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202_紐が本体。

 記憶に紐づけされている感覚というのがございまして、特定の臭いと共に思い出されるとか、似ている音程の生活音から歌を想起するとか曲を鼻歌うとか、景色を見て似たような所を思い出すとか、メガネの少年を見て過去の罪を思い出すとか、まあ、そう言った諸々の現象のことを、仮に記憶に紐づけられた現象とか申す事に致しましょうか。その辺りをちょっと弄ってみようというのが、今日の文章のとっかかりでありまして。


 記憶をするときには、これはつまりは何らかの情報を、センサーで読み取って、入力しているわけでありますから、目で見たり、耳で聞いたり、手など皮膚で触ったり、臭いを嗅いだりした行為から、記憶が作られていくわけでありまして、こう、運動するときの力のかかり具合とかも記憶されていく外部情報の一部でありそうですね、重力加速度とか、普通の加速度とか、三半規管とかに入力されたり、外圧で痛みに似た刺激で記録されるのでしょうか。とても強い刺激を受けたときの記憶を思い出すと、肉体にも影響が出るような噂も耳にしましたけれども、本当でしょうか。この場合は記憶というよりも想像する力が問題なのかもしれませんが、アウトプットが誤作動しているのでありましょう、とか予想するわけでございます。


 さて、これら外界の刺激でございますが、入力するときのみに働くかと言いますと、そうではございませんようで、そもそもこれらの情報は、四六時中自動に入力されているようなものでございまして、目をつむっているとかするなら光学的な情報は遮断されているかもしれませんが、センサーが正常に働いている状態であるとするときには、意識しているかしていないかは別としてひっきりなしに入り込んできている、影響を与え続けているわけでありましょう。

 つまりは、記憶するという入力はどの時点を切ってみても途切れることはない、のかもしれません。意識がないときは入力されていないのではないかとか、そのような意見も出てきそうではありますが、眠っている時でも外界からの刺激を低出力ではありますが、受けていることがあるのですよ、と言われているようです。


 センサーが生きている間には常に入力され続けているとすると、それが、常態であるということですから、記憶というものは、絶えず入力されて続けている信号によって作られているということではありませんでしょうか。つまり、外部からの刺激があることが前提として記憶が作られているかもしれないということでありまして、個人個人で記憶が完結していない可能性があげられるのではございませんでしょうか、ということが、ちょっと気になったところでございます。


 こう、記憶を構成する要素のうち、いくらかが、もしくはかなり大部分が外部の現在の情報をもとに再構築されるのであると、こういう幻想的な思いつきではありますが、ちょっと面白そうであると、愚考いたしました。

 思い出すというアウトプットを行うためには、幾らかの外部刺激が必要ではありませんか、とか言い換えてみると、ハッと思い当たったり、なるほどとか思ったりする方もいるかもしれません。記憶を記憶だと認識するためには、その記憶を客観的に見られなければならないわけでありましょう。ああこれは覚えているな、と第三者的な目線で初めて、その記憶があるということが判別できるわけでありましょう、ではその記憶はどうして今思い出したのでありましょうか、というと、これは周囲からの刺激、情報が入力された結果なのかもしれない、という、認識の確認へと移るわけであります。


 ここをもう一歩踏み込んでみると、自身の持つ記憶は、結構外部に依存しているのではなかろうかという発想になるわけです。なので、全く刺激のない空間に自身が置かれると、途端に不安になったり精神の均衡を逸するわけです。自我と申しますか、自分のよって立つべきものである記憶が、外部からの刺激によって成り立っていると予想すると、これはまあちょっとしっくりくるわけでございます。

 などと戯言を述べてまいりましたが、真実どうかはわかりませんが、ちょっと面白い発想かもしれないですね、とクスリと笑いまして、今日はおしまいです。


「あなたしか見えないとかは言いますね」

「特定の個人しか記憶の出発点になっていないわけですか”ご主人様”」

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