4 冒険者登録~早速やらかす
ギィー
西部劇に出てきそうな両開きのドアが軋んで音を立てる。
酒場が併設されている正面には格子の嵌ったカウンターが見える。
左側にはメモの張られた掲示板、右側が酒場でまだ日も高いと言うのに呑み潰れている者も居る。
正面のカウンターに進み受付に声をかける。
「お嬢さん冒険者の登録はここで良かったかい?」
「ハイ?登録はこちらで大丈夫ですよ新規登録ですか?」
「これが門で受け取った仮証明書ですほかに必要なものはありますか?」
「いえ、書類に記入していただくだけで大丈夫です。では細かく説明させていただきますね」
・名前、年齢、得意スキル(必須) 出身地、スキル、など(推奨)書けなければ代筆あり(有料)
・ランクはFから始まりAまである(例外としてSクラスも過去にいた)
・発行料は銀貨1枚、何度も再発行すると悪質と見られ発行料が高くなることもある
・1度に受けられる依頼は1件のみ(常設依頼、討伐依頼は含まれず)
・1年以上依頼を受けなかった場合ランクダウンの処置あり(Fは除名)
・冒険者は自己責任、依頼の失敗が多いと除名処分になる
「こんな感じですが質問はありますか?なければこちらに手を触れてください。」
水晶玉のようなものに手を置き渡された用紙に名前、ナオ 年齢、62歳 得意スキル、格闘と記入していると
「ナオさん?年齢がおかしいですよ?きちんと書いてください。他はまぁ大丈夫ですか。年齢は直しときますね」
62歳に斜線が引かれ25歳に書き直される。
「ではこちらがギルドカードになります。これに貯金もできますので無くしたり盗られたりしないでくださいね。」
いい笑顔で銀貨を受け取り、ギルドカードが渡される。
プレートは銅色でFと大きく書かれている。裏面に名前、年齢、特技が記入してあった。
無くさぬようにとポケットに入れるふりをしながら亜空間収納に入れる。
「すいません外でスライムを狩った魔石があるんですが、どこで買い取ってもらえるんですか?」
「ここで買い取りできますよ。カードと魔石を出してください。」
ポケットから魔石とカードを取り出す。
「確認できました。スライムの魔石10個で1銀貨になりますがカードに入れますか?」
「いえ、買う物もありますのでそのままください。」
その時後ろから声がかかる。
「へっへっへ~あんちゃん稼いでるじゃねぇか~ちょっと奢ってくれよ~財布ごとでいいからよ~」
「ちょっとあなたいいかg「お断りします。」しな・・・へ?」
「あ”~?なんだと~?」
「ですからお断りします。いい年をして恥ずかしくないんですか?」
酔っぱらいは顔を真っ赤にして拳を振り上げる・・・が無駄であった。
次の瞬間には振り上げた腕が捻りあげられ、床に押し付けられていた。
「いたたたたたたt「黙れ、殴る覚悟が有るのなら多少痛い目を見る覚悟もあるんでしょう?」
有無を言わせぬ状態に周りの職員や酔っていない冒険者が止めに入る。
「まぁこれに懲りたら人に集るような真似はせずまじめに働くことですな」
捻りあげてる腕を離し、ギルドから出た後に宿屋など聞いておけばよかったと思いつつ、通りを歩いていく・・・
通りにある雑貨屋で鞄を買い身の回りの物も買い鞄に入れる・・・ふりして亜空間収納に入れるのだが雑貨屋を出たところで宿のことを思い出し雑貨屋に戻りお勧めを聞いてみる
教えてもらった『自由の夜亭』で個室を借りると手持ちのお金も尽きまたスライムでも狩ろうと門へ向かう。
「よう!なんとかなったか?」
「ロバートさんか、おかげでなんとかなったよ。これ仮身分証、お金が尽きたんで狩りでもしてくるよ。」
「お前ってやつは・・・武器も持たずにどうするつもりなんだ?」
「最悪石で殴るよ」
「ちょっと待ってろ・・・短剣取ってくる。」
青筋を立てながら短剣を渡してくる。
「短剣でも良いから買っとけよ~」
「うん、ありがとうロバートって良いやつだな」
「世事はいいからさっさと稼いで来い!」
追い出すように門から出され再度狩りを始める。
そういえば亜空間収納に入れたら死ぬんだからじゃんじゃん放り込めばよいのでは?
と思いつき手近なスライムを放り込んでいく。
結構な数を放り込んだ後、入らなくなったので確認してみると
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スライム 85
生活用品
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これ以上は入らないようなので出してみると
ズベシャアアアアアア
粘液が周りに飛び散る。
スライムは死ぬと纏まっていられなくなるようだった。
中が心配になり、一応生活用品も出して確かめてみるが粘液はついていなかった。
どういう仕組みなんだろう?
粘液たまりの中を魔石を拾い集め再度スライムを放り込んでいく。
ズベシャアアアアアアズベシャアアアアアアズベシャアアアアアア
絶滅させるのではないかと思うほどスライムを狩った?のだがスライムは一向に減らず、周りにはまだまだスライムが居た。
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スライムの魔石 350
生活用品
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85×4回で340のはずが350個あった・・・計算が合わないが小さいスライムでもいたのだろうか?
これだけあれば当面生活は大丈夫であろう・・・と思う。
粘液だらけの靴をホウスイできれいにして門へ戻りロバートに礼を言い短剣を返す。
「もう貸さないぞー!きちんと買えよー!」
ロバートに散々買うように言われたため、ギルドに行ったあと買いに行こう。
ギルドに入ると喧騒が止まり、こちらをうかがうような視線が感じられる。
「お嬢さんスライム狩ってきたんで魔石の買取お願いします。」
「リセレンです、お嬢さんはやめてください。」
「それは悪かった、ではリセレンさん買い取りをお願いします。」
カウンターにザラザラと魔石を出していく。
「どうしたんですかこれ?」
「狩ってきました(にっこり)」
「少々お待ちください。」
魔石を持ち、リセレンさんは奥に入っていった。待つこと数分・・・ギルド内はザワザワと喧騒が戻ってきた。
「奥に席を設けましたのでそちらで話をさせていただきます。」
理由はわからないが個室に案内されそこで老人が待っていた。
「ナオくんじゃったかな?まぁ座りなさい。ワシはエイシドと言う。なぁにちょっとした確認と払う金額が大きくなったからさっきみたいな馬鹿が出ないようにするためにここに呼んだんだそう警戒するな。」
こちらが警戒していることを悟ったのかひょっひょと笑う。
毒気が抜けて座ると老人が言葉を続けた。
「まず聞きたいのはどうやって大量にスライムを狩ったか、ということじゃ」
なんか失敗したかなー出しすぎたかなーと思っていると
「おぬし笑えるくらい顔に出すぎじゃな、なぁに長いこと人をみとるから他人の知らんこともたくさん知っておるわい。」
「さぁ・・・なんのことでしょう?」
とぼけてみるが全く隠し通せる気がしないな・・・
「はぁ・・・まいりました、他言無用でお願いしますよ。」
と亜空間収納に入れ大量に狩ったことを話す。
「ほほぅおぬし『ワタリ』か久しぶりに見るのぉ。安心せい秘密は墓までもっていってやるわい。」
『ワタリ』とは
・数十年から数百年に1度亜空間収納を持つものが現れる。
・異世界から来たと語られることが多く、渡ってくるもの『ワタリ』と呼ばれる。
・忌み嫌われることはないが利用しようと貴族や商人が寄ってくること。
・ばれない様にする為に注意すること。
・亜空間収納は珍しいがアイテムボックスと呼ばれるたくさん入る鞄などもあるため上手く誤魔化す方法があること。
・過去に凶悪な『ワタリ』も居たため西方ではばれると身の危険があること。
などと思えてもらった。
「まぁ今度からワシに言うとよかろう。リセレンにエイシドに用があると伝えればいい。今日は裏口から帰ると良かろう。金はどうする?」
一気に金貨35枚そのうち30枚をギルド預かってもらい銀貨で50枚もらってギルドを出たころにはもう夕方近く、宿に戻ることにした。
「早速ばれたな・・・明日は日課の走り込みしながらお店を探そう。」
一人ごちりながら宿に向かうのであった。
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