博物館
新作です。
「はー、スゲェなァ。」
リビングの隅でテレビを見ていた黒髪の背の高いきれいな女性が言った。
その女性は『ステラ』と言い、世界中を回り、博物館その他様々なところから宝石等を盗んで回っている。世間では一人で回っているということになっている。
世間では、というのは、何故か今まで存在をほのめかされる程度で、実在はしないとされている仲間。うわさでは白い髪を持つ女性となっている。大体あっているが。
その白い髪の女性。ステラからは『カルラ』と呼ばれている。本名を『上白沢裕香』と言い、カルラという名前とは一切関係ない。彼女の白い髪は地毛であり、俗に言うアルビノである。普段はカラーコンタクトレンズをつけているため、オッドアイということを知っているのは既にステラのみとなっている。白い髪はごまかしようがないので小学校中学校の頃もそのままだったが、オッドアイに関してのみ、カラーコンタクトレンズでごまかしていた。右目が赤く左目がうすい青だ。コンタクトレンズは左右とも茶色で、目の色について言われたことは一度もない。
そのカルラは現在隣の部屋でナイフを研いでいた。ステラがすっと立ち上がり、音もなく隣の部屋に入っていった。カルラは特に振り向くでもなく、ナイフを水でスッと洗った。そしてナイフを懐のナイフポーチにしまった。
「なんかあったの?」
カルラが静かに問うと、
「いやね、テレビの特番みたいな奴でね。国の重要文化財とかそういう貴重なものを展示、保管しているところをやっててね。手の内明かしてやんの。」
そういってステラはリビングに戻り、近くの机においてあった紙の裏に簡単な地図を書いて計画を練りだした。
「んじゃ私ちょっと下見に言ってこようかな。博物館みたいになってるの?」
カルラが問うと、
「そうよ。入場料は安いからそのままふらっと出かけられるわ。」
カルラはそれを聞いて、自室から財布を持ち出し部屋をあとにした。
最寄の駅から鉄道で近くの駅まで行き、さらにそこから路面電車で例の建物の前まで行った。
テレビで紹介されたからか、大いに賑わっていた。人ごみを書き分けてさりげなく防犯用システムの確認を手短にすませ、ある程度めぼしをつけて写真を撮った。
帰りの電車でステラに写真を送り、防犯システムについての多少の資料を送った。
部屋に戻るとステラがシステム対策用のプログラムを組んでいた。が、面倒だからあとはやっておいてとカルラに押し付けるとステラは自室に入り装備等をそろえる作業に入った。
カルラは面倒くさがりながらも正確にプログラムを組み、小型のパソコンにインストールした。
カルラも自室に戻り、ステラがシャワーを浴びていないのを確認するとシャワーを浴びた。そして自室に戻り泥棒用の黒装束で身を包んだ。。ナイフを下げて上着を着、先ほどの小型のパソコンを懐に忍ばせた。そして上着のフードの中に白い髪をしまい、ステラの部屋へ向かった。
ステラも同様に黒装束を見にまとっていたが、髪はしまっていなかった。その代わりにニット帽を被っていた。
夜も更けた頃、例の建物付近の民家の屋根の上に動く二つの影があった。
二人は人の全く居ない例の建物の正面玄関に行った。カルラは懐からパソコンを取り出し、扉のロックを回線経由で解除した。
そして二人はゆっくりと建物の中に入り、監視カメラの視野に入らないように警備室へ向かった。予告状も出してないので警備が濃くなっているとか、そういうことは一切無い。
二人は警備室の扉を少しだけ開けて中に催眠ガスが入った缶を投げ入れた。一通り人が眠った後、二人は侵入し、カルラは警備システムを解除した。
そのままめぼしをつけたものを片っ端から盗んで、盗んで、欲望の赴くままに盗んだ(のはステラ)。
部屋にかえると二人は盗んだもののリストを作り、ステラが裏の店に売りにいった。
翌日、事件を嗅ぎつけた報道陣が例の建物に集まった。何しろ国宝級の宝が盗まれたのだ。大事件である。
ステラは中継をスナック菓子を片手に爆笑しながら見ていた。
一話完結の話を気が向いたらとりあえず書くみたいなスタイルになりそうなので絶対不定期になります・・・。まあ、不定期とはいえ早いときもあります。
一話完結なのでいいネタ浮かんだら即書くこともできるので気長に待っていてください。
ミスなどあったらご指摘いただけると幸いです。