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スローライフホラー  作者: 庸
2/2

2.室内の血

目が覚めると、そこは見慣れた天井が広がっていた。

ここは俺の家だ。

つまり今の今まで見ていたのは自分の夢ということなのか?……思い出せない。どうしてこんなことになったのだろう。

とにかく今は朝飯の準備をしなくては。

起き上がると、腕の中で誰かが寝ていることに気付いた。

子供がいる。しかも裸!?

だが、その顔には見覚えがある。そこは夢ではなかったらしい。

「ポチ、ポチや~い」

揺すりながら名前を呼ぶが起きる気配はない。

仕方が無いので再びベッドに押し倒そうとしたとき、ようやく目を覚ました。

思わず抱きしめようとするが、「ぐえっ」という声と共に押し返されてしまった。どうやらかなり苦しいらしくて暴れているようだ。急いで解放してやる。

「もう大丈夫だ。落ち着いて深呼吸をして」

背中をさすってやり落ち着くまで待つこと数分後、なんとか落ち着いたようだったので改めて質問をした。

「一体ここで何をしていたんだ? それにその格好は何なんだ?」

「……」

何も言わずにただ俯いている。言いにくい理由でもあるのかもしれないと思いそれ以上聞くことはやめた。それより先に確認することがある。

「腹減らないか?」

コクリ。

「なら着替えろ。いつまでもそんな恰好をしているんじゃ無い。服はどこへやったのかな」

……。

「わからないか。ちょっと待っていてくれ」

タンスの中から適当なものを取り出し渡してやる。

「ほらこれを着ておきなさい」

言われた通りに服を着替えるがサイズが大きいせいかブカブカしているように見える。

「うーん、少し大きいか。まぁいいか。他に何かいるものはあるか?」

フルフルと首を横に振る。

とりあえずこれで良いとして、これからどうしたものかというところである。

ひとまず朝食を食べてから考えることにしようか。

そう思って台所へ向かう途中子供が後ろを付いてくる。

振り返ると気になることがあるらしい。視線はテーブルの上に向けられており、そこには先ほど自分が食べた食器が置かれていた。

(まさかとは思うがこれを食べるつもりなのだろうか?)

一応聞いてみるとやはりそうだと答えた。

「ダメだよ。これは君の食べる物じゃないんだよ。ちゃんとした食べ物があるんだからそっちにしような。それでもいいかい?」

コクッとうなずく。

よしよしわかってくれたか。では早速用意するとするか。

昨日の残りのシチューがあったはずだからそれを温め直せば十分食べられるだろう。

鍋の中に水を入れて火にかける。その間にパンを用意しておく。後はサラダがあれば問題ないだろう。

スープが出来上がり皿によそうと、匂いにつられてやってきた子供を椅子に座らせる。スプーンを持たせ食べさせようとするのだが、なぜか頑なに拒否される。仕方なくそのまま持たせた状態で食事を開始した。

「おいしいかい」

反応は無いものの手だけは止まっていないことから不味くは無さそうである。よかった。

結局最後まで自分では何もしようとせず全部平らげてしまった。

片付けを終え再び戻ってくると、今度はソファーの上で丸くなって眠っていた。

気持ち良さそうな顔を見ていると起こす気にはならなかったため毛布をかけておいた。

さてどうしたもんかね。このままずっとここに置いておくわけにもいかないし、だからといって連れていくわけにはいかない。

今この子がどういう状況に置かれているのかもわかっていないのだ。

ならばいっそこのこと……いかんいかん、何を考えているんだ俺は! いくらなんでもそれは駄目だ!! だが、もし仮にあの子を連れていくとなった場合、果たして俺一人で面倒を見きれるだろうか?正直自信がない。いやそもそも最初から無理だったのではないか? ああ悩ましい……。

しばらく悩んだ末、一旦保留にしておこうと結論付けた。幸いなことに連れて帰るにしても今日明日の話ではない。時間はまだたっぷりとあるのだ。焦らずじっくり考えていこうじゃないか。

それにしても本当にどうしてあんな夢を見たのだろうね……。不思議でならない。。ただの夢だと笑い飛ばすこともできるだろう。でもなぜだろう。どうしてかあれが現実に起こった出来事のような気がするのだ。



夜になると雨が激しくなってきた。

台風でも近づいてきたのだろうか? しかし外の様子を確認するために窓を開けることが出来ないのが残念だ。こういう時は便利な魔法が使えたらと思う。

おっといけない、今はそれよりも子供のことだ。昼間見たときは元気が無かったが、今はどうなっているのであろう。様子を見に行くことにした。

扉を開くと見慣れない光景が広がっていた。家の中だというのに足元が濡れており、壁や天井からも水が滴り落ちていた。さらに風が強く吹き荒れていた。室内なのに。慌てて閉めようとしたがその時はすでに遅く、一瞬のうちに距離を詰められ、服の端を引っ張られた。

抵抗するも虚しくズルズルと引きずられていき、やがて一室の中に入るとベッドの上に乗せられると同時に自分もその上に乗ると体を密着させてきた。

まるで逃さないと言っているかのように両手両足を使ってガッチリ固定してくる姿はとても可愛らしく思えた。同時に恐怖心を覚えてしまうほどの狂気じみた雰囲気を放っていた。

「えっと……」

何か言おうとした途端顔が迫ってくる。口元に当たる吐息がくすぐったくて仕方が無い。

必死になって身を捩って逃れようとするが全く効果は無く無駄に終わる。子どもの体のどこにこんな力だあるというのか。

「ひゃう!?」

首筋を舐められ思わず変な声が出てしまった。羞恥心を感じていると、首元の空気が揺れ子どもが笑ったように思えた。

(あ~もう好き勝手にしてくれ)

半ば諦めの境地に達してされるがままになっているとその動きを止める。ようやく解放されたと思った次の瞬間首筋にチクッとした痛みを感じた。

思わず声を上げるがその程度で解放してくれるはずも無くまた同じことを繰り返される。体は麻痺しているように動かせない。

(一体何なんだ!? いったい何をされているんだ?)

混乱している間も行為は続けられ次第に意識が遠退いて行き視界がブラックアウトしていく…………

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