プロローグ
『ッたく、娘の気持ち考えない父などに我が縛られるわけがないだろうに』
そういって一人の少女は独走していた。地球ではない何処ぞの世界で
『メア様、いい加減にしてください。サタン様がお決めなさった事なのです。素直にいう事を聞いてください』
メアと呼ばれる見た目16歳前後の眼帯を付けた少女は幾人かの男に追われていた、流れから察するに親の決めた事に対して反対なのだろう、それで現在逃走中という事だ。
『あのような、頭が固すぎる父なんかの言う事なんて聞いてられるか‼︎』
跳躍し、壁キックをしながら逃げて行く、が、行く手を阻むように正面からも追っ手がきた。
『くッ、しつこい下等生物どもめ‼︎そんな駄作で我が止められるとでも?』
そういって少女は立ち止まった。そして空間に穴をこじ開け中から刀を召喚した。
『多勢に無勢です。観念してください』
一対十、確かに分が悪い勝負だ、だがそれは同じレベル同士ならばの話だ。
『我が力を見せてやろう、誇れる事ではないがフェレストの名を継ぐものとしてこのぐらいたやすく倒せるのだぞ?』
それと同時に剣を振るう、その刀の刀身はバラバラになりワイヤーのようなものでつなぎとめられた状態になって、あたりを吹き飛ばした。少女が使う武器、それは地球でいう蛇腹剣だった。
『『ぐほぉぁぁ』』
いきなりの攻撃に追っ手も吹き飛ばされる。そして傷口に塩を塗るように少女は更に空間から新たなものを召喚した。
『我と交わした血の契約を果たし、我が身の元に参れ、顕現せよ、ガルムッ‼︎』
その瞬間空間には先ほどと比べ物にならないほど大きな穴が開き、その中から出てきたものはとても巨大な狼のような猛獣だった。
『ガルルァァァアッ‼︎』
飛び出した狂犬はあたりを破壊し追っ手丸ごとダメージを与える。それを待っていたように少女はポケットから一個の小瓶を取り出し空に掲げる。
(こんな世界、出てってやる)
『そ、それはサタン様の転移結晶、何処に飛ばされるかわからないのですよ!?お考え直しください』
その言葉は届く事なく少女は光に包まれ消えていった。
『うわっと』
思いっきり投げ出され地面に尻餅をつく、転移に成功した彼女はまずあたりを観察する事から始めた。
『なんだここ、冥界ではないな』
ブランコや滑り台が立ち並ぶ場所、いわゆる公園だった。少女が使った転移結晶、それは異世界へも転移可能な結晶だったのだ。
『おい、なんで地面から出てくんだよ』
少女が振り向いた先には、青い髪の少年が立っていた。