6 米がない・・・だと?
「へいらっしぇー今日はヴァナナーが安いよー」
威勢の良い店主に迎えられ、店内を見て歩く。
野菜類はジャガイモ、キャベツ、ニンジン、玉ねぎ、レタス、アスパラ、カボチャ、カリフラワー、トウモロコシ、生姜、ブロッコリー、ニンニク、サヤエンドウ、キュウリ、トマト、ピーマン、ダイコン、カブ
それ以外にも普段見ることのない食材が並んでいたが小麦や米などが見当たらず、店主に尋ねると
「小麦は粉屋に決まってるだろう?コメ?悪いが聞いたことが無い食い物だな・・・野菜か?」
ジャガイモなどを中心にある程度買って鞄につなげておいた亜空間収納に入れる。
「ほうアイテムボックスか便利なもん持ってるな。」
安物でそんなに容量はないんですがと濁しつつ店を出る。
「食いたい物は食いたい時には無い物か・・・しかし米が無いとなると食生活が厳しいな・・・」
その後防具屋で簡単な防具を揃え、調味料や小麦粉などを仕入れたがどこで聞いても米らしきものは知らないようだった。
物知りで教えてくれそうな人・・・エイシドさんくらいしか心当たりがないと言うか知り合いも極端に少ないな・・・
日も高くなってきたのでそこらの露店で買ってみるのだが食文化としてはイマイチなのか
肉!塩振って焼いとけ!
野菜!煮るか焼いとけ!塩で食っとけばいい!
パン!日持ちさせるのが一番!ガンガン固く焼け!
どうもこの世界では食事はエネルギー補給であり、おいしさなどは二の次であるようだった。
固い串焼きや食いちぎるのが困難なサンドイッチが普通に売れており、自分の顎がこの世界の住人に比べ貧弱出ることを知る。
いや!この地方の特色なのかもしれない!そう信じたい!
ギルドに着くとリセレンさんに聞こうとするがなぜかカウンターに列ができており他の職員にエイシドさんへの面会を頼む。
5分もかからず前回の部屋に通されエイシドさんと対面する。
「飯がまずい?ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラコヒューコヒュー」
笑いすぎて呼吸困難を起こしたようだ、こちらとしては笑い事ではなく真剣な話なのに・・・
「ヒューヒューこの町は西方伯が納めるマレテックス、東西南北を収める辺境伯の開拓地じゃ、中央には王都ダイナマイトがある。」
笑いすぎて呼吸困難のじz・・・エイシドが息も絶え絶えに説明するには説明するには
・ダイナマイト王国の王都はダイナマイト、国王はダイナマイト家500年ほど続いているそうな
・東西南北に辺境伯と呼ばれる貴族が居て開拓などを進めている
・開拓地では味などは二の次で保存と力を出すための栄養としか見ていない。
・北は動物類が豊富で肉が美味い
・南は海があり海産物が豊富で美味い
・東は穀倉地で様々な種類の野菜や穀物を生産しているとのこと
・西は林業や鉱山がメインで鍛冶や木工などが盛んであるとのことだった
Oh Jesus・・・なんてこった・・・一番飯の不味い地域に飛ばされたのか
米、ライス、餅、など聞いてみるが聞いたことは無いらしく有るとすれば東方で望み薄だとのことだった。
ちなみにここから王都までは馬車で3か月ほどかかるそうだ。
善は急げと東方に旅立とうとするがじz・・・エイシドに止められる。
「1人での旅は色々と危険が付きまとう、PTを組むかせめてキャラバンのポーターか護衛として一緒に行った方が良い。マレテックスから東方に行く交易路は無いのじゃ、南方か王都で東方に行くキャラバンを探した方がよいじゃろうな。」
王都までキャラバンだと4か月以上掛かるとのことだが南方は2か月ほどで到着するという。
「安全な方は王都ルートだが南方へ行くよりも倍ほど遠いじゃろう、東方におぬしの求める植物があるかどうかも怪しいがそれでも行くのか?」
海産物が豊富なら南方ルートも有りかもしれない、危険と言っても交易路として確立してるなら護衛等ついてるキャラバンなら大丈夫だろうと判断する。
「よし、わかった。ほかで依頼を受けるときギルドを通せ、ほかのギルドマスターには追加で印章押してもらえば貴族でも大物でなければ無茶は通せん。」
なんでこのじじいがそんな権限持ってるんだと訝しんでいると・・・
「なんじゃ?まだ気付いておらんかったのか?ワシはギルドマスターの元締めでグランドマスターと呼ばれておるんじゃ。ビビったか?」
このギルドで偉い人だろうなとは考えていたがギルド全体の偉い人とは思わなかった。
「はて・・・グランドマスターの印章はどこやったかのぅ・・・」
大丈夫かボケてるんじゃないだろうな・・・
心配するがエイシドはさらさらと上等そうな紙にペンを走らせる。
「ほれ、これがあれば少々の奴らは手出しせんし、身分保障としては上等の部類に入るぞ。」
『この者「ナオ」はニトロ家の客人であり、
対 応 は 十 分 留 意 す べ し。
あとはわかるな?
エイシド=ニトロ ㊁
』
色々突っ込みどころは有るがありがたく受け取り亜空間収納に収める。
「まぁこいつを使ってわる~い事をしたらどうなるかは身を持って知ることになるじゃろうから気を付けるようにな。」
軽く言っているが殺気?威圧?うん正直ちびりそうなほど怖い。
「それじゃ南方に行くキャラバンには連絡しといてやろう、護衛、ポーター、客、どれを選ぶ?」
キャラバンは南方伯領都に着くまでに町や村によって行商、仕入れなどしながら進むそうだ。
護衛の場合、食事は個人負担、宿代などの滞在費はキャラバンが持ってくれるという。2か月で金貨2枚が報酬とのこと、但し途中で現れた魔物や盗賊などは頭割りで護衛が分けるという。
ポーターの場合、積み込みや荷卸し村などの行商の手伝いをする代わりに食事や宿代を持ってくれるという。報酬は無し。
客の場合、御者座、または客車の乗っての移動で、宿食費は個人負担、価格は金貨3~10枚。価格に差があるのは移動方法の差で徒歩金貨3枚、御者席金貨4枚、荷台金貨5枚、馬車金貨10枚との事。
客馬車の場合だけ少し特殊で、馬車と御者を別途雇うのに金貨7枚かかるとのことで1人金貨3枚+頭割りで勘定するそうだ。
どれでも良いのだが食事がこの町基準だとつらい・・・自炊をメインとするなら護衛か客だな、お金には困ってないし客で行くか。
さて・・・あとは徒歩か客馬車か・・・キャラバンの様子を見て決めるか。
「客馬車の場合は早めに言っといてやれよ、急いで雇うとろくな馬車が来ないぞ。」
エイシドが言うには南方に向かうキャラバンは昨日戻ってきたばかりで、荷卸しや買い付けなどで数日かかるとの事。
「顔合わせくらいなら席を設けてやるがどうじゃ?」
夕食の席に誘われたが躊躇していると
「安心せい!美味い店に連れて行ってやるわい。ついでにわしも経費で美味い飯が食える。」
ジト目で見ると
「ああ・・・リセインには内緒な?あの娘は優秀なんじゃが融通が利かん。」
夕方にギルドに来るよう言われ、時間が空いたので何をしようか迷う。
食材はそこそこ揃えた。
武器防具揃えた。
お金は金貨がまだ30枚くらい残っている。
そう考えると食材を調理し、貯めておくか新しく買った武器を試すくらいか。
調理は場所を借りたりするのが難しそうなので門の外で武器を試すか・・・
忘れてた・・・魔法も試しておこう。
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