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彼女  作者: emi
2/12

彼女 2

今日もまた、お気に入りの公園に来た。


ここは、空が綺麗に見える場所で、


人通りも少なく、ほぼ貸切で時間を楽しむことが出来る。


春になると、一面に菜の花が咲くところが、特に気に入っている。


この場所は私にとって、とても特別な場所だ。




私は、5年前の夏に最愛の夫を亡くした。


当時、中学1年生だった息子と私は、その意思もないままに、


死によって、突然、彼と引き離されてしまった。


この公園は、家族3人の思い出の場所だった。




いつの頃からか、1人で散歩を楽しむようになった私は、


度々ここへ訪れては、ベンチに座って空を見上げるようになった。


寂しい時や、


ひとりで考えごとをしたい時、


何も考えたくない時も・・・


まぁ、一言で言えば、どんな時も、


私は、吸い込まれるように、この場所へと来てしまうのだ。




今日も、ここはとても静かだ。


ベンチに座ると、広い空を見上げて、深呼吸をした。


考えるのは、彼のこと。


この空の向こう側、きっと、何処かに彼がいるのだろう。


とても小さくてもいい。何処かに彼を見つけられたら。


視力が弱いくせに、遠い空をじっと見つめ、彼は何処にいるのだろうかと、


ただ、空を見上げることだけに集中した。


瞬きをする度に、少しずつぼやけていく視界を拭って、


もう一度、しっかりと空を見上げた。




彼に、逢いたい




どんなに目を凝らしてみても、爽やかな青い空がこの瞳に映るだけで、


今日も、そこに彼の姿を見つけることは出来なかった。




ほんの少し、落胆しながら、小さなため息をひとつ吐き出すと、


秋の爽やかな風が、私の頬を撫でるように通り過ぎていった。

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