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46話  セフィル編  7

 王太子殿下が廃嫡されることになった。


 突然の発表に国中が驚いた。しかし王宮内では仕方がないことだと皆が口には出さないが納得していた。


 新しい王太子はまだ発表はされていないが、多分従兄弟の誰かが候補として名が挙がると思われる。

 今回の動きを見ると、廃嫡に向けて元々準備はされていただろうがしばらくこの国は荒れるかもしれない。


 数年前まではブロアが婚約者として支えてきたこと。そして婚約破棄したあと、官僚や文官達がなんとか王太子殿下を支えてきたことは知られていた。


 能力もないのになんとか誤魔化してきた。


 それは皆口には出さないが知っていた。それなのにブロアを能無し、悪女と噂が消えなかったのは殿下がそう言い続けていたからだ。



 陛下はやっと決断したのか。遅すぎる。皆そう思っていた。ただ、実の父親は娘を認めようとはしなかった。いや、多分全てわかっていても娘を蔑む気持ちが認めようとしなかったのだと思う。

 娘の優秀さすら気づかないバカな親。


 そして俺もバカな婚約者だ。

 好きなのにずっと愛しているのに、ブロアを傷つけていた。

 たとえ親になにを言われても断るべきだった。リリアンナがブロアに対して事あるごとに嫌味を言ってたなんて知らなかった。


 両親も噂を信じてブロアのことをよく思っていなかったらしい。


 俺が婚約解消を告げられたあと、リリアンナはブロアの屋敷に押しかけた。



『ハッキリと教えてあげに来たの!セフィルは悪女の貴女と婚約させられてとても困っているの。優しくて真面目なセフィルは悪女の貴女を突き放せなくて我慢していたのよ。やっと婚約解消できそうなのに、貴女がセフィルの邪魔ばかりするから!我儘もいい加減にしてください!もういい歳なんだから、将来有望なセフィルにしがみつかないで、後妻にでもなったらいいんじゃないですか?』


 サイロにこの話を聞いた時、怒りでリリアンナに怒鳴り込みたくなった。だけど、俺が招いた事。ブロアにリリアンナを好きだと勘違いさせたことも、ブロアがそう思ってしまったのも全て俺がきちんとした態度を取れなかったから。両親に対してだって俺が強気で出ていればこんなことにはならなかった。


 リリアンナに対して妹のような気持ちで接していた。

 そのことをブロアに伝えることもなかった。


 知っているとは思っていなかったし、勘違いされているとも思っていなかった。


 ブロアに対して配慮が足りなかった。


 ブロアが俺を好きなんて思っていなかったから。


 自信がなかった。


 あまりにも憧れが強すぎて愛してはいても愛されているなんて思ってもみなかった。




 サイロからーー


『やっぱりあなたはお嬢を愛していたんですね?』


『当たり前だ。ずっとずっと忘れられなくて諦められなくて、愛さずにいられない。大切な人なんだ』


 そう答えた時ーー


『あなたがお嬢を追うなら追えばいい。探してみればいい。探せるものなら』


 そう言われた。サイロに言われなくても探してやる。そう思って屋敷を出ようとした時、彼は小さな声で呟いた。


『お嬢は馬鹿だ。愛している人に愛されていたのに』


『えっ?』


 俺は聞き直したが『なんでもありません』とサイロはそれ以上答えてくれなかった。



 ブロアも俺を愛してくれていた?だからリリアンナと幸せになれと言った?


 間違ってる。俺が愛しているのはブロアだけだ。




 ブロアは怪我をしたまま主治医と庭師のヨゼフと共に姿を消していた。

『父はブロア様の容態が心配で付き添いました。しばらくは帰ってこないでしょう』

 主治医の息子がそう言った。


『お嬢様の思い出のため』にどこかへ旅立った。



 俺は馬車の行方を探した。


 一人では見つけらない情報をギルドに委託した。

 主治医の馬車の特徴を聞き出しどこへ向かったか調べてもらった。


 その間に俺はリリアンナと両親に対して話をした。


「父上、母上、あなた達がリリアンナとの婚約を本当は求めていることを知りました。ですが、俺はブロアを愛しております。リリアンナと結婚するなど考えたこともありません」


「しかし……ブロア嬢は悪い噂が立っている。婚約解消を言われたのなら喜んで受けるべきじゃないのか?」


「そうよ、リリアンナは可愛らしいわ。わたしもあんな可愛い娘がいてくれたら嬉しいの」


「俺はたとえブロアに婚約解消を言われても解消はしません。それにリリアンナを愛することもありません」


「そんな意固地にならないでもいいじゃない」


「縁を切るならお好きにどうぞ。愛してもいない女と結婚なんて有り得ませんから」


「ひ、酷い。わたしはずっとセフィルを好きなのに……」


「すぐに泣いて自分の気持ちだけを主張して……それで全て思い通りになると思わないで欲しい。俺はリリアンナのことを妹としか思えない。絶対に愛することはない」


「嘘っ!いつも優しかったじゃない。いつも会いにきてくれたでしょう?」


「それは頼まれたから仕方なく行ってただけだ。自分の意思ではない。リリアンナ、俺は君を愛することは絶対にないし、はっきり言って軽蔑している」


「け…い…べつ?」

 リリアンナは俺のその言葉に驚き口元が震えていた。


「ああ、俺の愛するブロアに酷いことを言った君をどうすれば愛せる?たとえ謝ろうと俺は君を許せない」


 ーー俺自身も許せないが……

 それでもブロアに会いたい。無事な姿だけでもみたい。


 俺は騎士団に長期の休暇を願い出て、ギルドで調べてもらったブロアが乗ったであろう馬車を追った。


 やはりブロアは……海に向かったんだと思う。


 彼女は海の話をする時、とても興味深そうにしていた。


『いつか連れて行ってあげたい』そう思ったのに。


 その言葉を何故本人に言ってあげられなかったのだろう。



 

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