無職転生トラックが絶えない理由
ある日。日本中の様々な男たちにテレパシーが届いた。
(聴こえるか。我は異世界の神)
「くっ。こいつ脳内に直接・・・!!」
「なんだ。誰もいない部屋にいるはずなのに。パソコンの電源を入れる前なのに声がっ!」
ある者は受験に失敗した浪人生。またある者は就職活動に失敗した大学生。
またある者は携帯ゲームに百万以上課金し、借金を重ね、金に困って年金生活の老人夫婦宅に強盗に入ろうと考えていた男。
(今すぐトラックに飛び込むのだ。我の治める世界に飛ばしてしんぜよう)
「あ、今電車来たんですけど飛び込んでイイっすか?」
(ならぬ!トラックでなければならぬ!電車など言語道断!万死に値する!!)
「電車でも死ぬけどなぁ・・・」
変なコダワリのある神様だった。
(以下の条件で我の世界に呼び寄せてしんぜよう。
1 年齢はそのまま。金持や貴族の赤ん坊に生まれ変わったりしない。
2 能力が上昇するわけではない。見た目は、まぁ、あんまし変わんない。
3 性別が女性になるわけではない。
さぁトラックに飛び込むがよい。)
「冗談じゃない。そんな条件で死ねるかよ!」
「そうだそうだ!!」
(言い忘れておったが、お主たちは我が治める世界の、闘技場に到着する予定だ)
「闘技場?まさかそこで死ぬまで俺達を戦わせようって話じゃないだろうな」
(よくわかったな。その通りだ。お主たちはその闘技場で真剣勝負をするのだ。
対戦相手は国を滅ぼされた王女で、騎士の、奴隷の娘を予定しておる。
その娘は切れ味よい刀でお前達と戦うぞ。無論一対一では簡単に切り殺されてしまう。
だが安心せよ。娘が勝利するたび、一人、また一人と一度に戦う人数を増やしていこう。
勝利したらその国を滅ぼされた王女で、騎士で、奴隷の娘の体を弄んだあげく、1、2、3のいずれかの条件を与えて生き返らせてやろう。
もちろん負けた場合はニワトリだの牛だのになってもらうがさてお前達どうする?)
その日の夕方六時台のニュースは、民法からNHKまで、どれも同じような内容だった。
「今日一日だけで千件近いトラックへの飛び込み自殺があったということになります。自殺者の中には昼休み時間に学校を抜け出し、高速道路に走っていたという高校生もいるそうですが、解説の木下さん」
「はい」
「これは社会の問題が一斉に噴き出したという事でいいんでしょうか?」
「社会問題という一言で片づけるにはあまりにも人数が大きすぎます」
「という事は、何らかのテロという可能性を考えた方がいいのですね?」
「そうですね。警察により、パソコン、携帯電話の通話記録の解析が待たれます」
「パソコンですか」
「そうです。犯罪者の97パーセントはパソコンを使用しているのです」
「政府によるインターネット規正法の早期国会通過が待望されます。では、次のニュースです」