50年前
19xx年
星が地球に落下した。
星の接近は10年程前から予測されていたが、
それは太陽系を横切るかあるいは通過するかといった内容で
地球に接近するとは思われなかった。
5年が経過し、その軌道が正確に計算され始めた。
3年後には、間違いなく地球に衝突するという結論が出た。
接近しつつある星の軌道は専門家なら誰もが計算することができ、
この星の余命はすぐさま誰もが知る事実になった。
衝突まで残り1年。
ありとあらゆる価値観が叩き壊された。
戦争が止み、宗教が歴史の一部となり、経済は活気を失い、この世から幸福と呼べるものは消え去った。
それでも生活が終わることはなく、
麻痺したような平穏が訪れる。
上を見る人が多くなった。
もちろんまだ遠くにあるその星が見えることはないし、
星のある方向は地球の裏側ということもある。
それでもまぁ、昼も夜も上を見る人の多いこと。
空に星が現れる日がやって来る。
衝突すると予測された島には多くの人が集まった。
空に現れた小さな点がかすかに光をちらつかせる様子を
誰しもがただ呆然と眺めていた。
やがて、その点は次第に大きさを増していき、
やがて太陽をも飲み込み、瞬く間に空を暗くした。
そして、
体が引き裂かれるほどの轟音に太陽を降ろしてきたような熱と光。
19xx年
星が地球に落下した。