彼が変身する(補)
人気のない、夜の堤防沿いの道。
「うーん、キーボンの戦士が現れたというのは、本当なのかな?」
どこからとも無く、そんな声が漏れ聞こえる。
見回しても姿はない。
声も誰にも聞こえまい。
ただ、小さな気配が、まるでなにかを探すかのようにあたりを這いまわる。
昼間の陽の光の中にあったなら、気付く者もいただろう。
闇の中に存在する、浮遊する小さなぬいぐるみのような存在。
鳥のようであるが、それがなんの鳥であるかは特定できない。
デフォルメされた青い鳥のぬいぐるみ。
それこそが、この声の主であった。
「あっ、あった。うーん、どうやら本当のようだね」
昼間、着ぐるみの怪物が倒された場所を確認しながら、鳥の人形はブツブツとつぶやきながらさらに調査を進めていく。
音もなく飛び回り、昼間の戦闘の痕跡を探りだす。
「確かに、希望力が残留していた痕跡がある」
そして暫く飛び回ったところで、その羽ばたきを止め、丁度昼間に真が飛ばされたゴミの山へと降り立った。
その視界に状況を捉え直し、そのぬいぐるみは、あらためて独り言として決意を口にする。
「なら、ボクが動くしか無いということだね……、そうと決まれば、早速準備もして、申請書類を作らないと。あーあ、今夜は徹夜になるかも……」
それだけ言い残して、その鳥は再び羽ばたき、夜の闇へと消えていった。