銀行
不思議なほどに音のない世界が広がっていた。街唯一のビル、某銀行の本社だ。この会社は何故か田舎に本社を置いている。だが、警備は厳重といううわさが立ち込めており、裏の業界では狙わないほうが良いと有名である。
そんな暗闇の中、そこに居るといわれなければ分からない。黒装束に身を包んだ二人組みが歩いていた。
一人は長身で美麗な黒髪の女。帽子の外に髪を出して後ろにひとまとめにしている。黒いジャケットの下には肩にかけるタイプのホルスターがさがっており、その中には小口径の拳銃が入れてある。
もう一人は髪を全て帽子の中にしまい、腰のベルトにナイフを1本と自動拳銃を収めていた。こちらは顔を布で隠しており、表情を読み取ることはできなかった。
「それじゃあ、計画通りにね。」
黒髪の女が言って二人の人間は分かれた。
黒髪の女は正面玄関から堂々と入っていくと拳銃を向けてわざと通報させた。
もう一方は、裏口から入る。ドアの横に立っていた警備員の男を背後から近寄り麻酔で眠らせると、電子ロック式の鍵を開けてビルに侵入した。
黒髪の女は受付を脅しビルの奥へと案内させた。
その頃、もう一方は・・・。
「ほう、君がうわさの。よもや本当に'カルラ'が存在していたとはね。」
そういった男は銀行の社長だった。太っており、紫色のジャケットにピンクのネクタイをしている。明らかに金持ちアピールのようだった。
カルラと呼ばれた人間は、無言で腰のホルスターから拳銃を抜くと、天井に向けて3発放ち後ろに下がった。
「ほう、拳銃か。しかしこちらにも方法はあるのだよ。」
男はポケットから小さなスイッチのようなものを取り出した。カルラの様子を伺いながら男はゆっくりとした動作でボタンを押した。するとカルラの立っているところの天井がぱっかりとあいた。上からナイフの雨が降ってきた。カルラはこれを後方に回転してかわすと、拳銃を前方に発砲した。弾丸は男の持っていたスイッチにあたった。スイッチを持っていた指が曲がってはいけない方向へ曲がる。
「グギギ・・・。貴様ァ!!!」
男は叫んだ。男は大きな体を左右に揺らし、カルラに向けて突進してきた。カルラは男の脇を抜けて建物の奥へと走った。
会議室だろうか。外壁がガラスになっている。5階で、飛び降りることも一応可能そうではある。今更戻るわけにも行かず、カルラはその部屋に潜伏した。
しばらくたって男が会議室の扉を勢いよく開けた。手には高威力の銃を持っている。
「どこにいる、でてこいッ」
カルラは無言で出て行った。
「ふん。貴様、のこのことでてきおって。徒では済まぬぞ。」
そういって一発、手に持っていた銃を発砲した。カルラのたっている後ろのガラスに穴があいた。男はもう一度発砲した。もうひとつ、ガラスに穴があいた。
男はもう何発か発砲し、弾を使いきった。そしてカルラに飛び掛った。カルラは後ろに下がるが、男の手がカルラの帽子に触れる。男はそのまま帽子を剥ぎ取った。
帽子の下から白い髪が現れた。
「ふんッ。うわさどおりの白髪か。」
男はそういうとそのまま飛び掛って先ほどあけた穴の周りにカルラを押し付けた。そのままガラスを蹴ると、カルラの周りだけガラスが割れ、カルラは落ちていった。カルラは瞬時の判断で持っていたワイヤーで柱にワイヤーを巻きつけ下階の窓を割って入った。そこには先ほどの黒髪の女が立っていた。
「いやね、思ったより凄かったね。」
黒髪の女がそういうと、
「で?計画はどうだったのよ、ステラ。」
カルラがそういった。ステラと呼ばれた女は、
「そりゃもちろんばっちりですよぉ。今のうちにトンズラしちゃいましょ。」
そういって裏口から物音一つ立てずに出て行った。
『×××××新聞 ×月○日 切り抜き
銀行を襲撃、犯人は女性二人組
昨日、○○銀行の本社を女性二人組が襲撃。社長の証言によると一人は白髪、一人は黒髪のようだ。警察は黒髪の女性を‘ステラ'と見ている。。尚もう一方の白髪の女性は昔から存在が仄めかされていた‘カルラ'ではないか、とうわさされている。』
わりとシリアス回ですかね?
最近ビルの窓から落ちて下階の窓を割って入るというシチュエーションの夢を見たので(キャラはカルラでした)、それを書きたいがために若干のシリアス風を演出してみました。あくまで風ですので悪しからず。時系列も普通に前回よりあとです。最初の名前を使わないものはなんとなくです。最近某作家さんの某旅小説の4周目を読んでます。それの影響だと思われます。
誤字脱字などございましたら指摘していただけると幸いです。