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クエストを達成して強くなる  作者: ミカタナ
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3

窓から陽が差し込み、陽の眩しさに楓はベットから起き上がり背筋を伸ばす。

あ~久しぶりにゆっくり寝れた気がする。


今日は買い物に出かけよう、現代の服は目立つからまず服と護身用ナイフが必要だ。

でも先にご飯だよね! 楓は自分の腹から鳴る音を聞きながら宿を後にする。

大通りは朝から栄えており、露店や出店が立ち並んでいる。

楓は匂いに釣られて買ったケバブを食べながら大通りを練り歩いていく。


歩いている途中に甲冑の絵が書かれている看板を見つけた。

入ってみると中には男性用品を中心とした様々な防具が並び、店の端っこに女性用の防具が置かれてあった。

楓はその中で身軽そうな女性用の防具を手に取ってみるが、重過ぎてすぐに手を離す。

こんなに重たい服を着てたら動けないや。もっと魔法使いが着るような服はないかなと探していると、奥から店員の男性が顔を出した。にこやかな様子で楓に話しかけてくる。


「お客さま何かお探しでしょうか。当店は品揃えには自信を持っていますよ!」


昔に服屋の店員に捕まってしまった事を思い出しながら聞いてみる事にする。


「ここには魔法使いが着る物はないでしょうか?」


「魔法使いですか……うちは魔法屋じゃないからね~。よそにいったらどうだい?」


客じゃないと思ったのか適当に答えた店員。

楓は品揃えはどうしたんだと思ったが魔法屋があるという事が収穫だと思い後にする。



次に防具屋の隣にある武器屋に入ると剣がずらっと並んであり、奥にはスキンヘッドのムキムキな怖そうなお兄さんが店員をやっていた。


一瞬引き返そうかなと思ったが、ナイフを買う必要をがあると思いとどまり楓はナイフを探す。

ナイフはすぐ見つかったが、大中小様々なナイフがあり、どれにすれば良いのか迷っていると、

いつの間にか斜め後ろに怖い店員が立っており楓は飛び上がってしまった。


「おう、どうしたどうした? ナイフを買っていくのか、予算は? 使い道用途は? 贈り物か?」


楓が飛び上がったのを目にやりながら、ナイフを飾り棚から取り出し矢継ぎ早に質問していく。


「えっと……自分用で予算は銀貨一枚ほどで、護身用と剥ぎ取りに使いたいです」


「銀貨一枚ならこれだな。量産品だが良く切れる。それにあんたの手にも収まるはずだ」


お兄さんはあるナイフを取り出しナイフの柄の部分を楓に向けて渡す。

柄の部分を握り軽く振り回してみる、うん、これなら私でも扱えそうだ。


「これにします! これを下さい!」


楓は即決するとお兄さんは少し笑ってナイフを鞘に入れる。


「まいどあり。おまけで研ぎ石付けておくよ」


親切に研ぎ石を用意してくれたものの使い方が分からなかったので素直に聞いてみた。


「研ぎ石の使い方が分かりません」


「あんたこれまでどうやって生きてきたんだ? まあ野暮な事は聞かねえけどよ……こうやるんだ」


お兄さんは分かりやすく実際に剣を手に取り実践して見せてくれた。


「わーありがとうございます! あとこの辺で魔法屋はありませんか?」


ついでとばかりに魔法屋の場所を聞くと、お兄さんは思い出す様に魔法屋の場所を教えてくれた。

最初は怖いお兄さんだと思ったけど、とても良い人だったので心の中で謝罪をした。

用が出来たらまた来ようと誓い、お兄さんに手を振り店を出た。



ナイフも買ったし次は魔法屋だ。お兄さんに教えてもらったとおりに行くと、

そこには少し寂れた雰囲気の看板が架かっていないお店があった。


ここであってるかな? 楓は恐る恐る中に入る。

店の中にはホルマリン漬けらしき入れ物や魔法のスクロール、いかにも魔法使いが着るであろう服が店内に飾ってある。


楓はローブを手に取り、自身の体に合わせ気に入った服を2、3着買うことに決めた服を持って、

店員のおばあさんがいるカウンターに向かった。カウンターの後ろの壁には魔法のスクロールらしき物が

いくつか飾ってあり、購入する予定の服を渡しながら、店員のおばあさんに話しかける。


「すいません、後ろにあるスクロールは何があるのでしょうか?」


「お嬢ちゃん魔法使いかい? 今あるのは火、風、水の初級魔法と水属性の状態魔法《毒》だねぇ。

買っていくかい? 銀貨2枚だよ」


ぐぬぬ……今の楓の手持ちは銀貨3枚と銅貨がちょっとだけだ。服も買うとしたら今買える魔法は一つ。

せっかくなので水の初級魔法を買う事にした。

もう少し持って来れば良かった……でもこれから沢山稼いで全部買えばいいんだ。

一生使えるから得な買い物だしね。


楓は前向きに考え、会計を済ませてた後、試着室を借りて新しい服に着替えた。

ついでに渡されたスクロールを早速読んでみる。

内容が難しく、全く意味が分からなかったが、最後まで読むとスクロールの文字は消えただの白紙となった。本で確認してみると、そこには習得、アクアボールの文字がちゃんと書かれていた。


また来ますとおばあさんに言い楓は店をから出て、早速新しい魔法を試す為に門の外に出るのであった。


 

 



「アクアボール」


水が塊となって一角うさぎを襲いかかり、一角うざぎは息が出来ずに死んだ。

アクアボールは水の塊を出現させ、操り、飛ばす呪文のようだ。

今の所はウィンドカッターの方が使い勝手が良さそうだが、アクアボールは水がなくなった時の非常用と思って買ったのでそこまで気にならなかった。


今度はナイフで角を取ってみるために楓は溺死した一角うざぎに恐る恐る近づき、ナイフで角を根本辺りから切り始める。ナイフは簡単に皮を切りぐいぐいと肉に入っていき角を切り落とす。


楓は角を持ち上げた。初めて魔法を使わずに剥ぎ取れた事に感動した。

初日よりは馴れた動作で一角うさぎを狩っていく。今日の目標、目指せ40匹!





今日の目標40匹の角を早々に集め終え、町へ引き返す。

ギルドに向かい換金した後、さっそく魔法屋に向かい買える魔法を全部買うことにする。


「おや、水だけじゃなく火の魔法も扱えるのかい? すごいじゃないか」


スクロールを手に持ちおばあさんを会計の為に呼ぶと何故だか褒められた。

もしかして目立つ行為だったか!

楓は内心自分の迂闊さに嘆きながら誤魔化すことにする。


「いえ、これは知り合いにあげようと思っていた物なんです。

私はまだまだ半人前で水魔法しか扱えません」


「そうだったのかい、それはすまなかったねぇ。

でも安心しなさい、レベルが上がれば2属性くらいは扱える日は来ると思うわ」


全属性が扱えるのは珍しい事なんだろうか?

このスクロールの中の魔法が使えなかったら無駄金を使ったことになる。全部使えるといいなぁ。


「そうですね、精進したいと思います!」


会計をしてる間におばあさんに他の魔法は無いのかと尋ねてみれば、

魔法使いが訪れることが少なく魔法のスクロールを買いに来る客はほとんどいないそうだ。

だからスクロールは最低限しか置いてないらしい。もっと上級の魔法は都心に行けばあるかもねぇとのことだ。


魔法のスクロールが売れなくてここの経営は大丈夫なのだろうか? と失礼な事を思っていたら、それに察したのかおばあさんはここは主にポーションを売っていて生計を立てていて魔法関連はおまけらしい。


ポーション! ここの世界はポーションもあるの! 

試しに見せて欲しいと言ったら水色の液体が入った小瓶を持ってきてくれた。


楓はポーションを手に取り小瓶を傾けながら液体を覗き込む。

魔法が使えなくなる状況もあるかもしれない。いざという時の保険にポーションを一つ買うことにした。

スクロールとポーションを麻袋に入れて店を出る。


買い物をすべて買い終えた頃には日が沈みかけており、一旦、宿に戻ることにした。

一週間分の宿泊料を払い、部屋に入ってすぐ麻袋からスクロールを取り出し読み漁る。

すべてのスクロールを読み終え魔法を習得した楓は、帰り際に露天で買った鳥の串焼きを頬張り腹を満たす。


基本的に夕飯は予め買っておき部屋で取る。

何故かというと夜に外を出歩くなんて危険極まりないからだ。

もちろん宿でお金を払えば暖かい食事を出してくれるが、冒険者だけが泊まれる宿だけあって客は皆冒険者。


いわゆる戦いのプロフェッショナル……そんな人達に絡まれたらきっと路上で死んでるに違いない!! 

といらぬ心配をし絡まれないよう私は朝まで部屋に引きこもる。ノックをされても絶対に出てやるものか!

 

それに部屋に引きこもっていても出来ることはある。空間から本を呼び出し魔法の熟練度を見てみる。


ウィンドカッター:121/200 風属性威力+2

ヒール:24/100 光属性威力+1  

アクアボール:2/100 水属性威力+1

ファイア:0/100 火属性威力+1  

ポイズン:0/100 水属性威力+1  


新しく追加されているって事はこの属性は使えるってことでいいのだろうか。

これからの事を考えると、どれくらい威力が上がるかは分からないが上げるに越したことは無い。

部屋で唱えても安全なヒールの熟練度を上げる為に、楓はヒールを魔力の限界まで唱えたら、休み魔力が回復したらまた唱える作業を眠くなるまで繰り返すのであった。







時刻は早朝、楓は草原にいた。

草原には一角うさぎ以外にも多くの魔物がいる、今日は勇気を出して一角うさぎ以外を倒してみようと思う。


できれば防御力が上がる魔物が良いが早々見つかる訳が無く見つけた魔物を狩る事にする。

現在見かけた魔物は芋虫と狼。

倒せれば芋虫は攻撃力、狼は素早さが上がる。

狼はいつも群れで行動しているから却下、残るは芋虫だがいかにも毒を持っていますよ! という風貌をしており大きさはドラム缶を転がしたくらいのサイズだ。


この芋虫は依頼書にも載っており、それほど報酬は高額ではなかったはずだ。なら弱いはず。


勇気をだすのよ! と己を奮闘し、芋虫が視界に映るぎりぎりまで離れた。

よくあるゲームでは虫は火属性に弱いし、良く燃えそうという単純な理由でファイアを芋虫に向かって放つ。


ファイアは着弾し、芋虫は火に包まれる。

しかし、触角を怒らせ、火を物ともせず予想以上の速さで此方に向かって来る。


こっち来てる!? 楓は焦りながらも、すかさずファイアを放つと芋虫は若干動きが鈍くなったが、もうそこまで来ており楓に突進してきた。


楓は突進をまともにを受け地面に倒れ、ころころと転がっていく。

芋虫は倒れた楓を追いかけ圧し掛かかろうとするも、楓はナイフを取り出して芋虫に切りつける。

急所に当たったのか、芋虫が悶えて怯んだ隙に起き上がり楓は魔法を唱える。


「ファイア!」


これで死ななかったらナイフで戦う事になるぞ。

頼むから倒れてくれと心の中で願いながら火に包まれていく芋虫を見張る。

願いが通じたのか燃えながら芋虫は倒れてぴくぴくと痙攣し虫の息となっていた。

楓は火が消えると同時に芋虫に止めを刺す。


死んだ芋虫を見ながら楓は座り込む。

なんとかなったけどこれじゃあ一角うさぎを狩った方が報酬的には効率がいいかもしれない。

だが芋虫を倒せば倒すだけ私の攻撃力が上がり私は強くなる。

最初は苦戦するかもしれないけど頑張るしかない。

楓は一角うさぎを主に倒しつつ、芋虫を余裕があったら倒して草原を探索していく。

それと心配は杞憂に終わった。再び芋虫に挑戦して分かったが、威力+1のおかげかファイアに比べてウィンドカッターの方が強く2発芋虫に当てたら呆気なく倒れたのだった。    


最初からウィンドカッターを打っておけばよかったか……。


少し後悔しつつもファイアの熟練度も上がるのだし、それにこれからどんな魔物が襲い掛かるか分からない以上、無駄な事なんて何も無いと前向きに考え狩りを再開する。




「もったいないよね」


楓は一角うさぎから角を切り落としながら考えていた。そう、一角うさぎの死体だ。


ギルドに持っていけば買い取ってくれるが、たくさん持ち歩けば血の臭いを嗅ぎつけて狼が寄って来てしまう、なので普段楓は角を取ったらその辺に放置しそれを狼達が見つけて食い漁っている光景を目にしてきた。


うーん、何かに使えないかな?


いっそのこと死体に毒を盛ってみるかと、楓は失敗しても良いぐらいの軽い感覚で一角うさぎの死体にポイズンを使う。これが功を奏する。

毒状態の一角うさぎを放置し、草むらに隠れて様子を伺う。

すると狼達が早速やって来て一角うさぎを食べ始める。


どうなるんだろう?


楓が興味津々で眺めていると、食べ終わる頃に変化が訪れた。

食べた狼が倒れ始めたのだ。


これはチャンスかもしれない!

楓はそそくさと身動きができない狼に近づき喉元をナイフで切っていく。

なんともあっさり狼達を倒す事ができた。


毒ってすごいな、威力が上がれば即死もありうる。

狼を倒し、少し自信をつけた楓は麻袋がいっぱいになるまで休憩を挟みながらも魔物を倒し続けた。




貯金が増えていくのは嬉しいものだ。

麻袋の底でパリンパリンに割れたポーションだっていくらでも買えるのだから。

同じ麻袋に入れるべきではなかったと反省するが、私には金がある。

ポーション用の鞄もその内買おう。


先ほどまでパンパンだったようやく麻袋を空にし、楓はほくほく顔で宿のベットに寝転んだ。

楓は寝転びながら本を出し天井に向けて翳す。

魔物倒せば私はどんどん強くなる。

強くなれば生き残れる確率は増し、そしていずれは元の世界に帰る事が出来るであろう。

楓はふと思う、この本とはおそらく長い付き合いになるのだからいつまでも本と言わず名前があった方が

良いのではと。


でも名前か~。知ってる名前から付ければいいかな?

ネクロノミコン、ソロモンの鍵、金枝篇、うーんどれもしっくり来ないなぁ。

楓はあれこれ考えるが突如思考を放棄する。

あー思いつかない!! 

もう安直にグリモワールを略してグリモでいっかな! うん、グリモに決めた!

ベットから起き上がり本に宣言する。


「貴方の名前はグリモよ! これからも宜しくね、グリモ」


それに答えるかの様にグリモが輝きだし本の表紙に名が刻まれていく。

え! 名前本に載っちゃうの!!

もっとカッコイイ名前にした方が良かったかも……

楓は若干後悔しながらもまあ人に見せびらかす物じゃないしと思い直す。

名前が決まった事だし訓練、訓練、とひたすらヒールを唱えて夜は明けていく。








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