もしもし?神様、聞こえてますか。
もしもし神様?聞こえてますか。
こちらは地上です。あ、地球です、ちなみに僕、人間です。日本人です。日本ていうのは地球で言うところのヘソみたいなところで、すごく小さな島国なんですよ。
そうそう、今回神様に電話をしたのは、一つお願いがあってなんです。って、聞いてます?聞いてますよね、神様ですから多分どんな言語でも分かってくれますよね。ぶっちゃけ、神様であればキリスト様でもブッタでも、その他もろもろ存じ上げない神様でも良いのです。え、もしかしてこの電話って、コールセンター的なあれだったりしますか?直通じゃない可能性もあります?…その線は考えていませんでした、そしたら伝言でも構いませんので、どうか神様によろしくお伝えください。
神様は、どうして完璧な人間を作ってしまったんですか?そうです、あの人のことですよ。わかっていますよね。僕はあの人に心を奪われてからというもの、僕の人生は僕のものじゃなくなりました。人生を取り上げられてしまったんです。ええ、僕の責任だと人は言います。でも、それは人の話であって、神様であれば理解をしてくださると思ったんです。神様は、どのように人を作りますか。え、神様によって違う?なるほど、だから白人黒人といるわけですね、そして無宗教の日本人は黄色いのでしょう。でもね、それ以外のところです、目の大きさや鼻の形、眉の位置、髪質、身長、足の長さ、顔の大きさ、唇の形、言ったらキリがないんですが、神様がその、気分で?作った人間って、神様が思っているよりずっとそれに振り回されるわけです。人生決まると言っても過言ではないんですよ。それで人間は愚かに恋をして、自分の人生を別の人生に捧げます。それが僕です。自分のことよりも、あの人のことばかりを考えます。
すると、どうなると思いますか?
そこに囚われて動けなくなって、苦しくなって、まさしく人生八方塞がりです。あの人に依存しすぎた故に、あの人なしでは生きていけなくなる。でもあの人は僕がいなくたって生きていける。
不平等だと最初は思っていました。仕方のないことだと。僕の鼻が低いことも、目が小さいことも、身長があまり高くないことも、仕方ない。仕方ない。そういうものだ、そう生まれてきたのだから。と、思っていましたとも。
ですが神様、気付きましたよ私は。
あなたは人を振り分けた。気まぐれで道を分け、生まれる場所を決め、世界を決めた。あなたの与えた体には、命と魂と心が宿るのです。
あの人…あの完璧な人を作ったのもあなた。こんな僕を作ったのもあなた。生み出したのはあなた。すべて、あなたが仕組んだことなのでしょう?
世界は歪んでいます。神様が思うよりもずっと、違う姿に形を変えている。それはもう、地球が星型になるような、大きな変化です。ですが、多くの人たちはそれに気づいていません。自分たちの容姿や自己証明、承認欲求に夢中で、周りのことなど見えていません。知らない誰かからの評価を求め、飢えています。自分という人生を捨て、作り上げた自分の人生と、崇拝する人間に命を委ねている。あの人が死ねば、私は喜んで死ねる。これは静かな戦争なのです。己の醜美を盾にした、立派な戦争です。わたしは図らずともその兵士となってしまったわけです。
話が長くなりましたが、私の言いたいことは一つであり、願いもたった一つです。
ですからどうか、叶えてください。あ、コールセンターの方でしたら端的にでいいので、僕のこの熱量もほんの少し伝えてもらえるとありがたいです。
どうか、この世界の歪みに、あの人…いや、人間が気がつかないように、気がつかないままで、世界を終わらせて欲しいのです。戦争ではなく、世界を、終わらせて欲しいのです。
僕は、この摂理に気づいてしまった。だからこうして電話をしているわけです。ですから、気づいてしまった邪魔な人間はすぐに消えます。ハイ、この電話を切ったらすぐに、消えます。海の藻屑となり、地球の栄養になります。
そうすれば、地球にこの事実を知る人間は誰もいなくなる。ここに、神様につながる電話があることを知る人間もいなくなる。その先は神様にお任せします。
歪んだ世界の歪みに気がつかない世界は、歪んだ世界を作った神様にしか、作れないのですからね。
『このメッセージを消去しますか?』