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44話  

 次の日の朝、わたくしの体は思った以上に悲鳴をあげていた。怠くて動けない。鉛のように重たく足にまだ力が入らない。


「ブロア様、お食事は?」

 ヨゼフが心配して部屋を訪ねてきた。


「食べたくないわ」


 食べ物が喉を通らない。パンを一口齧った。なんとか飲み込んだけど……


 もう食べたくない……食べられない……


「ダメだよ!大人なのに!ちゃんと食べなきゃ」


 ヨゼフが入ってきた後から、顔を覗かせたミリナがわたくしの部屋に入ってきて

「はい、少しでも食べて、ねっ?ブロアさんは旅を続けないといけないんだよ?体力つけなきゃ」と、テーブルの上にあるスープとスプーンを渡された。


「ミリナ……心配かけてごめんなさいね。でも今は食欲がないの」


「少しでも食べようよ。父様がね、ブロアさんが一緒にわたしの住んでいる国にこれから行くって教えてもらったの」


「わたくしが?ミリナの住む国に?バルン国へ?」


「うん!今急いでブロアさんが乗りやすい馬車を手配してるの。だからブロアさんは少しでも体力をつけなきゃいけないんだよ」


「………そう…でもバルン国はここからではとても遠いはずよ」


「山を越えるの。ただし通行許可証がなければ通れないの、誰でも通ることはできない道なの」


「……あっ……輸送のために作られたと聞いたことがあるわ。もう通れるようになったのね」


「知ってるの?」


「ええ、バルン国に行くには、他国からだとかなりぐるっと回らないといけないからとても遠い国……でも険しい山道を通れば早く行ける……そのための道を作ろうと計画を立てていると聞いたわ」


「すごい!そうなの!ただその道はとっても作るのにお金もかかったし大変だったらしく許可制で通行料を払わないといけないの。申請するのに時間がかかるの」


「だったらわたくしには無理だわ」


「父様が2枚予備を持ってるから大丈夫だよ」


「2枚……」


 ーーみんなで行くことができない……


「お嬢様、わたしはここに残ります。急ぐ旅は年寄りでは足手纏いになりますからね」


「でもヨゼフ、屋敷を出てしまって行くところがないわ。どうするの?」


「大丈夫です。時間はかかりますが正規のルートからお嬢様のいる場所へ向かいます。ですから先に行って待っていてください」


「…………一緒に海を見たいわ」


「もちろんです。ここまで来たらお嬢様の夢はもうわたしの夢でもあります、ですからミリナ様の仰るように少しでもお召し上がりください。体力がなければ旅はできません」


 わたくしは頷くとスープを少しずつ飲んだ。


 口は受け付けない。それでもわたくしの我儘のせいでヨゼフ達を巻き込んでしまったのだから。心配だけはかけないように……そう思ったけどもうずっと心配ばかりかけているわよね。


「ブロアさん、馬車の用意が出来次第、出発します。ですからよく食べてよく寝て、しっかり薬を飲んでくださいね」


「わかったわ、ありがとう。あなたのお父様にもご挨拶しないといけないわね」


「今は先生といろいろお話し中みたいだよ」


「そうなのね……」








 ーーーーーー




「馬車の用意はすぐにできると思います。ただブロア様本人の体力は持つのでしょうか?」


 エイリヒ様が先生に尋ねていた。


「薬を……増やせば一時的には今よりは回復すると思います。本人も気力だけならありますので……強い方なのです。弱音を吐かない、キツくてもわたし達が心配しないように黙って堪える方なのです」


「わかりました。わたしはただお手伝いするだけ。事情は知らないという事で過ごそうと思っております」


「恩にきます」

 先生が何度も頭を下げられていた。


 わたしはそんな二人の姿を近くで黙って見ていた。


 一緒に旅はできない。だが、時間がかかってもお嬢様を追いかけるつもりだ。


 お嬢様のそばに最後までいてあげたい。


 その前に手紙を書いて、ある人に急いで届けてもらうように宿の人に頼んだ。

 お嬢様から給金だとたくさんのお金をもらった。生い先短いわたしにとって金は不必要。断ったが持っていて欲しいと言われた。


 そのお金が今役に立つときが来た。


 お嬢様の行方を探しているであろう人に。


 お嬢様は怒るかもしれない。でも、それでも、会わせて差し上げたい。恨みと小言はわたしがお嬢様のところへ行ってから聞けばいい。


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