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クエストを達成して強くなる  作者: ミカタナ
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馬車は何事も無く順調に進み、鬱蒼とする森の中の木々を切り開き作られた鉱山都市ダスクモルゲンに着いた。


楓達は馬車から降りて辺りを見回す。


ダスクモルゲンは鉱山都市というだけあって鉱石の採掘場所として名高い。

毎日鍛冶場から大量の武器が生産され他の町へ馬車で武器が運ばれていく。

二人はまずは宿を取るために人の多い場所へ向かう。

町には点々と鍛冶場がありカーン、カーンと鉄を叩く音が聞こえてくる。


人の列についていった先は市場となっており、楓は市場にて焼きたてのパンを買うついでに店の主に商人達が利用する宿を聞く。 


店の主は快く教えてくれて楓達は礼を言いその宿に向かう。

ふふーん、商人達が使う宿なら冒険者もいないでしょう! と楓は思慮の浅い考えをするがすぐに分かる事になる。


商人達が使う宿は豪華な造りをしており、みるからに高かそうで宿の扉には傭兵らしき者達が立っており周囲に目を光らせている。


楓はこの人たちを無視して入っていいのか分からなかったのでおずおず話しかける。


「すいません、この宿を使いたいのですが中に入っていいですか?」


話しかけると傭兵は頭の天辺から足の爪先まで値踏みするような視線を向け楓を鼻で笑う。


「ここはお前達のような冒険者が泊まる宿ではない、分かったなら帰るんだな」


あ、ここは駄目だなと早々に見切りをつけ楓はおとなしく引き下がる事にした。



楓は若干不機嫌になりながらアリシアに話しかける。


「あの人たち本当失礼しちゃうよね、お金ならあるから別の場所を探そうか」


「私は楓と一緒ならどこでもいい」


「そうだね、二人一緒の部屋で泊まれるとこがいいね」


別々の部屋で寝て寝込みを襲われでもしたら大変だものね。

それから楓達は冒険者がまばらで比較的に安全そうに見える宿を見つけ、楓は数週間分の宿泊料を支払い、少ない荷物を宿に置きアリシアと共に冒険者ギルドへ向かうことにした。




ダスクモルゲンの冒険者ギルドはセルホトと同じ構造をしており簡単に見つけることができた。

二人が扉を明けギルドの中に入るとテーブルは全て占領されており、各々が報酬の事や討伐に行く獲物やらの話しをしており、ギルドは冒険者で賑わっていた。


楓はアリシアを連れて提示版をざっと見ていく。

この町周辺にいるであろう魔物の依頼書を数枚持ち、楓は依頼を受けさっそく魔物の討伐に向かうのであった。



門を出た二人は木々の根を飛び越え魔物を求めて歩いて行く。

ここの魔物を私が余裕で倒せたらアリシアのレベル上げをしようと思う。

私が苦戦するようならばアリシアを連れていっても危ないしね。

そしてアリシアは神聖魔法が使えるらしい。

神聖魔法とは主に治癒や光属性の攻撃全般を呼び、ヒールも神聖魔法に入るらしい。


どこで教わったのかを聞いたら、寄付金を教会に渡せば教えてくれるみたいだ。

どこもお金が必要なんだね……

でもそれならアリシアは神聖魔法使って怪我とか治して医者みたいな事をしていけば魔物を倒さずともお金を稼げていいのではと提案したら教会の許可が無いものが治療に金銭を求めてはいけないらしい。

ちなみに奴隷は許可を貰うことはできないらしい。


教会の利権のようなものだろうか?

村人達は教会や教会の許可を得た治療士、又は錬金術士に作られたポーション等で怪我を治したりしているが、治療費は高額で払えない村人たちは滅多な事が無い限り自然治癒に任せている現状らしい。


外を歩けば魔物がうようよいる世界で怪我をすれば治療費で借金になる可能性がある。

一般の人が暮らしていくのも大変そうだ。


そして魔法屋には神聖魔法は扱っておらず、私が神聖魔法をさらに覚えるには教会に行く必要があるみたいだ。


アリシアは神聖魔法の『ライト』と『ヒール』が使えるらしい。

ライトは術者本人の周囲を光で照らす魔法だ。

試しにライトの魔法を頼んでみたら薄暗い森に蛍光灯のような光が照らす。


おーこれなら鉱山の中に入ってもランプを手に持って行動しなくてもすむね!

どれくらいの時間照らされるのかを聞いたら、詠唱者の実力に左右されるらしくアリシアは5分くらい照らせるらしい。


周囲が光で照らされてるせいか、クッションサイズのキノコが飛び跳ねながらこちらに向かって来る。

向かって来るキノコを見つめながら楓は依頼書に書かれていた標的を思い出した。

あれがファンガスかー。動きは読めるけど倒せるかは別だよね。


試しにウィンドカッターを放ち様子を見てみると事にする。

するとキノコは風の刃により輪切りにされ動かなくなった。

輪切りになったキノコを足で突き動かないか確認するとどうやらキノコは動かなそうだ。

うん、これなら大丈夫そう。


ついでにクエストに載っているかグリモを呼び出し聞いてみると載っていたらしく、達成されていた。

空中からグリモが出てきた事によりアリシアが目を見開き驚いているが様子が見える。



フォレストファンガス:1/1 精神力+5 ペット:精神力+2 達成!


精神力だーこれが上がったら幽霊とか怖くならなくなるとか?

それとペットってなんだろう? もしかしてアリシアのことか!?

グリモからしたらアリシアはペットなのか……

もしペットがアリシアの事ならばこれはアリシアのステータスが上がるのだろうか?

だがアリシアのステータスが分からないぞ。


試しにアリシアのステータス! とグリモに言うが反応なし。

言い方が違うのか、そもそもアリシアのステータス自体無いのか分からないところだ。


グリモの事を興味深げに見つめているアリシアに、そういえばアリシアにグリモを紹介していなかった事を思い出す。


「アリシア、この子はグリモって言って私の相棒なの」


「楓はアーティファクトを持っていたの?」


「アーティファクト? なにそれ」


この世界には時々神から恩恵を持って生まれる者達がおり、その恩恵を持つものは差はあれど強大な力を有し皆名高い名声を得てるらしい。

神の恩恵は2種類あり能力スキルとアーティファクト、それらをまとめてギフトと呼ぶ。

ギフト持ちは神の加護に満ちていると人々は言う。

そしてアーティファクトとは強大な力を持った武器や防具の事をさす。

アリシアは楓の持つ宙に浮かぶ魔道書グリモ等見たことがなく、それはアーティファクトではないかという事らしい。


赤子が武器持って生まれてくるなんて怖くないかと素直に感想を言うと、生まれた赤子の傍に知らないうちに武器や防具が置かれているらしい。


そしてそのアーティファクトは傍にいた赤子しか使える者はおらず故に神から与えられた物なのだという。


それならグリモは神さまから貰ったものだから、アーティファクトみたいな物なのかな。


楓はアリシアに肯定するとアリシアの表情は変わらないが、両手を胸の前で組み目をきらきらさせ凄いという。


うんうん、グリモって凄い奴なんだよ!

この子がいなかったら私死んでたかもしれないしね!


楓はグリモを自慢しつつも、アリシアにはグリモの中身がどう見えるのか気になったので見せてみるとアリシアには白紙にみえるらしい。


アーティファクトならば楓しか扱えないので見えなくても仕方ないとアリシアは言う。

そういうものなのか……


この話は置いといて今は魔物を狩る事に集中しようと思う。

アリシアは能力的にサポート向きなので、私がピンチになったら援護と倒したモンスターの報酬部位を回収をお願いして私が魔物を狩ることにする。


フォレストバット:3/5 素早さ+10 ペット:素早さ+3 討伐


フォレストボア:3/5 攻撃力+10 ペット:攻撃力+3 討伐


グリズリー:1/5 攻撃力+12 ペット:攻撃力+4 討伐



楓が魔物を探すのに気配感知が役にたった。

人間なのか魔物なのかまでは分からないが、楓は周辺にいる生き物の場所が分かる。

気配感知のおかげで魔物が苦労せず見つかり難なく狩れている。

ステータスが上がった事により剣に関して素人な楓でも剣で斬りつけるだけで魔物は切断され行き絶えた。

剣についた血を布で拭き魔物の死体を見ながらしみじみステータスの凄さを実感する。


私ですらこんな簡単に倒せるのだもの世の中のギフトを持っている人はもっと凄いに違いない!

精進しなきゃ!!


楓が自身を鼓舞する中、アリシアは魔物を難なく倒す楓に見惚れていた。

やがて二人の麻袋がいっぱいになり二人は帰ることにした。


フォレストファンガス:10/10 精神力+12 ペット:精神力+4 達成!


フォレストバット:10/10 素早さ+12 ペット:素早さ+4 達成!


フォレストボア:5/5 攻撃力+10 ペット:攻撃力+3  達成!


グリズリー:5/5 攻撃力+12 ペット:攻撃力+4 達成!


名前:楓 

レベル:1

体力:132/132 

魔力:126/126

攻撃力:160

器用さ:325

防御力:191

知力:37

素早さ:188 

精神力:43


こんなものかな?


ギルドに戻り受付のお姉さんに換金と二人のギルドカードの更新をお願いする。

お姉さんが受け付けの奥から水晶を持ってきた。一人ずつ水晶に手を置くと二人のギルドカードが光だし字が書き換えられていく。


名前:カエデ 

レベル:1 

ランク:E


名前:アリシア

レベル:5 

ランク:E


グリモのステータスで予め見ておいたので分かっていたが、やはり楓のレベルは上がっていない。

アリシアのレベルは上がるのに私のレベルは何故上がらないのだろう?

疑問に思った楓だが、大して魔物を倒すのに支障はなかったので気にならなかった。


そして換金だが、やはりセルホトより此方の方が魔物も強いらしく換金の利益は此方が上だった。

数日狩れば数週間分の宿代もすぐに返ってくる額だった。


冒険者は危険な仕事の分報酬が高いのだろう。

二人は冒険者ギルドを後にし、市場で林檎を麻袋いっぱいに買い宿に戻る。

宿に戻ると気立てのいい女将さんと年若い娘が出迎えてくれた。


「戻ったね! 夕飯は今にするかい?」


「これを置いてきたら夕飯にします」


ここの宿は朝と夜の食事付きで、女将さんの家族と数人の奉公人で営む宿屋だ。


「あたしが置いてくるわ!」


女将さんの娘である少女が林檎を持とうとするが、女将さんが娘の首根っこを掴みそれを制する。


「こら! 大事な物だったらどうするんだい!」


「えー私だって役に立つもん!」


「すまないねぇ、本当にこの子は……夕飯の用意をしておくから置きにおいで」


「はい、そうしますね」


そんな二人を楓は微笑ましく思えた。

楓とアリシアは林檎を部屋に置き広場のテーブルに座る。

テーブルに座ると料理がどんどん運ばれてテーブルに所狭しと置かれていく。


「スープはおかわり自由だからいつでも呼んでおくれよ」


「はい、ありがとうございます」


「ありがとう……」


二人は暖かいうちに料理を食べることにした。

楓は果実水を一口飲みコップを置くとアリシアに話しかける。


「アリシア今日一日どうだった?」


「どうとは?」


アリシアは丁寧に肉を切分けている。


「ほら疲れたとか楽しかったとか!」


「私は楓と一緒に入れれば幸せ」


アリシアはナイフを置き楓を見つめてくる。


「うーん、なんか違うような……じゃあさアリシアはこの料理中で何が好き?」


アリシアは顎に指を当て思案し、やがて粉吹き芋を見ながら答える。


「じゃがいもが好き」


「うんうん! これからそういう好きが増えたら嬉しいよね」


「私の好きが増えると楓は嬉しいの?」


「私が嬉しいというよりも一緒にいる間に色々な体験をしてアリシアの好きな物が増えたら良いかなーって思っただけ」


詳しくは聞いていないがアリシアは最近奴隷になったんだと思う。

その時に辛い事だってあったと思う、なのでせめて私と一緒にいる間くらい楽しかったらいいなーぐらいの軽い感じだ。


アリシアは目を伏せ、僅かに肩を震わせながら呟く。


「楓……私は……」


そう呟き、アリシアは黙ってしまった。

もしかして地雷を踏んでしまった!?

楓は気まずい雰囲気を払拭する為に別の話題を振る。


「明日は教会に行こうか。神聖魔法を覚える事が出来るかもしれないしそれにギフトだっけ?

それを調べる方法があるんでしょ?」


そうなのだ、神からの恩恵であるギフトは二つあり能力スキルとアーティファクトがある。

だが能力スキルを授けられても気づかずに生涯を終える者もいる、そこで教会は神の恩恵を受けた者より多く見つける為の検査を無料でおこなっている。


ちなみにこの国の子供達は10歳になると検査を受け、ギフト持ちだと判明した場合は国に集められ育てられるらしい。


だがギフトは10歳以上でもふとした瞬間に目覚める場合もあり教会は随時検査をおこなっている。

楓は自分の能力スキルが検査に出るのか気になったので、一度受けてみても良いかもしれないと思っている。


それと検査でギフトが見つかったら国に従事する必要があるのかをアリシアに聞いたらその必要な無いらしい。


なんでもかなり昔に無理やり国に従事させようとしたら大惨事となり、それ以降は任意での加入となった。


「わかった。明日は教会に行く」


「それで時間があったら狩りに行こうね。明日の予定は決まり! 冷めちゃうからご飯たべよう」


楓は未だ熱いスープに息を吹きかけ飲むと胃が熱くなる。


「うん、食べる」


アリシアは切り分けた肉をフォークで刺し食べる。


「美味しい」


アリシアが美味しいと言った肉を楓も食べると確かに美味しかった。

周りが喧騒な中二人は静かに机に並べられている料理を食べていく。

最後に果実水を飲み干し二人は料理を全て平らげ宿の部屋に戻る。


楓は部屋に戻ると林檎をグリモに納品し、アリシアが風呂から出るまでヒールを唱え続ける作業に入る。

魔力が無くなり、丁度良い頃合にアリシアがお風呂からでてきた。

アリシアはいつも着ているエプロンドレスではなく、バスローブを着ており、体から滴る水を布で拭きながらベットに腰を下ろす。


アリシアも出たことだし私も入ってくるかな。

楓も風呂に入り終え、入っている間に回復した魔力でまたヒールを唱え続ける。

すると今まで黙って楓を見ていたアリシアもヒールを唱えだす。

アリシアも練習すれば威力が上がるのだろうか? 何にせよ練習する事は良いことだよね。

二人は各々の限界まで唱えては休む作業を繰り返し数時間が経つ。

魔力の行使により息を乱した二人はベットに横たわり眠ることにした。









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