反芻と決意
「では、頼んだぞ翔太くん」
「私達の大切な麗華ちゃんをお願いね!!」
「はっ!」
どう見ても暴力団幹部の部屋にしか見えない威圧感マックスな当主のお部屋から敬礼して退室する。
高校一年生なのに和服が毎日着て馴染んでいるのがやはり好印象なのか、ご両親は最初から受け入れて下さって安心した。
見た目はダンディーなマフィアのボスとその奥様って感じだけど気さくな人達だった
そして合気道を始め、格闘の戦闘力が高いということでお嬢様の学校内での護衛を仰せつかりました。しかもバイト代をくれるそうです。有り難い
「なんかアレだな。ファンタジーチート転生でお姫様と友達になって王様に学園で娘を護衛してくれって言われる定番イベントみたいだな」
「私お姫様って柄じゃないけどね」
「あら、では私もハーレムメンバー候補ですか?」
「咲夜さんもオタク文化わかる人なんですか?!」
「はい、お嬢様に調教…布教されましたので」
「言い間違いが酷すぎておハーブが生えますわ」
「ぶっ…おハーブって…w」
西園寺と咲夜さんと話しながら歩いていくと、玄関ホールのロータリーに、きた時と同じ個人タクシーが滑り込んでくる…タイミングが完璧すぎて怖いわぁ…
多分あの車もタクシーに偽装してるだけで、完全な仲間内の車輌と運転手なんだろうな
2人に丁寧に礼をして、帰路に着く
「ただいま戻りました。
美優、変わりはないか?」
「お帰りなさいませ、お兄様!はい!美優は元気です!」
和服美優はいつ見てもほっこりするぜぇ!!
しばし兄妹で会話をしてから自室に引き上げる
「マジか………まじかぁぁぁぁ」
マジか、と二回呟く。
1回目は思わず出たといった感じで。2回目はしっかり吐き出す空気に意味を乗せて。
西園寺から聞いたふざけた物語を頭の中でゆっくり反芻していく
幼馴染ざまぁかも知れないという予測はかなり検討外れだったな。
幼馴染ざまぁの幼馴染がパワハラ娘になっちゃうのは主人公が6割以上悪い。
さっさと告白して両想いになりゃいいんだよ。
散々溜め込んでから絶縁だ!!とかキレちらかすんじゃなくて、普段からはっきり駄目なことは駄目だと言って手綱を握ればいいんだよと思う。
やたら女々しいナヨナヨ野郎だから幼馴染もどんどん意地になっちゃって暴言や暴力がエスカレートするんだから
逆に、アカネの性格は俺が育てたものじゃない。会った時かにはすでに人格はクソだった
隣の家の見た目は美少女、性格はガチのクソ…なるほどクソ鈍感野郎の周りに被害ばかり出すクソハーレムの幼馴染枠と言われれば納得だ。小さい頃から疎遠になるように努めたのは僥倖だったな
アリサとの出逢いも、俺こと翔太が小説通りのキモい偽善者だと全く違ったものになるだろうしな。恐らくだが、クソ偽善者の小説翔太はアリサの自衛のための暴力を頭ごなしに批判するんだろうな。そこから拗れた関係になり、何かのきっかけで歪んだ好意に変わるんだろう。
…現状、アリサは……犬っぽい。
俺も大好きだしアリサも俺のことが大好きだと全身で表してくれるけど…loveという感じはしない。あくまでvery likeって感じだな現状は。
詩音と美優は今甘酸っぱい関係だ。出会いは小説と違い中学校でできた友人(俺)の妹というロマンチック要素ゼロのありがちな出逢いになったが…2人が恋仲になることに関して強制力的なものがあるとも思えない
したがって小説でクソ闇堕ち主人公だからといって現状の詩音を遠ざけたり拒絶する気も無い。
そもそも、小説では美優を苦しめた人間を全て地獄に叩き落としたあとお墓の前で自殺しちゃうぐらい一途で情熱的な奴だ。美優を大事にしてくれるならそれでいい。
最後に情報をくれた西園寺本人だが、5歳から転生者行動してるので俺とのフラグは無意識に破壊した可能性が極めて高い。
本人曰く『多分あれでしょ。親と喧嘩して家飛び出して迷子になっててナンパされてトラブってるところを助けられる的なヤツでしょ』ということだったが…まあそんなところだろうなと俺も思う
しかし、西園寺も西園寺で自分のことを庶民ビッチとクソ浮気男のせいで破滅する悪役令嬢だとばかり思っていたからな
本来なら入学前のタイミングで俺にビッチ化しているので「翔太様と同じ学校に行きますわ!」みたいな感じなんだろう
折角前世の記憶でビッチにならなかったのに、破滅回避したつもりで来た青嵐高校が破滅の舞台だったというなんともご愁傷様な裏目だが、彼女は前向きだった
現状の懸念としては
まず、西園寺を狙ってるクソ犯罪者組織があるということ。
平気で女性を拐って酷いことをできるクソ猿不良グループが存在しているということか。
とにかく美優やまい、まいの家族とかにシリアス展開が起きないようにしなけりゃな
色々と西園寺と共同戦線を張ることになるだろう
「少し身体を慣らしておくか…」
俺は作務衣に着替えて、鍛錬のために庭に出た




