リスタート オブ ヴァンパイア2
今日のまとめ、というかオチは結局ツクモの家でということになった。
『風呂入ったら早めに寝ろよ〜』
久しぶりの戦闘に疲れ切った九十九はソファーにダイブしアイラとウル達ヴァンパニーズに風呂の場所を説明した。
『ツクモは入らないの?』
『少なくともお前らとは入んねぇよ』
ロリコンでも変態でもない九十九はとりあえず睡眠をとるため速攻に寝たかった。
とある話、あんなに重傷を負っていた九十九だが、吸血鬼の血で回復したのだった。吸血鬼の回復能力は細胞ではなく血液に秘密があるらしく、純血のアイラの血を傷口に半強制的に塗られた九十九は、あっという間に回復、いつも通りにリカバリーされた。
このことから察するにあの細胞を取り込んだ男は恐らく回復能力が持てずに九十九の攻撃を食らったことになる。多分、死んではないはず。
『それではお先ですぅ』
九十九以上の大怪我してたウル達も時間が経ち、ほぼほぼ傷は回復していた。むしろ元気すぎるくらいだった。
『おーう』
手をひらひらさせて受け答える。みんなが風呂に入ったと思いそのまま眠りにつこうとするが、九十九の肩をちょんちょんと叩く小さな手があった。
『ん?どうしたよウル?』
『少しお話をと思って、それに五人でお風呂はきついですよ』
口調からイライラする要素が抜け落ちウルの顔からは今までの幼さは消えていた。
『そういや、アイラとはその、仲直り? できたのか?』
純血だの何だのとアイラを忌み嫌っていたウルに九十九は少し心配そうに質問した。あんな異常なまでに嫌っていたのだ、そんなにアイラという存在が憎かったのかそれとも純血という存在が憎かったのか。
『別に元々仲が良かったわけではありませんし、でもだからと言ってアイラが悪かったということでもないので。今思い返すと純血の一部、というかほとんどが非道なだけでアイラは何もしてないですしね。』
確かにと頷く九十九、あんなふわふわしたアイラに限って、非道なことができるはずもない。これは確信事項だろう。むしろ立場が逆になってそうな
『話は変わりますが私って何歳に見えます?』
百八十度角度が変わった話に少し動揺してしまう九十九だが、はじめにあった印象をそのまま伝えることにした。
『12歳ぐらい?』
身長は低く、幼い顔立ちと胸から察するにおそらくそのぐらいだろう。普通の人ならそう思うはずだ。だがしかし、吸血鬼ということを知らなかった場合に限る。
『こう見えて200歳超えてますよ、私』
ホワァッツ!?
こう見えて200歳?それはいくら何でも言い過ぎだろう。
九十九はもう一度じっくりウルを見た後やはり信じられないと首を傾げた。
『ヴァンパニーズの仲間も全員100歳後半ですよ。私が1番の年長者です。』
『マジかい』
マジです、とウルは笑って答える。見た目12歳の中身200歳とか詐欺だろぉと九十九は心の中で叫んだ。
実際誰もが目を疑うだろう、たとえ吸血鬼と知っていてもだ。
『ちなみにアイラは私の二十上で235歳ですよ』
『あの金髪ロリがか?想像つかねぇ』
確かにアイラに限っては大人の姿になったのを見たため少しはそうかもと思える。頭脳は子供だったことは考えないとして。
『お前らも大人の姿になったりしねぇのか?そっちの方が楽じゃないか?色々日本では制限かかってるし。』
その言葉にウルはため息をついた。そうですねと言った後少し悲しそうな表情をして九十九に語りかける。
『ならないんじゃなくて、なれないが正しいです。あの姿は純血の吸血鬼だけがなれます。理屈的には半分しか混じってないと吸血鬼としての力がうまく使用できずその力自体が発動しないんです。』
自分もなれたら良かったんですが、と、付け加えてウルは言った。好きで小さいわけではないと知ると九十九は少し悪いことを聞いてしまったと罪悪感を感じざるえなかった。
『それでも400歳越えればみんな大人になるんで、それまで待ち遠しく待ってますよ。』
九十九が心配したのに気付いたのかウルはフォローを入れた。
『時に九十九さん、ずっと気になってたんですが、あなたは人間にしては強くないですか?』
ど直球の質問が来た。確かにあんなにひょいひょいと力を使っていて、気にならない方がおかしい。ナイフを負ったり、吸血鬼を倒したりと、九十九は今になって頭を抱えた。どう説明すればいいのだろうかと。
『あ〜、あれな、それは』
言葉を濁らせる、説明の仕方がよくわからない九十九は焦り、焦り焦った。今思うところ、誰にも説明なんてしたことがなかった。
『俺、転生者なんだわ』
ど直球できた質問に超ど直球で返した。当然ウルはぽかんと口を開けている。お前は何を言っているんだ?と言いたげな表情を浮かべていた。
『ネタですか?』
『大マジだ』
ありえない、と呟いているウルに、いや、お前だって転移者じゃん、と九十九が言うとそうだったと思い出したように手をついた。
『いやぁ不思議なこともあるんですね。』
『あぁ、全くだ』
ソファに寄っ掛かり、伸びをしながら九十九は本当に不思議だよなとつぶやいた。
『じゃあ前世の力を引き継いで転生したんですか?それっておかしくありません?だって私たちの場合は自分という存在がそのままこの世界に飛ばされたのに対して、九十九さんは一回体を失くしてからこっちに来たんですよね、そしたら転生前の能力なんて使えないはずじゃあ』
その言葉を聞いてため息を九十九はため息をつく。
(…あの駄女神め)
内心、駄女神のおっちょこちょいだったりドジだったりには限度が超えていると感じる。九十九は何であいつが女神になれたのか不思議だった。むしろ自分が転生したことよりもそっちの方が不思議でたまらなかった。
『ま、まぁ俺を蘇らせた女神さんが優しくてな、いづれ使うだろうって残しといてくれたんだよ。』
とりあえず笑ってごまかす。
(一応、新しい人生をくれた恩人なので顔は立てといてやろう)
『本当に使うことになりましたね。やはり女神様は未来が見えるんですかね。』
それは、絶対にない(確信)
『じゃあその能力ってなんなんですか?』
『あー、それはな』
俺の能力は、と言いかけた時、九十九は後ろから思いっきり抱きつかれた。
『ツクモぉ〜、おふろあがったよ』
『いきなり抱きつくなって、はぁぁぁぁぁッ!?』
後ろを振り向くと、そこには水に濡れた全裸のアイラがいた。本人自身あまり気にしていないが、九十九はこういうのには弱いらしく、顔を赤らめて手をブンブン振っていた。
『とりあえず体拭けよ‼︎その後に服着ろ、そして抱きつくなぁぁ‼︎』
抱きついたアイラを剥がし風呂場へと追いやる。
まったく油断もままならないな。
『ツクモー、みんなの服はどうすればいい?』
そうだったと九十九は手を顔に当てた。先ほどの戦いでヴァンパニーズの皆さんの服がボロボロになっていることを完璧に忘れていた。
『あぁ〜、そうだな、とりあえず今日買ったアイラの服を着てもらってくれ、お前の服はまた後日買いに行こう』
またあの大変な買い物をするのかと九十九は頭を抱えた。少なからずボコボコにしてしまったお詫びとして服ぐらいは送ろうと九十九は心の中で謝罪、その後にウルも風呂に入り全員で食卓を囲むことになった。
『見た目によらず料理できるんですね、意外です』
『まぁコレでも、ほぼ一人暮らしだからな、こんくらいはできる』
どや顔で言って見せる九十九、ちなみに今日の夜ご飯はパエリア、意外と手が込んだ料理となっている。
『うん、美味しい』
アイラも笑顔でがっついていた。ウルやヴァンパニーズの少女たちも一口めは引き目に食べていたものの二口めからは普通に食べるようになっていた。
『ん〜、地味にもう12時回っちまってんのか』
テーブルの上に置いてある小さな丸型時計を見て九十九が言った。いろいろあった昨日は時間の感覚がわからなくなるほどエキサイトしていた。
(飯食ったら、そのまま寝るか)
とりあえず完食しようとスプーンを口に運び続ける。
アイラ達も九十九に負けずどんどん、米の量を減らしていった。
『ごちそうさま』
『『『ごちそうさまでした』』』
九十九に続き五人が手を合わせた。ハチャメチャだった昨日の疲れを取るためとりあえず皿を水につけアイラ達を親のベッドに案内する。
『まぁ今日はここ使ってくれ、って言っても足りねぇよな』
九十九の親のベッド、父と母ので二つ、身の小さいアイラ達なら一つで二つ使えるだろう。それでも四人、残り一人余ってしまう、どうするか
『じゃあ私が九十九さんと寝ます。それなら問題なく全員がベッドで寝れますね』
では皆さんまた明日〜、と手を振りウルは九十九の腕を掴んできた。さぁさぁと焦せらせるように九十九を引っ張っていく。
『おいちょっと待て、ツクモと寝るのは私だぞ?』
アイラがウルの首元を掴んで引き止める。それに対して笑顔で振り返る、笑顔で、だがその笑顔は敵意むき出しの笑顔だった。
『なんです?私のお楽しみを邪魔しないでいただけますか?』
『邪魔するも何もそれは私の所有物、勝手に持ち出すのは許さない』
『いつからお前の所有物になったんだよ俺は』
ガルルルとにらみ合う二人、どうどうと落ち着かせようとする九十九、それをきょとんと見てるヴァンパニーズの少女たち、ある意味異形の光景だった。
『とりあえず落ち着け、俺は一人で寝る。この部屋に一枚布団敷くからそれで解決だろ』
『『それはダメだ』』
見事なハモりで否定する吸血鬼コンビ、九十九は押しに弱かったのかすぐに身を小さくして黙った。
『表に出ろ』
『勝手に出て行ってください。その間に九十九さんと寝ますから』
ムッ、アイラが顔を曇らせる、もうそろそろキレるスイッチが入るんじゃないかという状況。それに上乗せして挑発するウル。まさに一触即発、これ以上刺激したら家が吹っ飛びかねない。
『じゃあ平和にじゃんけんで』
(家が壊れなきゃもうなんでもいいよ)
『では、九十九さんがそう言ってることなのでいきますよ』
コクリ
アイラもそれを承認しグーを構える。
『最初はグー』
『じゃんけん』
睨み合いながら時間が経過する、二人とも真剣で油断がない。
『『ポイッ‼︎』』
ドォォォーン
二人がじゃんけんをすると同時に九十九の親の部屋の中で爆発が起きた。
『なに!?お前らじゃんけんしたら爆発すんの?普通にできないのか?じゃんけんだぞ!?』
風圧で壁まで吹っ飛ばされた九十九は驚きながらそう言った。だが二人ともそんな言葉に目をくれず双方が出した手を確認する。
グーとグー、二人とも拳を打ちつけあっていた。
『『あいこで』』
『やめろぉぉお前らぁぁぁッ‼︎』
その言葉は虚しく、4回爆発が起き後にアイラと寝ることになった。