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クエストを達成して強くなる  作者: ミカタナ
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翌朝にはアリシアはいつものアリシアに戻っていた。



ギルドから受けた依頼を完了させ、二人はダンジョンの前に来ている。

ついに来たよ! ダンジョン!!

ちなみにこのダンジョンは最近出来たばかりで正式な名前は付けられていない。

ダンジョンの見た目は螺旋の塔になっており、遙か彼方の頭上まで聳え立っている。

ダンジョンの入り口前には冒険者ギルドの職員と兵士が立っており、入るには署名が必要なようだ。

文字が書けない人は兵士に書いてもらうらしい。

署名が必要なのは帰って来なかった場合の死亡確認に使うそうだ。なお本人と確認が取れればいいので偽名でもいいらしい。


なので楓は適当にカトリーヌと書き、アリシアの事はアプリコットと楓が記入すると兵士が案内してくれる。


楓がダンジョンに入ると不思議な感覚がわいてくる。

何だろ……?

楓は不思議に思いながらも、ダンジョンの中身を見ると石造りで無機質な古代の遺跡のような造りだ。

入り口だけでこんなに人がいたのかと思うほど冒険者いる。

二人は周りを見ながら、遺跡の中を進んでいくが今のところ魔物はいない。

奥へ奥へと進むと階段があったので上る。すると入り口とそっくりな場所に出た。

そこにも冒険者がそこそこいたのでさらに奥へ進んでいく。

階段が合ったので上ると、また入り口と似た場所に出た。

同じ造りのダンジョンを登っていくと、どんどん人が少なくなっていく。


このまま進むべきだろうか? 楓は悩む。

私が知っている従来のダンジョンならば、階を上がるほど魔物が強くなっていくはずだ。

気配感知は何かがいるはのわかるが、それが人か魔物か分からない欠点がある。

ここに留まり、一度魔物と戦う必要があるかもしれない。

幸い冒険者の数も少ないし、大丈夫だろう。


気配がする場所をくまなく見ていく事にする。

遺跡を真っ直ぐ進まず、部屋を一つ一つ見ていくと、途中で剣戟の音が響いてくる。

音のする方へ行くと冒険者が魔物と戦っていた。

数人の冒険者と、あれはゴブリンだろうか。

戦士がゴブリンに向かって斧を振りかざすと、ゴブリンは剣で受け流し戦士の腕に切りつける。

戦士の腕から血が流れるが、すかさず神官がヒールを唱え腕の傷が治っていった。

ゴブリンが戦士から神官へ攻撃対象を変え、神官に向かっていく。

だが戦士がゴブリンの行く手を阻み斧でゴブリンの体を斬りつける。


斬り付けられたゴブリンは怒りを孕ませ、戦士に向き直り、唸り声を上げた。

ゴブリンが戦士に夢中な間に狩人ハンターが至近距離からゴブリンの弓を引く。

弓はゴブリンの脳天を貫きゴブリンは倒れ込んだ。

勝敗は決した、これ以上見ているのは礼儀を疑われるであろう。

二人は其の場からそっと離れる。


初めて他の冒険者パーティの戦いを間近で見たかも。

いつもは数人の冒険者を見かけたら避けてたからなー。


楓が物思いに耽っているとアリシアが腕を掴み楓の進行を止める。


「どうしたの?」


「向こうに何かいる」


アリシアは曲がり角を指差し前方を見据えている。

確かに楓の気配感知に引っかかる、いけない危うく不意打ちされるところだったよ。

戦場なら死んでいたぞと自分を叱り、楓は足音を忍ばせ気配に近づいていく。

楓が曲がり角を覗くとそこにはゴブリンがいた。

ゴブリンは此方に気づいていない、楓は剣を手に持ち大きく振りかざす。

楓の陰に気づきゴブリンが振り返るが、楓が振るった剣に直撃し、ゴブリンは真っ二つになり絶命する。


どうやらあのゴブリンは弱かったみたいだ。

いやー倒せて良かった。強敵だったら逃げるしかないもんね。

あ、でもダンジョンって逃げられるのかな? どうなんだろ?


そんな事を楓が考えてる中、ゴブリンが淡い光を出しながら消えてしまった。

消えた地面には緑がかった透明な魔石が落ちている。


なるほど、こうやって魔石が手に入るんだね。


楓は魔石を手に取り見つめる。

うん、魔石って水晶に色を加えたみたいな見た目してるね。綺麗かも。

楓は麻袋に魔石をいれてもう一度ゴブリンと戦ってみる事にした。

勝てたら上の階に上がろう。気配を辿りゴブリンを見つけると楓は剣を振り上げる。


結果は余裕で勝てました。


なのでもっと上の階を目指すことにした。

上へ上へと階段を上っていると冒険者を見かけなくなっていく。

それにともなってダンジョンにゴブリンが徘徊するようになった。

楓は戸惑いも無くゴブリンを切り伏せ進んでいく。

どれも一発で死ぬのでまだ弱いのだろう。

邪魔なゴブリンを倒しながら、階段を目指して進む。

実はゴブリンは皆同じ強さなのではないかと思ったが、ゴブリンから出る魔石の大きさが500mlのペットボトルサイズの魔石から、今では1リットルのペットボトルくらいになっているのでたぶん強くなっているのだろう。


そして40階にしてもゴブリンがアリシアのフォトン一発で死ななくなった。

ゴブリンは息も絶え絶えになりながらも、アリシアに向かってくるので楓はゴブリンに止めを刺しゴブリンを見下ろす。


やっぱり強くなってるみたいだ。

楓は魔石をアリシアに渡しながら言う。


「今日はここで狩ってみよう」


「分かった」


うーむ……楓はグリモと死んでいくゴブリンを見比べながら悩んでいた。

ゴブリンはいつも間にかに出現するので数に困ることはないし苦戦も無い。

だがグリモのクエストにゴブリンが載っていないのだ。

載っていないと言う事は楓のステータスは上がらない。

つまり強くなれないと言う事だ。

では魔石を納品できるのではないかと思ったが、グリモは魔石が嫌いらしい。

グリモに魔石を渡したら壊されて返って来た。

バラバラになった魔石を見ながらため息をつく。


ゴブリンが不味いのか、ダンジョンが不味いのか。

分からないが楓がこのダンジョンを上る意味があるのか問えば今のところ無い。


よって50階まで行ってからダンジョンを卒業しようと思う。


このエリアのゴブリンは全滅させたが、二人が休んでいる間にも出現していると思うので、二人は立ち上がりゴブリンを探しに行く。


ゴブリンを探していると宝箱があった。

ん? こんなとこに宝箱なんてあったけ? 楓は近づく。

宝箱をつんつん突く、反応は無い。

空けたら毒矢が飛んできたりミミックだったりするもんだよね。

どうしよう? やめとく?

でも中にアイテムボックスが入ってたら嬉しいな。

うーん、思い切って開けてみるかー。

楓はアリシアを後方に下がらせ、剣の先を引っ掛けて宝箱を開けようとするが開かない。


鍵がかかっている!!


私に鍵開けの技術は無いので諦めるしかないのか……

楓は落ち込みながらも、駄目元で剣の柄で思い切り鍵穴を叩いてみる。

すると鍵穴が壊れ、宝箱が開放されるが、同時に槍が飛び出した。咄嗟に楓は槍の柄を掴み、折る。

楓は折れた槍を放り投げなげる。


危なかった……


楓は冷や汗を流し、宝箱の中身を見ると指輪が出てきた。

指輪を見てみるとダイヤの宝石がついていた。

指輪を持ちながらアリシアの元へ戻る。


「怪我は無い?」


アリシアがぺたぺたと楓を触って怪我していないか確認する。


「心配性だなー。それより指輪を拾ったよ」


楓はアリシアに指輪を見せる。


「指輪?」


アリシアは興味津々に見ているので楓は指輪を渡す。

指輪についている宝石の輝きを見て、アリシアは目をきらきらさせている。

欲しそうだね、アリシア。鑑定が終わったらあげよう。

宝箱からアイテムが出てきたら、鑑定するまでそのアイテムの本当の価値が分からない。

中には呪われているアイテムもあるので使うのは厳禁なのだとか。ギルドの職員のお兄さんが言ってた。

確かギルドの職員の中に鑑定士がいるのでその人に見てもらおう。

それから二人は麻袋がいっぱいになるまでゴブリンを狩り終えると階段で下へ降って行く。




「素晴らしい!!」


ダンジョンの外に出るとギルドのお兄さんが待ち構えてた。

ギルドのお兄さんがこの場所にいる理由は魔石の換金をしているらしい。

最近は競売で売り買いする冒険者が増えているので、こうして赴き交渉をしているそうだ。

今はいないが商人もちらほら冒険者を待ち構えているらしい。

魔石ってそれだけ需要があるんだね。


競売は時間がかかりそうなのでギルドのお兄さんに換金をして貰ったら先の言葉だ。


「これだけの魔石を取ってこれるなんて凄いですよ!!」


褒められて悪い気はしない。

楓は最近自分は普通の冒険者よりは強いのではないかと自覚が生まれてた。

このままいけば帰れる日も近いかも知れない。

それまでは楓は来る日までクエストを達成して強くなるだけだ。


「この大きさなら一つ銀貨25枚でどうです?」


「ええ、その額でお願いします」


「総額合わせて金貨一枚と銀貨300枚になります」


魔石って儲かるんだね……これじゃあ外で魔物を倒す人も減る訳だ。

ここでは振込みが出来ないそうなのでお兄さんに魔石を換金してもらい、硬貨をポケットにしまうと一人の少女が手を叩き近づいてきた。

楓が見ると少女と目が合い、少女はにっこりと微笑む。


「あなた凄いのね!! 私強い人とっても好き!」


少女は楓の腕を掴むと胸を寄せ擦り寄ってくる。


なんだこの子……


少女は茶色の髪を肩まで揺らし、揺れに合わせ耳と尻尾が揺れる。

ん? 耳と尻尾……?

楓が疑問に思っているとアリシアが謎の少女を見ている。


「亜人が楓に何のよう?」


アリシアは冷めた目で少女に言う。

亜人……? この子のことかな? 

へーこの子猫耳が生えるけどこういう種族もいるんだー。


「んにゃ! あなた楓って言うのね!! 私はステラ、あなたとお友達になりたいな!」


アリシアを無視してステラは尻尾を揺らしながら上目遣いで楓の両手を握ってくる。

アリシアの目がきつくなるので、楓は焦りながらステラを離すが、ステラは離された事に目をぱちくりさせて楓を見つめてくる。


何が目的なのかは分からないが、きっと碌でもない事だから関わらない方がいいだろう。


「いきなりなんですか貴方」


「ステラだよ?」


いやいや名前を聞いてる訳じゃない。


「ステラさんは何の用が私にあるんですか?」


「強い人と知り合いになりたいのに理由が必要? なんてね! 

私も冒険者で盗賊をやってるんだ~。

それでね! 私も貴方のパーティに加わりたいなーって思ったの!」


ステラは拗ねたと思ったらすぐに笑顔になる。


「そうですか。余所を当たってください」


「酷い! 可愛い女の子が頼んでいるんだよ? 一緒に冒険しようよ~」


ステラは楓の手を揺らし頼んでくる。

確かにステラは可愛い容姿をしてるが、生憎楓は同性愛者ではないので全く興味がわかない。


「信頼がおける者でなければ一緒にいられません。失礼します」


「私がいるとダンジョン攻略も楽になるよー?」


手を払い、まだ何か言っているステラを置いて楓はアリシアを連れて宿に帰る。









宿に戻り、楓は口を開く。


「アリシアさっきの子は亜人なの?」


「あれは猫の亜人」


アリシアは抑揚が無い口調で語る。

亜人とは獣の耳や尻尾を生やした人種で粗野で粗暴な人間が多く、この国では好かれていないらしい。

アリシアも余り好いていなさそうだ。

もしかしたらステラは亜人だからパーティを組めなくて私の元に来たのかも知れない。

楓に少しステラに対して同情してしまうが、もう関わることがない人なので忘れる事にする。

明日はどうしよう? ダンジョンに行けば鉢合わせしてしまう可能性が高いような……。


むむむ……。


そうだ! デニスとコリーのお母さんの具合も気になるし明日は花を持ってお見舞いに行こうかな。

アリシアがせっかく摘んできてくれた夜光草もマーサさんに渡せば助かる人が増えるかもしれないしね。


「明日はデニス達の家に行こうと思う」


「良いと思う」


アリシアもあんなに必死に探していたのだから気になっていたのだろう。

アリシアは少し微笑んでいた。




翌日二人は市場で日持ちする食料と花売りの少女から花を買いデニスの家に向かった。




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