表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/50

036 外出許可

「そんなわけでこれが今日作った石鹸だ」


「わぁ! 凄いですね! 良い香りの泡が出ています!」


「泡もだが効果も抜群だぜ。これまでよりも綺麗になる。洗ってやるよ」


「そんな――ひゃっ、シュウヤ君、ちょっと、そこは、あぁぁっ」


 夜、風呂でアリシアに石鹸を披露していた。

 背後から彼女の腋の下へ手を通し、豊満な胸を丁寧に洗う。

 傷のない綺麗な肌は、石鹸と相まって滑りがよろしかった。


「だ、駄目ですって」


「いいではないか、いいではないか」


「ひゃぅぅぅ」


「ただ洗っているだけなのにエロい声を出すなぁ」


「もー、分かっていてそんなことを……あっ、あっ」


 アリシアとは毎日こうやって風呂を楽しんでいる。

 いつもは湯船に浸かってイチャイチャするが、今日は浴槽の横で楽しむ。

 そして、十分に風呂を楽しんだ後はお決まりの――。


「邪魔するよーん!」


「ス、スカーレット!?」


 まさかのスカーレット乱入だ。

 背後からアリシアの胸を揉む俺、カチコチに固まる。


「おおっと、お楽しみ中だったかぁ、失敬、失敬」


 ニヤニヤと笑うスカーレット。

 明らかにこの状況を狙って乱入してきている。


「あわわわわわっ!」


 大慌てで湯船に潜って隠れるアリシア。

 身体中に付着した泡によって、湯船が濁ってしまった。

 普段なら御法度の行為だが、今回は状況が状況なので大目に見よう。

 それよりも、だ。


「どうしてスカーレットが此処に?」


 俺も何食わぬ顔で湯船に入って尋ねる。


「石鹸なる神のアイテムを教えてくれたお礼をしようと思ったのだけど……」


 俺とアリシアを交互に見てニヤリ。


「必要なかったようね? 既に気持ちよくなっているみたいだし」


「そ、そそ、そんな……!」


「大人の女とも遊びたくなったらいつでもおいで。同い年の子が相手では味わえないような気持ちよさを教えてあげるから」


「喜んで!!!!!!」


「ふふっ、それじゃ、アリシアが窒息死する前に帰るわね」


 スカーレットが浴室から消えていく。

 その次の瞬間、湯船からアリシアが飛び出るのだった。


「身体を綺麗にしたことだし寝るか」


「分かりました!」


 風呂をでて魔法で身体を乾かす。

 そのまま全裸で布団へ行き、イチャイチャしてから寝るのだった。


 ◇


 休日がやってきた。

 日本に居た頃は嬉しくてたまらなかった休日だ。

 しかし、この世界における休日はそれほどでもない。


 何もすることがないからだ。

 テレビもねぇ、ゲームもねぇ、ネットもねぇ。娯楽がない。

 当然ながらキャバクラ等の大人のお店も存在しねぇ。

 更に、今はスポット外へ出ることが原則として禁止だ。


 その為、休日にすることといったら魔法くらいなもの。

 土魔法で作ったプールで泳ぐとか、風魔法で身体を浮かせるとか、その程度。

 最初は新鮮で楽しめるが、1日も経たずに飽きてしまう。


「やっぱ休みの日くらいはスポットから出られないと話にならん!」


 ということで、俺はチャボスに交渉した。

 チャボスの家で、いつもの如く囲炉裏を囲みながら。

 隣にはアリシアが座っている。正座で。


「ならば認めよう……! 休みの日……! スポットから出ることを……!」


 するとチャボスはあっさり認めてくれた。

 妙に芝居がかった話し方をしているが、とにかく快諾だ。


「えらく素直だな。あれほど俺が出ることを拒んでいたのに」


「お主は此処の……いや、人類全体の救世主だからな。ワシだって可能な限り意思を尊重したい。だから妥協することにしたのじゃよ」


「流石は皆の長老様だぜ。物分かりがいいな」


「じゃが、活動範囲はワシの魔法が届く所に留めておいてくれ」


「それってどのくらいだ?」


「正確な距離は分からぬが、お主が海藻を採るのに潜った辺りまでじゃ」


「すると……半径5キロないしは6キロあたりってことだな」


「スポット外へ出ることを認める代わりに、お主も活動範囲はこれで妥協してくれないか?」


「いいぜ、半径5キロもあれば問題ない。早速、アリシアと外へ行ってくる」


 話が済んだので立ち上がる。

 同じタイミングでチャボスも立つ。

 アリシアは1テンポ遅れて続いた。


「今日は外で何をするのか決めておるのか?」


「決めているさ。いまだ改良出来ていない最後の料理――ゲロマズワインを腰が抜かすほど美味い別物に作り替える」


「あのワインはワシが編み出した最高傑作なんじゃが」


「言っちゃなんだがゲロマズだぜ。最高傑作というが、中途半端にブドウを混ぜただけだろう。ワインを作るにしてもあの味は酷いと思うぞ。日本でワインを飲んだことがない俺ですら不出来だと分かる」


「とんでもない言いようじゃな……。じゃが、お主のことだ。本当にあのワインがゲロマズに感じる程の物を作れるのじゃろう」


「当たり前だ。作り方も教えてやるから楽しみにしてな」


「期待しておる」


「それじゃ、行ってくるぜ」


 チャボスの家を出ようとする。

 ――が、チャボスに背を向けた瞬間、忘れていたことを思い出した。


「そうそう、俺が作る本物の酒にもブドウが必要になるんだ。だからブドウを用意しておいてくれ。自分で採りに行ってもいいが、面倒だし此処にあるのを使おうと思ってな。手を加えていないブドウが残っているだろ?」


「よかろう」


「決まりだな。それじゃ、改めて、行ってくるぜ」


「うむ、気をつけてな。アリシアも」


「はい! 長老様! 行って参ります!」


 アリシアと共にチャボスの家を出る。


「シュウヤ君、どうやってワインを改良するのですか?」


 広場を歩いていると、アリシアが尋ねてきた。


「改良っていうか、別の酒を造るんだ。ブドウは使うけど、ワインではない」


「いったいどんなお酒なのですか?」


「それは……いや、今はまだ言わないでおこう」


 答えようとして、口をつぐむ。

 そうこうしている内に自宅へ到着した。


「期待を裏切らないから楽しみにしてな」


 家で道具を竹の籠に詰めながら言う。

 ヨモギの葉、枯れ草、火起こしセットといういつもの3点セット。

 あとは外を出歩くので、手に武器を持つ。

 竹の先端に石包丁を取り付けた切れ味抜群の槍だ。


「さぁて、久々のサバイバルだ。行くぞ!」


「おおー!」


 アリシアに竹の籠を背負わせ、スポットの外へ向かうのだった。


【お知らせ】

私がノクターンで連載している

『異世界ゆるっとサバイバル生活』の書籍化が決定いたしました。

発売日は2020年の2月以降を予定しております。

詳細は12月16日の活動報告に書いていますので、是非……☆


皆様の応援があったからこその書籍化です。

いつもお読みくださり誠にありがとうございます。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ