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クエストを達成して強くなる  作者: ミカタナ
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「楓はレベルいくつくらいなの~?」


「レベル1ですよ」


楓を中心に三人は階段までの道のりを歩いて行く。


「そんな冗談通じないよ!」


嘘をつかれたと思ったステラが頬を膨らませる。


「では私のレベルはご想像にお任せします」


楓は邪魔なゴブリンにファイアを唱えると、ゴブリンは炎に巻かれやがて魔石に変わる。


「待ってて今当てるから! えーとね……70代くらいかにゃ?」


「はずれです」


曲がり角で隠れているゴブリンに向かってアクアボールをお見舞いする。


「えー! 違うにゃー? おーしーえーてーよぉー」


「楓に構わないで亜人」


アクアボールでゴブリンを水で包み込みと、息ができずゴブリンはじたばたともがいている。

苦しむゴブリンに楓は心臓と思われる箇所を一突きする。


「やれやれ、アリシアは嫉妬深いのにゃ。これじゃあ楓は大変なのにゃ~」


「楓は関係無い……!」


剣を抜くとゴブリンは消滅し魔石が落ちている。

楓は魔石を拾いアイテムボックスに入れる。


「ステラさん、アリシアをからかうのは止めて下さい」


楓は階段の前にたむろするゴブリン達にウィンドカッターを放つ。

1匹のゴブリンはズタズタになり倒れ伏したが、もう一人のゴブリンが剣を持ってこちらに向かってくる。


「させないにゃ」


楓に真っ直ぐ向かってくるゴブリンの背後にステラが回りこみ、ゴブリンの喉を掻っ切る。


「ごめんごめん、アリシアが可愛いからついからかいたくなっちゃうんだにゃ」


ステラは地に倒れるゴブリンを見ずに楓に笑う。

思うにステラはそれなりにレベルが高いのではなかろうか。

現在37階に来ているがステラは苦戦することなく戦っている。

これなら別に楓達と行動しなくても良いのではと思うほどだ。


「あー! あそこに宝箱があるにゃ!」


ステラが指差す方向に宝箱がよく見ないと分からない場所にあった。


「じゃーん! ステラちゃんの七つ道具の出番にゃ!!」


ステラは何処からか針金を取り出し頭上に掲げる。


へー本格的なんだね。


宝箱にステラが近づき徐に針金を鍵穴に差し込む。

かちゃかちゃと音が響かせ、やがてかちりと鍵が開く音が聞こえた。


宝箱が開き中から巾着型のアイテムボックスが出てきた。


「小遣い程度になるかにゃ~」


ステラはアイテムボックスを見ながら言う。


「これは後で競売に出して三等分にするにゃ! アイテムボックスは見つけた私が責任を持って預かっておくね!」


そう言うとステラがアイテムボックスを腰にさげる。

ステラの腰を見つめると腰にはぶら下げられた別のアイテムボックスがもう一つあった。


あっステラもアイテムボックスを持っているんだね。


「あんまりじろじろ見ちゃ駄目だにゃ……お金取っちゃうにゃよ?」


ステラは恥らうようにもじもじする。

楓も失礼かなっと思って目を別の場所に向ける。なんだか気まずい……

アイテムボックスかー。後でステラにアイテムボックスを買い取れないか相談しよう。

しかしステラが宝箱を見つけてステラが宝箱を開けたのだから、別にステラが貰っても良いのになと、思いながらも、こういう些細な事からパーティのいざこざが生まれるのかもしれない。


「ステラさんはしっかりしているのですね」


「これくらい普通だよ~? 楓はパーティを組んだ事がないのかにゃ?」


「そうですね。アリシア以外とパーティを組んだのはステラさんが初めてですね」


「ならパーティの良さを私が教えてあげる!!」


ステラは楓に引っ付き、あれやこれやパーティの良さを語っていくが楓には無縁の話しに感じた。楓自身が言うのもなんだが、冒険者は信用ならないので当分はアリシアと二人で充分だと思っている。


……だがステラは悪い奴ではないと、身振り手振りにパーティの良さを語るステラを横目で見ながら楓は思う。


「……フォトン」


アリシアがフォトンを前方にいるゴブリンに唱えると眩い光に包まれゴブリンは消滅する。

楓はステラを離してアリシアの元へ向かう。


「そろそろレベルが上がったんじゃない? 今度、冒険者ギルドでカードを更新してみようよ」


「うん、楓も一緒に更新しよう?」


「そうだね」


私のギルドカードを更新する意味は無い気がするが、何か変化があるかもしれないもんね。 

アリシアはゴブリンが落とした魔石を手に持ち微笑む。


「んにゃー!! 私も混ぜてよ~それに楓はなんで私に敬語なのー? 距離を感じるにゃ~!!」


楓とアリシアの間にステラは割って入る。


「親しく無い人には敬語なんです」


「遠まわしに親しく無いって言われてるにゃ……」


アリシアはむっとするも楓の一言に安心するが、逆にステラは落ち込みだす。


なんというか二人は対照的だなー。


楓はアリシアとステラを見比べながら思う。


「なら敬語が崩れるまで仲良くなるだけだにゃ!」


ステラは落ち込んでいたと思ったらすぐに顔を上げ謎の闘志を燃やす。


ステラは切り替えが早いのだろう。


楓はころころ変わるステラの表情を見ながら感心する。


「見ててにゃ、楓! 私の魅力でメロメロにしちゃうんにゃんだから!!」


ステラは楓に指を指して宣言する。


「はいはい」


楓は茶番を終わらせて、周囲にいるゴブリンを倒す事に集中する事にした。


こうして邪魔なゴブリンを倒して順調に階段を上り、楓達は苦戦することなく50階に到達する事が出来た。


50階は円形の石造りの大きな広場となっており、中央には何か大きな物体が立っていた。


いかにもボスですって感じだなー。


大きな物体の見た目は大きなゴブリンなのだが、筋肉が以上に発達していて、顔に当たる部分には目や鼻が無く、顔全体が大きな口になっており、開けた口から牙が見え隠れしていた。

正にその様は化け物の言葉が相応しい。


化け物は広場の中央から動く気配が無い、恐らく楓達が一定範囲に近づくと襲ってくるのであろう。

三人はどうするか其の場で相談する。


「楓は戦士でしょ? 楓が先攻した方がいいにゃ」


「お前が行け、亜人」


「私は魔法使いであって戦士じゃないよ」


楓は訂正して化け物を見据える。


うーん……この場で一番丈夫なのは私なのでたぶん私が行った方がいいのだろうなー。


「私が行くから二人は援護して」


楓は二人に伝えると化け物の方へ向かっていく。


「楓は死なせたりしない」


「楓、頑張ってにゃーん!」


二人の声援を背後から聞きながら、化け物に一歩、また一歩と近づくと化け物が動きだした。


重い足音をさせながら化け物が楓に走ってきている。

楓はウィンドカッターを唱えるが、化け物は傷がつくのも恐れずになおも楓に迫ってくる。

とうとう二人が衝突するほどの距離になると楓は剣を手に持ち構える。

その刹那、化け物は腕を振り上げ楓を殴りつけようとするが楓は剣で受け止める。


受け止めた瞬間、楓に衝撃が走り僅かに後退する。


力が強いな……


楓に拳を受け止められ、腕に傷を負っているにも関わらず化け物は力で楓を制そうとする。

尖った爪が剣越しに楓の顔面に迫るが、楓は剣の柄に力を込め、逆に化け物を押し返し、離れた拍子に胴体に狙いを定め斬りつける。


「ウゴォォ……!」

 

化け物は楓に切りつけられた事に怒り呻き声を上げ、楓に突進してくる。


「フォトン」


楓が化け物の突進をどう避けるか考えていたら、後方からアリシアの声が聞こえた。



眩い光が化け物を襲うが、化け物の突進の方が早かった。



再び衝撃が走るが、先ほどよりは余裕があるため、間近にいる化け物に向かってファイアを唱える。

楓の魔法は直撃して化け物は火達磨になり肉が焼ける臭いがした。


あつい!


燃え盛る化け物は楓になおも食いついてくるので楓は熱さに耐えられず化け物を蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた化け物は受身も取らずに転がっていく。


この魔物は自身の傷を厭わず攻撃を繰り返しているので一気に叩いた方が良いかもしれない。

ゆらりと化け物は立ち上がり、口から涎を垂らしながら楓に向かって走ってくるので楓もまた化け物の方へ向かって走ることにした。


両者がぶつかり合うが今度は楓の方が勝っていた。

楓は力を込めて化け物の腕を斬り落とす。


化け物の腕が空に飛ぶ。


「グォォォ!!」



化け物は叫び声を上げ数歩、後退するが楓は許さなかった。

楓はさらに追撃する。

先ほど斬りつけた胴体と同じ箇所に狙いを定めて刺し、そこから無理やり肉を剣で引き裂く。

胴体の半分ほどを切断したが、まだ動いている。一刀両断しておけばよかったか。

とにかく動かなくなるまで斬りつけよう。なので今度は反対方向に剣を向けて完全な切断を狙う。

楓の考えを読んだ化け物はそうはさせないと楓に向かって片腕を振り絞るが、その腕にナイフが刺さる。


おそらくステラだろう。


ステラの援護のおかげで楓は化け物の攻撃を気にすることなく、化け物を胴体と下半身をおさらばさせた。

まだしぶとく動いているのでさらに斬りつけていると、ようやく化け物は消滅していった。


……倒せたという事でいいのかな。


「楓……!」


アリシアが駆け寄ってくるが、それより先にステラが駆け寄って来た。


「流石私が見込んだ人! ますます好きになっちゃうにゃ~ん!」


ステラは楓に抱きつき頬をすり寄せてくる。


「楓が困っている!!」


アリシアが怒りながら楓の傍へやって来た。


楓はステラを剥がすと化け物が居た場所を見やる。

するとそこにはバケツサイズの魔石と赤い指輪が落ちていた。


あの化け物のドロップ品かな?


ステラは魔石を見つけると目が輝きだす。


「んにゃにゃ~!! この魔石は高く売れるにゃ!

指輪は鑑定してみないとわからにゃいけど高いと思うのにゃ!」


ステラが自分のアイテムボックスに魔石と指輪を入れていく。

相場とかはステラが一番詳しそうなので換金はステラに任せてもいいかな。

今日中に換金してもらうつもりなので持ち逃げされる心配は恐らくないだろうし、換金が終わるまではステラを開放する気はない。


ダンジョンはまだ上の階があったが、楓は登る事を止めた。これにてダンジョンは卒業することにした。


三人は帰る為に階段を降って行く。

1階にたどり着くと50階に行くまでに倒したゴブリンの魔石を換金し三人で分割する。

化け物のドロップ品は競売で売った方が高くつくとステラに力説されたので換金はしていない。


「そういえばステラさん、私アイテムボックスが欲しいのですけど買い取ってもいいですか?」


「楓はアイテムボックスを一つ持っているのに贅沢だにゃ。まあ大丈夫にゃよ。但し相場の最高金額が、金貨1枚だとして三人で分割の額、銀貨333枚貰うからね!」


「勿論です。ステラさんとアリシアには払いますよ」


「私はいらない」


アリシアが辞退するとステラがアリシアを後ろから抱きしめ笑顔で言い放つ。


「じゃあアリシアの分は私が貰う!」


「お前には一銭もやらない」


アリシアは邪魔そうにステラを退ける。


「アリシアがいらないならステラさんにアリシアの分渡しちゃうよ?」


こう言えばアリシアは貰いそうだと思って楓は言ってみた。


「本当!! アリシアありがとにゃん!」


「楓の意地悪……! 私が貰う……」


「うん、そうした方がいいよ」


楓は内心勝ったと思いながら言う。


「ぷぅー! アリシアのケチ! でもいいにゃ、これからもっと大金が入るんだもん」


ステラは自分のアイテムボックスの中身を覗きながら言う。


「はい、ステラさんアイテムボックス代金です」


「まいどあり~! これからもよろしくにゃ~!」


不貞腐れているステラに楓は銀貨333枚を渡すとステラの機嫌は直っていく。

忘れないうちにアリシアにも銀貨333枚を渡して楓はステラからアイテムボックスを受け取る。


これでポーション用のアイテムボックスが手に入ったぞ!


でもポーション使った事ないんだよねー。今度使ってみよ。


指輪を鑑定して貰う為に三人は、冒険者ギルドのババークダンジョン支部の方へ入って行く。

ババークダンジョン支部は人でごった返しており受付には大量の人が並んでいた。


ババーク支部とは大違いだなー。


三人は鑑定専門のカウンターに並び指輪を鑑定してもらう。

待つ事数十分、受付に呼ばれ三人は指輪の鑑定結果が出た。


指輪はバーサーカーリング。


つけると大幅に攻撃力が上がる代わりに、防御力が下がる指輪らしい。


私には無用な物だね。


楓には使い道用途が無いが、高額で売れる装備品らしいので、この指輪とバケツサイズの魔石は競売に出す事にした。


ステラに出品の仕方を聞くと、出品したい物の初期金額と即決額を予め競売の従業員に伝えておき、手数料を払えば競売に出されるらしい。


ステラが従業員と出品する物の価格を話している。


「話はおわったにゃ~」


尻尾をふりふりしながらステラは戻ってきた。


「本当にあんな価格で売れるんですか?」


疑う訳ではないが出品物の価格の初期金額が高額だったので楓はステラに聞く。


「余裕だにゃ!!」


ステラは自信満々に答える。

楓は半信半疑でだったがステラを見直す事にした。

魔石は金貨1枚、指輪は金貨15枚の価格がついた。


ほへー。あの指輪にあんな価値がつくんだー。


楓にはいらない物だけど欲しい人はいるもんなんだね。


三人で分割して、金貨5枚と銀貨333枚、余りは手数料としてステラが貰うことになった。

無事換金を終えた三人はこれにてダンジョン攻略を終了する事にした。

ステラが止まる宿は別にありここで別れる事となる。


「楓ー! またパーティ組もうねー!」


ステラは大きく手を振り、楓達に別れを告げる。

楓が手を振り返すとステラは笑顔で颯爽と去っていった。


「……嵐のような人だったね」


「もう会う事は無い」


アリシアは最後までステラに辛辣だった。



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