プロローグ
ーコイツを倒せば、全て終わる
『ウォォォッ』
少年は思いを込めた右手を力一杯に振り抜く。振り抜かれたその腕は狙いを仕留め地面へと叩きつけた。
『グホォァッ、下等種族ごときがぁぁ、図にのるなよぉぉぉ‼︎』
その瞬間天から雷鳴が轟き雷が少年を貫いた。
『グォォッ!?』
撃ち抜かれた少年は地面へと急降下し叩きつけられたおよそ上空50メートルから。
『いてぇけど、こんなんじゃ死ねねぇなぁ‼︎』
少年は神殺し、宿敵は『神』
立ち上がった少年は絶対の神を睨み構えをとる。今までの過程がこの時のためにあったのだと、やっと終わりを迎えるのだと、願いを込めた拳を握り亜光速の速さで神に突進していった。
『クタバレぇ‼︎全能神ぁ‼︎』
願いを込めた拳は振りかざされ全能神へと進んで行く、が到達までには至らなかった。
『やはり、下等種族と呼ぶにふさわしい戦略だったぞ、少年‼︎ 永遠の眠りにつくがいい、《ケラノウス》‼︎』
その言葉と同時に少年の視界はホワイトアウトした。何が起こったのかまるで理解ができない、神に向けた全力の拳は届くことなく散った。それさえも理解するのに時間がかかった、自分が死んだということさえも。ホワイトアウトの後暗闇に落ちた少年は悔しそうに嘆く。
『クソッ、あと少しなのに、手がとどく範囲まで来たってのに、こんなとこで終われるかよ。死ねるかよッ!俺がやらなきゃいけないだ、俺がッ!』
その時一筋の光が少年を照らした。
その光は自然と大きくなり、そしてその光の奥から人影が現れた。
『随分と無茶なことをしたのですね』
そんなことわかってる
『多くの罪を犯したのですね』
わかってよそんぐらい、でもやめるわけにはいかなかったんだよ
『神を殺す以上に重い罪などありません』
だからなんだよ、地獄にでも落としてくれるのか?存在を滅ぼしてでもくれるのか?
『貴方には償いをする罰を与えましょう』
ハッ?なんだって
『神を殺した分、償いをしなさい、さもなければ無を彷徨う亡霊としてこの世界から抹消します』
勝手に決めてくれるなよ、誰がそんな
『扉は開かれました。新しい人生に祝福あれ』
ーまばゆい光に包まれ少年は
目を覚ました。
『アレッ?寝ちまってたか』
河川敷の芝生で目を覚ました少年、周りを見渡し現状を確認する、あたりはすっかり夕暮れになり、子供達の声が聞こえてくる。
『またあの夢かよ、嫌なもん思い出すなぁ』
この少年、名は日乃々木 九十九、 高校二年生で少し濃いめの青の髪とその髪と同じ色をした瞳が特徴的で部活には参加していなく、バイトをしている一人暮らし。
これだけ見るとごく普通な高校生である。
『そういえば日本に来てから16年も経ってるのか』
少年の言う意味、国の問題ではなく生まれた時からの話だ。
『無理やり生かされてから結構経ったな、ニホンは時間の流れが早い気がするぜ』
誰に届くでもなく少し大きめな声で言う。
『よっと』
ヒョイっと石を拾い上げ河川敷に水切りの要領で石を投げ込む。
バッコーン
『やべっ!やらかした‼︎』
爆発音が鳴り響き川が吹き飛んだ。そう、他に表現をしようもなく吹き飛んだ。
『ぎゃー‼︎何事!?川がぁ、川がぁぁぁ‼︎』
周りから理解を求める声が響いている、周りが困惑している間にすかさず逃げる少年。
『前の山に続き何やってんだ俺は』
この少年、実は転生者である、地球から異世界ではなく、異世界から地球への。
それも種族による争いが常日頃の世界からだ。
少年はその世界で神殺しと呼ばれ他の種族たちに恐れられるほどの強者だった。その世界には神が存在していたのにもかかわらず、争いが絶えないかった。加護を与えるはずの神は、むしろそれをかけの道具に使わんと争いの原因を作っていたのだ。だったら神を殺せばこの戦いは終わるのだろうか、もしそれで全てが終わるのならば俺が全ての神を殺してやる。少年は異世界にいた頃、脳内思考はこれで埋め尽くされていた。いらない神は死ねばいい、役に立たずに観戦するなら死ねばいい、そこから少年の神殺しは始まった。神を殺せばまた新たに神を探し殺しに行く、このサイクルの中、少年は生き続けてきた。だがある日強大な神に返り討ちにされてしまった少年は死んだ、死んで終わったかと思っていた。だがコンテニューしてしまったのだ、死んだ先にいた女神によって。女神様に神を殺した分を償いなさい、と言われ強制的に地球という世界に転生、現在に至る。
『せめて人間なのか、神殺しなのかどっちかにして欲しかったもんだけどな』
うっかり能力を使ってしまったりすると今みたいに問題になるし、半端に人間でも制御しにくくなるだけである。
転生する際、女神様はうっかりさんだったようで能力を消すことを忘れてしまったらしい、これはこれで本当に困る。
少年はため息をつきそして人間として生きることに苦難を感じるのであった