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片鱗

そして、その翌日。

私はオーバンと他二人の騎士と共に、王都に飛び出していた。


「団服のままなんですね」


「ま、身分の証になるからな」


「いや、そうじゃなくて……鎧は着ないのだな、と」


「あんなん着たら、逆に威圧になっちまうだろう?だから、王都の見回りは団服が基本」


「なるほど……」


そんな雑談を交わしつつ、王都を回る。


流石王都なだけあって、北から南に一直線にひかれた街の主要路は活気に満ち溢れていた。

人通りは多く、店先に並ぶ品は豊富だ。


勿論、観光ではないのでそういった治安の良い場所だけでなく裏通も回る。


主要路から三つ、四つ道がズレた王都南東部は、人通りは多くとも活気はない。

ジメジメとして薄暗く、そこにいる人々は痩せていて顔色も悪かった。


「まだまだ行政が行き届いていないですね」


溜息を吐きつつ小声で呟いた。


「是非、あんたには頑張って貰わないとな」


オーバンは、そう言って苦笑を浮かべる。


その区域から戻るように歩き、丁度王都の真ん中ぐらいまで辿り着いた時のことだった。


「泥棒!」


そんな女性の叫び声が聞こえたと思いきや、四人ほどが走ってきた。

オーバン含めた騎士三人が、その四人に立ちはだかる。

そして淡々と彼らを制圧した。


けれども、四人の内一人が逃げ出す。


「どけ!」


そしてその一人が逃げ出す経路に丁度立っていたのが、私。


「クローディア!」


オーバンの叫びが、聞こえた気がした。


瞬間、私はその一人の胸ぐらを掴み、地面に叩きつける。

反撃を警戒するも、相手は完全に気絶をしたようだ。


視線を上げてオーバンを見れば、完全に呆気にとられたような表情。

よく見れば、他の二人もそうだ。


「どうしましたか?」


「いや……あの、強いんだな。クローディア」


「強くないですよ。貴方たちのように鍛えた方相手じゃ、私の体術では歯が立ちませんので。相手が素人で良かったです」


これは本音だった。

戦えるように鍛えてはいるけど、所詮は魔法がメイン。

とてもじゃないが魔法抜きでは、騎士に立ち向かうことは無理だろう。


「いや……そういうことじゃなくて」


「……?どういうことですか?」


「普通、素人が犯罪者を前にしたら恐怖に体が強張って動けなくなると思うんだけど」


「相手が自分より弱い場合は、そこまで怖くないものですよ」


……というより、訓練の賜物かもしれないが。


「そうなのか?」


オーバンが、他二人に視線を向けつつ問う。

問われた二人は、さあ……と苦笑を浮かべていた。


「ま、結果良ければ全て良し、か。悪い、ちゃんと守れなくて。無事で良かった」


「いえいえ、大丈夫でしたので問題ありません」


それから犯人を連行するため、強制的に見回りは終了。

そのまま、詰所に戻ったのだった。


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