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クエストを達成して強くなる  作者: ミカタナ
14/36

14

「弟に何するんだ馬鹿力女!!」



スリの少年は楓に飛び掛ろうとするが、アリシアがスリの少年の腕を掴む。


「離せ! 弟は関係ないだろ!!」


スリの少年は暴れながらも楓を睨みつけてくる。

誤解だと思うけど、とんだ少年だなぁ……

楓は呆れながらも少年の弟を揺する。


「うう……」


少年の弟はうめき声を上げ、きょろきょろと当たりを見回す。


「あ! 兄ちゃん!!」


少年の弟は少年を見つけると、少年の下へ駆け寄ってくる。


「コリー!! 待ってろ! 兄ちゃんが今からその女ぶっ飛ばしてやるからな!」


少年はアリシアに腕を掴まれながらも、楓を睨みつけ楓に指を指す。


「違うよ? このお姉ちゃんが僕を助けてくれたんだ」


コリーと言われた少年は楓と自分の兄を見比べながら言う。


「何だと……俺が早とちりしちまったばかりに……すまねぇ!」


スリの少年は驚愕するが、頭の回転が速いのかさっきの態度と裏腹に楓に頭を下げる。


「別にいいけど……それより君、いくらお金が欲しいからってスリはいけないと思うよ」


楓が注意すると少年は目を泳がせ黙ってしまう。


「兄ちゃん! そんなことすれば母ちゃんが怒るよ!」


コリーが少年に抗議するように掴みかかる。


「そうでもしなきゃ母ちゃんは助からねぇんだ!! あんたには弟を助けて貰った借りがあるが、それとこれは別だ。帰るぞコリー」


少年は自分に言い聞かせるように叫ぶと、楓の方を向き、決意を秘めた目をして扉を開けて出て行く。


「あっ! 助けてくれてありがとうございました! 兄ちゃん待ってよー」


コリーは楓に勢い良く頭を下げすぐに少年の後を追って出て行った。

嵐のように去っていったな……


「楓……あの子を知っていたの?」


コリーが出て行った後アリシアが楓の方を見ながら聞く。


「今日見かけただけだよ。それよりコリー君は何しにギルドへ来たのですか?」


アリシアに返答をしつつも受付のお姉さんに試しに聞く。


「何でもお母さんの病を治すために夜光草を取りに行ってほしいとか……ですが今ギルドはこの様なのでいくら積まれても彼らの依頼を受ける事はできませんでしたがね……」


聞いたのは私だが、この世界に個人情報とかないのだろうか?

しかし夜光草ねぇ……


「コリーのお母様はネムリ病に罹ってしまったの?」


「おそらくそうでしょうね。不憫な事です」


ネムリ病とは割りとポピュラーな病気なのだろうか?

ネムリ病とは何だと聞いてみたらネムリ病とはそのまんまずっと眠りにつく病だそうだ。

ネムリ病に罹れば食べることもできなくなるので大抵餓死してしまう。

治療方法は餓死してしまう前に夜光草を煎じて飲ませる必要があるらしい。


「ちなみに夜光草はこの周辺にあるのですか?」


楓はお姉さんに質問する。


「夜光草ですか? あるにはあると思いますよ。夜光草はキャタピラーの胃の中で成長して花を咲かせます。キャタピラーの胃の中を探していけば見つかるかも知れませんね」


キャタピラー……ああ芋虫の事だね。

なるほど芋虫の腹の中にあるのかってえー! 胃の中ー? 積極的に探そうと思えないな…


「そうですか……ちなみに絵とかありますか?」


たまたま見かけるかも知れないし、見つけたら少年に渡してもいいぐらいの感覚で聞く。


「ありますよ。これとかそうですね」


お姉さんは掲示板にある依頼書から一枚の依頼書を取り出す。

楓とアリシアで依頼書を覗くと紫色の鈴蘭が載っていた。

一応覚えておこう。



この件は置いといて、楓は当初の目的である依頼達成の報酬と素材の買取をお姉さんに頼むと、驚きながらも「こんな短時間でこれだけ狩れるなんて凄いですね」とお世辞を貰う。

ちょっと照れる。

お姉さんに別れを告げると二人は宿に戻った。


宿に戻り椅子に座ってぶらぶらしていると、アリシアが椅子を持ってきて横に座る。


「夜光草を探すの?」


「見つかれば渡すけど、積極的には探さないよ?」


余り深入りはよくない。


「分かってる」


アリシアは本当に分かっているのか、分からない顔をしている。

きっと助けたいのだろう、楓は深入りは良くないと思っているが、今回はアリシアの気持ちを汲む事にする。


「仕方ないなぁ……ダンジョンに行くのは止めて、しばらくの間ギルドの依頼を受けようか」


楓の一言でアリシアの顔が明るくなる。


「今日はもう夕方だから、探すとしたら明日からだよ?」


「うん……」


アリシアが立ち上がり何処かへ行こうとするので、楓は念のために言うとアリシアはしょんぼりして再び椅子に座る。


部屋の窓から日が沈んでいくのが分かる。時期に夜になるだろう。

楓はいくら言われても、夜に出歩くのは町であっても危険だと思っているので絶対にしない。

二人は明日に備えて早めに就寝することにする。



翌朝、楓が起き上がるとアリシアがいない。

あれー? 楓が辺りを探しているとテーブルに書置きがあった。



『夜行草を探しに行きます』



アリシア張り切り過ぎだ。

楓は呆れながらも、これは良い傾向なのではと思う。

いつも私の傍を離れなかったアリシアが自主的に何かをしたいと行動する事は微笑ましく思える。

ただ二人で探した方が早い気がするが、居ても立ってもいられない状態になったのだろう。


楓は身支度を終え、宿の広場に行くと宿の朝食は今から始まるらしい。

アリシア朝食も食べずに出かけちゃったの!?

楓は朝食を食べながら、金髪の少女が食べに来たか配膳をしていた従業員に聞くと見かけていないらしい。


アリシアはいったい何時に出かけたんだ……


楓はアリシアを追いかける気でいたが、アリシアが何も食べていないなら先に市場に寄った方がいいね。

朝食を食べ終えて、市場に赴くと今出来たばかりの料理が売り場に置かれていく。


これ食べてなかったら、結構買っちゃってたね。


すでに朝食を済ませていた楓は美味しそうな誘惑に惑わされず、素手でも食べられる食べ物を選んで多めに買っていく。


これぐらい買えばアリシアも満腹になるかな?

料理を麻袋に入れて、門の外に向かおうとしたらスリの少年が血まみれで市場の隅に放置されていた。


楓は怪訝な顔で近づいていくと、市場で売り子をしていた一人の店員が声をかける。


「姉ちゃん、そいつはスリだよほっときな」


「一応知り合いなんで私の方から注意しておきます」


「なんだ知り合いだったのかい? あんた裕福そうなんだから世話ぐらいみてやりなよ」


楓は笑って誤魔化し、スリの少年を担ぎ噴水の近くで下ろした。少年にヒールを唱える。

少年の意識はあるが、さっきから黙っているので楓は気にせず、噴水で手ぬぐいを水に浸し、血まみれになっていた少年の顔を拭く。


「だから止めとけば良かったのに」


楓は粗方顔の血をふき取ると少年に話しかける。


「……金が必要なんだよ」


少年は言葉を搾り出すように呟く。


「どのくらい?」


「銀貨200枚」


銀貨200枚か、日本円で200万円くらいかな? よく分かんない。

今の私なら余裕で払える額だけど、普通の家庭からしたら高い額だ。


だけど母親を治すためだろうけど、どうしてそんなにお金がかかるんだ?


「それだけ必要なのは母親の為?」


「……! コリーの奴だな……。そうだよ、教会で治してもらうには金が必要なんだ」


教会ぼったくりだなー。

確か教会から夜光草採取の依頼がギルドに来てたはずだ、報酬は銀貨3枚。

うーん、これはぼったくり。


「それでスリをしていたんだね。お母さんはどれくらい前からネムリ病に罹っているの?」


「14日前だよ……」


まだ猶予はあるのだろうか? 少年の母親の健康状態しだいだ。

楓が考えていると少年のお腹から音が鳴る。

楓が少年を見ると少年は恥ずかしそうにしながらも、楓の麻袋を見ていたので買ってきた食べ物を上げる事にした。


「いいのか……!!」


楓が頷くと少年は瞬く間に少し残して食べつくしてしまった。

よっぽどお腹が空いてたんだね。

残りも食べていいよと言うと弟に上げたいから残しておくんだって。

アリシアの分無くなっちゃったけど、また買いなおせばいいや。


「君名前はなんて言うの?」


「俺はデニスだよ」


「じゃあデニス助けてあげたんだから今日一日手伝ってね」


途端にデニスは嫌がる素振りを見せるが、楓は有無を言わせず連れ回す事にした。


冒険者ギルドに行くと相変わらず人がいない。

昨日のお姉さんに挨拶を済ませ、町周辺にいる魔物の討伐の依頼を受ける。

市場に戻りアリシアの分の食べ物を買いなおし、それをデニスに持たせて楓とデニスは町の外に出る。

デニスは町の外に出ると聞いて震えだすが、怯えてるのを悟られたくないのか気丈に声を張り上げていた。


さーて、魔物を狩りながらアリシアを探しますかー

アリシアならこの周辺魔物は大丈夫だと思うけど心配だ。


あっ芋虫だ。


デニスが芋虫を見ると飛び掛ろうとするが、首根っこを掴み、後方へ放り投げる。

楓は芋虫の頭を切断して中身を見てみる。


うえー本当に虫に胃なんかあるのかなー?


楓は剣で突きながら胃を探していく。

太い管が三本ほどありおそらくどれかが胃だろう。


「デニース!」


後ろで転がっているデニスを呼びよせ、中身を見るように言うと嫌がりながらもデニスは自分が持っていたであろうナイフを取り出して中身を見ていく。しかし、芋虫が食べたであろう溶けかかった草や木の実しかなかった。

デニスは悔しそうにしている。


次だね。


楓は周囲にいる魔物は全て葬り去っていくと、デニスが段々目を輝かやかせる。


「あんたは俺のためにキャタピラーを倒してくれてるんだな」


「ん? ちがうよ」


「え!?」


「これは私の為ひいてはアリシアの為だよ」


デニスは困惑するが、楓は気にせず遠くにいる一角うさぎにファイアを放つ。


「君がやるべき事はキャタピラーから夜光草を探す事。私は手伝うけど、あくまで探すのは君の自身。お母さんを助けたいなら自分の手で助けてあげなさい」


「そうだな……俺が母ちゃんを助ける。だから頼むぜ姉ちゃん!!」


「うん、えらいえらい」


しかしアリシア見つからないなー。町の外を半周はしてると思うのだけど、何処に言っちゃったんだろ?

まさかもっと遠くへ行ってたりしないよね? 不安だなー

楓は芋虫の頭を切断すると、デニスがすかさず胃を取り出し中身を見る。

町の周辺を何週もして、芋虫24体目にして夜光草は出てきた。


本当に胃の中に生えてるんだ……


夜光草は芋虫の胃の中に根を張り巡らせ、ちょこんと紫の花を咲かせていた。

楓はデニスが取り出すのを眺めながら感心する。


「やった!! これで母ちゃんは助かる!!」


デニスが笑顔で抱きついてくるので、楓はデニスの肩をぽんぽんする。

よかったね。

夜光草は特別珍しい物とかではなく、精確な確立は分かっていないが、芋虫の胃の中から出てくる確率はそう低くはないらしい。


なので今日中に見つかる可能性は充分あった。

デニスとて母親に早く治って欲しいだろうし、アリシアは見つからなかったが一旦町に戻る事にする。


「こっちだよ!!」


楓はデニスに引っ張られながら、民家が立ち並ぶ道を歩いていく。

此処らへんは昔からある住居が多いみたいで、おそらくダンジョンができる前から住んでいたのであろう。

デニスはとある民家で止まる、どうやらここがデニスの家のようだ。


「デニス! あんたこんな時に何処ほっつき歩いていたんだい!!」


デニスと家に入ろうとしたとき、隣の家の庭先からふくよかな女性が怒り混じりに呼びかける。


「おばさん!! 後にしてくれ!!」


デニスは女性に焦りながら楓を連れて家に入る。


「兄ちゃん! どこいってたんだよぉ!」


玄関に入るとすぐ傍がリビングとなっており、コリーがデニスに涙目になりながら駆け寄ってくる。


「コリー! 夜光草を取ってきたぞ! これで母ちゃんが治る!!」


デニスはコリーに見せ付けるように夜光草をコリーの目の前に突きつける。


「……本当に母ちゃんが治るの? 流石兄ちゃんだ!!」


「ああ! 兄ちゃんに任せとけ!!」


デニスは言うや否や、家から出て行き、コリーと楓は二人っきりとなった。


「デニスは何処に行ったの?」


「たぶんマーサおばさんの家だと思う。おばさんは皆に薬を作ってくれるんだ」


なるほどマーサさんが作り終わるまで私はここで待っててもいいのかな?


「デニスが帰ってくるまでお邪魔するね」


「ここに座って! 姉ちゃんが兄ちゃんを助けてくれたんでしょ?」


コリーが椅子を引いてくれるので、楓は礼を言いながら座る。

ついでにデニスが家に置いて行った、楓の麻袋から食べ物を出してコリーにあげた。

冷めてしまったがまだ美味しいはずだ。

コリーもお腹が空いてたらしく口元が汚れるのを厭わず夢中で食べている。

うーむ……このままコリーが食べているのを見ててもいいが、アリシアを探さないと。

何処かで行き違いになっていそうだし、余り時間がかかるなら一度宿に戻ったほうがよさそうだ。


コリーが全て平らげた頃、デニスが先ほど会った女性、マーサさんを連れて戻ってきた。

女性は良くデニスの家に来ていたのであろう見知った様子で部屋の奥にデニスと入っていった。


「兄ちゃん達が帰ってきた!!」


コリーもデニス達の後を追うので楓も付いていく。

ついていった先にはベットで静かに眠っている女性がいた。

眠っている女性は頬がこけ手足が骨と皮になっている。

二人の兄弟は心配そうにその女性を見ている。


あの人が二人の母親なんだね。


マーサさんが母親の身を起こしてゆっくりと薬を飲ませていく。

母親の口元から薬が垂れたのをマーサさんは拭いていく。


「ふぅ……これで大丈夫だ。じきにサリアも起きるはずだよ。サリアを救ってくれてありがとね。ほらっあんた達も礼をいいな!」


マーサさんは楓にお礼を言うと二人の兄弟の頭を下げさせる。


「構いませんよ。私はあくまで手助けしたに過ぎませんし、デニスが夜光草を自分の手で手に入れたのです」


マーサさんは楓を見つめた後とデニスに向き直り笑顔で褒めちぎる。

デニスは照れくさそうだった。


「さてとサリアが起きた時に食べれる物でも作っておくかね。さああんたたち手伝っておくれ」


マーサさんは二人を追い出すと、楓に改めて御礼を言う。


「本当にありがとうね。あの子達の父親は狼に食べられてね……その上サリアまでいなくなったらあの子達は……」


マーサさんは感傷に浸っている。


「彼女が助かって本当に良かったです。私はこれからしなければならない事があるので、お暇させて貰います。二人の事よろしくお願いします」


二人の母親が無事なら私がここにいる理由もないだろう。


「夕飯を一緒にしたかったのだけどねぇ。ここにいる間だけでもまたあの二人に会ってくれるかい?」


「はい、勿論です」


マーサさんと玄関まで戻ると二人の兄弟が寄ってくる。

楓が帰ると分かると二人が呼び止めるが、マーサさんが言い含め、三人に見送られながら楓は家を去る。






楓が宿に戻るとアリシアが椅子から立ち上がり迎えてくれた。

ア、アリシア~!! 戻っていたのか!


「楓!! 私見つけたの! 夜光草!!」


アリシアは目を輝かせ楓に夜光草を見せる。


……あっ



アリシアにどう説明すればいいのか迷ったが、今日あった事を掻い摘んで話すと、それから数時間アリシアは椅子に座り俯いていた……



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