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罠に掛かった獲物

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調べ始め、すぐに埃は沢山出て来た。

尤も、元々アルフェに調べさせていたので、私にとっては既知の情報だったけれども。


それでも、推論の裏付けとして公に出せるのは大きい。

始めは強引に推し進めた状態だったと自覚があるけれども、早々に誰も文句を言わなくなった。


銀行の取引記録を見れば、何度もヴィンデッドとナサニエルにベザード商会から金が入っていた。

ついでに、公共事業を司る総務部の部長にも。


ようするに、だ。


財務部と総務部は結託してベザード商会に発注を集中。


ベザード商会は、かさ増しをした金額を費用として請求。けれども財務部は、言い値で費用を支払い続けた。


そして、かさ増しをした部分の費用は三人の懐に入る仕組み。


ついでに、手抜き工事で浮いた金はベザード商会の懐に入り続けた。


本来なら完成したモノの品質が悪ければ他商会に発注が移り変わるところだが、財務部と総務部を抱え込む状況下、デキが悪くとも、できあがりさえすれば発注先が変わることもなく。


そうして横領が続いた……という訳だ。


全く、せめてヴィラード侯爵家とデストメラ伯爵家の発注ぐらい、真っ当に作れば良かったというのに。


人間、タガが外れると制御が効かなくなるという話は尤もなことだ。


二、三度悪事がバレなければ、次も大丈夫だと信じ込む謎の心理。


「クローディア殿、話をさせて頂きたい!」


財務部長のヴィンデッドが、急に私の執務室に押しかけてきた。


調査の関係で机には大量の資料が散らばっている状態。


何だか整理ができない人みたいで、恥ずかしい。

一応、私には分かり易く分類されているのだけど。


「あら、ヴィンデッド部長。私のような者に、どのようなご用件でしょうか?」


「クローディア殿が担当している調査の件だ!今すぐ……」


すぐに聞き流す。というより、聞かない。

どうやら、自分はベザード商会の事件とは関係ないという陳述みたいだけど。


顔を真っ赤にして叫んで疲れないのか……なんて、どうでも良い疑問が頭に浮かんで心の中で笑った。


「あら、そういった話だったら、是非カール殿にお話くださいませ」


「は?貴殿が責任者だろうが!」


「あら、貴方が仰られたのですよ?」


苦情対応にも笑顔で応えるべく、あえて笑みを浮かべた。


「引き続き、財務部はカール殿に話を通すと。私では、貴方たちの職務について重要性を理解できないと」


「ち、違う……!あれは……!」


縋るように迫って来た男から、距離を置く。


「今回の件の被疑者です。連れて行きなさい」


部屋に待機していた私の監視を兼ねた武官に、指示を出す。

カールが私を疑って置いたようだけど、役に立って良かった。


全く鍛えていないヴィンデッドは、あっさりと武官に捕まる。


その状態で、ヴィンデッドの耳に顔を近づけた。


「私に話をするよりもまずは、ご実家や第一王子派の主要な方々に話すべきでは?今回の件、第一王子派にとってはメンツを潰されたに等しい件ですので。私は法に則って対応致したいと思いますが……早まる方々が出ないか心配です」


そう囁けば、面白いほどに顔が真っ青になった。


顔を離せば、武官はズルズルとヴィンデッドを引き摺って行った。


「さて、と……」


思いっきり、背伸びをする。

ゴキリ、と骨が軋んだ音がした。


視線を机に戻せば、先ほどと何ら変わらない書類の山。


「仕事の時間、だったかしら。早く、仕事に戻らないと」


そうして椅子に座り、再び仕事に戻ったのだった。



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