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011 寝床作り

 サバイバルの基本は食事と住居の確保だ。

 どちらも最優先にしたいところだが、優先順位は決めないとな。


「此処が川です!」


 アリシアに近くの川へ案内してもらった。

 森の中にあり、目覚めた時に俺が居た海の方向へ伸びている。


 まずは食の要である水分の確保を確実にしておきたい。

 メシは2週間以上食べなくても生きられるが、水は3日断つと死ぬ。


「幅はそこそこ。深さは膝が入る程度か。流れが弱くて、水質は微妙だな。下流だしこんなものだろう。ま、問題はないか」


 川の状態を確認する俺。

 俺の独り言を耳にしたアリシアが「えっ!?」と驚く。


「この水を飲むのですか!?」


「いずれはな」


「そんなぁ……死んじゃいますよ!? 川の水は危険です! 飲み水は水魔法で用意するか、井戸の水じゃないと!」


「飲む時は煮沸するから問題ない」


「そういえばシュウヤ君、井戸の水を飲む時も煮沸って言っていましたよね」


「得体の知れない水を飲む時は煮沸するのが基本だからな」


「早く見たいです! 煮沸!」


「別に面白くないと思うけどな……」


 アリシアは煮沸に対してどんなイメージをしているのだろう。

 そのことが気になったが、今は先を急がねばならない。

 サバイバルはスピード勝負だ。


「川の近くに寝床を用意したいが……近すぎても良くない。もう少しだけ離れた場所に移動しようか」


 移動の際は注意を怠らない。

 特に見落としが厳禁なのは、動物の糞と蛇だ。


 動物の糞を見れば、付近にどういう動物が棲息しているか分かる。

 危険な肉食動物の気配を察知したら避けねばならない。


 蛇はうっかり踏むと襲われる。

 種類によっては猛毒を有しているから危険だ。


「この辺にするか」


 遠目に川の上流が見える地点を選んだ。

 洞窟があれば寝床を作る手間が省けたのだが、ないので妥協する。


「どうして此処を選んだのですか?」


「安全度が高そうで、何よりも資源が豊富だからさ」


 特にありがたいのは、何かと役立つ竹の存在だ。


「さて、まずは寝床を作るぞ」


 水分補給の目処がたっているので、衣食住の「住」に取りかかる。

 この世界の気温は20度半ばと快適だが、それでも住居は優先したい。

 雨でビショ濡れになると低体温症のリスクが跳ね上がるからな。


「早速、斧の出番だ」


 俺は竹の籠を地面に置き、中から斧を取りだした。

 それを見たアリシアは、俺の真似をして斧を手に持つ。


「アリシア、この木を叩くぞ」


 俺が目を付けたのは未成熟の細い木だ。

 軽くへし折れそうな幹が情けなく伸びている。


「俺が叩いた所を叩くんだ。いいな?」


「はい!」


 根っこの近くを斧で叩く。

 同じ場所を、今度はアリシアが攻める。

 そうやって交互に何度も斧を打ち付けた。


「こんなものだろう」


 幹が良い感じに削れた。

 軽く手で押すだけでもグラグラと揺れるくらいだ。


「あとは手を使って……」


 両手で幹を持ち、全力で引っ張る。


 バキッ!


 軟弱な木はあっさりと折れた。

 たった20分たらずの作業で立派な材料の獲得だ。


「まだどんな寝床が出来るか分からないだろ?」


「わかりません……!」


「ここから一気に形になっていくぜ」


 後の作業も簡単だ。

 まず、折った木を別の太い木にかける。

 次に、折った木に対し、左右から枝をかけていく。

 これで正面から見ると三角形の寝床が完成した。


 ただし、このままだと骨組みしかない。

 だから、葉っぱや保湿性の高いコケ等を屋根に被せる。

 こうすることによって雨風を凌げて、且つ、温度も保てるわけだ。


 今回は時間に余裕があるので床材も整えておくことにした。

 付近にあった竹を折り、パカッと縦に割って、寝床の床に並べていく。

 断面を下にして、丸みがある部分を上にした。


「よし、完成だ!」


 こうして立派な寝床が出来上がった。

 中は結構な広さをしている。

 大人2人と子供1人が並んで寝転べそうだ。


「わぁー、凄いです! シュウヤ君、中に入ってもいいですか?」


 アリシアの目がキラキラと輝いている。


「かまわないよ」


 俺が許可すると、彼女は大はしゃぎで寝床に入った。


「竹がひんやりしていて気持ちいいです!」


 敷き詰めた竹の上でゴロゴロするアリシア。


「あまり動き回るなよ。家が崩れかねないからな」


「わわっ! すみません!」


「かまわないさ――お邪魔するぜ」


 俺も寝床に入ってみた。

 広さも高さもそれなりで良い感じだ。

 足下が狭いけれど、構造上、これは仕方ない。


「上は広いが下は狭いな。寝る時に脚が当たるかも」


「かまいませんよ!」


 使い勝手を確かめると、俺達は寝床を出た。


「喉が渇いたし水分補給だな」


「煮沸の時間ですね!」


「そうだ」


 遠目に見える川は上流だ。

 勢いもそれなりにある為、水質は非常に良い。

 おそらくだが、そのまま飲んでも問題ないレベルだ。


 それでも煮沸はサボらない。

 サバイバルに油断は禁物だ。


「アリシア、選ばしてやる」


 右の人差し指を川に向ける。


「1つ目の作業は、そこの竹を伐採し、竹の中に川の水を汲むこと」


 今度は竹の籠を指して言う。


「2つ目の作業は、道具を出してこの場で火を起こすこと」


「好きな方を選べってことですか?」


「そうだ。もう一方の作業は俺が引き受ける。これらの作業は二人がかりでやることではないから、手分けして行うぞ」


「分かりました!」


 アリシアが顎に手を当てて考え込む。

 その間、俺は何食わぬ顔で彼女の胸を凝視していた。

 寝床作りの作業によって服が汗ばんでおり、薄手の服を透けて胸が見える。

 この世界にはブラジャーが存在しない為、乳首の輪郭までよく見えた。

 たまらんなぁ。


「決めました! 私、火を起こします!」


「難しい方を選んだか。では頼むぞ」


「はい!」


 寝床から数歩の距離で火を起こしてもらう。

 あまりにも寝床に近すぎると引火する恐れがある。


「シュウヤ君に幻滅されないよう、私、頑張ります!」


「幻滅なんかしないさ」


 現にアリシアはよく働いている。

 好奇心の強さが奏功しているようで、とても積極的だ。

 作業自体も丁寧だし、働きぶりに賞賛こそあれ幻滅はない。


「俺も頑張るか」


 竹の筒を持って川に向かう。

 勢いよく流れる川に筒を入れて水を汲んだ。

 透明の美味しそうな水が空洞だった竹の中を満たす。


「いずれは罠も作らないとなぁ」


 川にはたくさんの魚が棲息している。

 大体は小魚だが、中にはそれなりに大きな物も。


 川魚は最高の食材だ。

 余裕が出来たら罠を作って獲ってやろう、と心に誓った。

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