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60話  どこへ?

 馬車に乗せられて何故かしばらく動かなかった。


 何処に連れて行くのか悩んでいるのだろうか。


 お父様はお怒りだったけど、まだこの国での仕事もあるのだろう。

 すぐに連れ帰るのか悩んでいるのかもしれない。


 バルン国からアリーゼ国まで、あの山道を通っても1週間以上はかかる。


 わたくしの体力では……


 ふふ。………ここには薬もないし、もうみんなに会えないわね………


 でも……もう一度だけでいい………会いたい。


 みんなに謝りたい。


 わたくしのせいで、みんなの人生を変えてしまった。


 死んでいくわたくしには、彼らのこれから先の人生を守ることはできない。


 大好きな人達に……お願い……


 会わせて………そう思っていた……




 突然馬車が動き出した。


 騎士の二人は黙ったままわたくしを見ていた。

 二人の顔は見知っている。


 近衛騎士で何度となくわたくしの護衛についてくれた人達。


 優秀でとても忠実な騎士。


 ーー情に訴えればみんなに会わせてくれるかしら?


 そう思っていたら、座っているのがもう辛くなってきて、体に力が入らない。


 馬車の揺れに合わせて、そのまま、力なく床へと倒れてしまった。



「ブロア様!」


 一人の騎士が慌てて、馬車を止めた。


「体調が悪いのはわかっております。どうかもう少し辛抱してください」


 そう言うと、着ていた上着をみんなが脱いで床に敷き詰めてくれた。


 外で護衛をしていた騎士達も。


「ありがとう……」


 みんなにお礼を言うとわたくしは馬車の床に寝かされた。


 上着のおかげで冷たい床に転がらないで済んだ。もう座席に座っていることができなくなっていた。



 彼らにお願いをすれば今度は彼らを巻き込んでしまう。


 親切を受け入れたばかりなのに……


『みんなに最後に会わせて欲しい』


 この望みは言えない……


 だけど……サイロの命だけは助けなければ……


 この命に変えても……


「宰相閣下と話をしたいの」


 床に寝転んでいるわたくしが言っても彼らは鼻で笑うだろうか。


 そう思ったのに……


「ブロア様……我々は貴女の味方です……」


 いつも表情を変えることなく淡々と近衛騎士の仕事をこなす彼らが、やわらかい顔でわたくしを見た。


 哀れんでいるの?同情?


 お父様には見えていなかったけど……彼らにはわたくしの体調の悪さがちゃんと見えていたの?


 だけど、彼らは近衛騎士。上の命令は何があっても絶対のはず。


 でも彼らの顔はわたくしを哀れんでいるようには見えない。


「ブロア様……私達にも感情はあります。上の命令だけが全てではありません」


 彼らの言葉にどう返していいのかわからなかった……


「床に寝かせて申し訳ございません。しかし、男である私達が公爵令嬢である貴女を抱きかかえたまま馬車に乗っているわけにはいきません」


 申し訳なさそうにそう言うと………


「先ほど捕らえた者たちは、別の馬車で同じ場所へと向かっておりますのでご安心を。

 ただ………サイロ殿だけは……盗みを働いているので我々ではどうすることもできません」


「違う……あれは、わたくしのお母様の形見のネックレスなの……サイロが持っていてくれたの。お父様はわたくしに渡すと言ってくれたの……それなのに……わたくしが言うことを聞かないから、わたくしの大切な人達を痛めつけて見せしめにしようとしているのだと思う」


「そこのところはまた調べてみます。どうかお辛いでしょうけど今は我慢されてください」


 彼らの言葉を全て信じていいの?


 戸惑いながらも動くことすらできないわたくしはこのままでいることしか出来なかった。






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