……が?………」
俺はそんな二人の会話を聞きながら、絶望の中この場から動けなかった。
サイロとブロアは医務室に運ばれて緊急処置をしている。誰一人近づけないでいる。
俺は騎士として陛下や宰相のいるこの場から勝手に動くことはできない。他の者達もこの異常な光景を黙って見ているしかなかった。
ブロアが死ぬ?
病?
ジェリーヌ夫人が不治の病で亡くなったことは知っていた。その病にブロアも?
なんで……今頃になって知らなければいけないんだ……もっと早く知っていたら……
いや……ブロアは、俺に知らせたくないから黙って姿を消したのか?
頭の中がグラグラとする。胸の鼓動が早まっているのがわかる。
そして今までのブロアの行動の意味がわかった。
俺を置いて黙って死んでいくつもりだったんだ……
絶望の中、ここにいないといけないはずなのに足がブロアのもとへ向かう。
「俺は……」
ーー頼む、ブロア。生きてくれ。
俺のことなんかもうこのまま捨ててくれていい。生きてさえくれれば……




