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前編

やぁみなさん、お元気?

僕だよ……! え? 僕僕詐欺? そんなのないし……。

いやだからあの、脳内乙女変態ドM、略して変態だよ……。

お願いだよ、それで思い出したとか言わないでorz






バレンタイン・デー。

それは別に何も気にしてないはずなのに、手元にチョコがないと、なんとなく気分的に周囲から哀愁視線を向けられる日。

それに対して何も感じない奴、内心落ち込んでる奴、仲間を探し出して同病相哀れむ集団etc。

男側からしたら複雑な感情の入り乱れる日なわけだけど、渡す側の女の子にとっても決戦の日。


それは意中の男性に告白とともにチョコを渡したり、義理と見せかけて渡して相手の反応を窺ったり。

今では友チョコなる流行も主流に乗り始め、周囲との友チョコやり取りに奮発して頑張らなきゃいけないいろんな意味での決戦日。


それでも日本で主流なのは渡すのは女子でもらうのが男子、という構図。

発祥の地外国では違うよ、という意見はここでは飲み込んでほしい。

菓子メーカーに踊らされていようが、日本ではそれが依然主流なのだ。


ある一部男子以外は。




「で。お前、何持ってんの」


ウキウキしながら授業終わりを待ち終礼とともに駈け出そうとしていた僕は、高野に捕まってその計画が崩れた。

「うるさいな、早く和紗さんのところに行きたいんだから引き留めるなよ。ついでにくっついてくるなよ、お前に見せたら和紗さんが減る!」

「減るのは俺のHPだ! お前の彼女とかもうごめんなさい会いたくありません。過去の俺をこの場で説教したいくらい黒歴史だよ!」

「それは願ったり叶ったり」


頭を抱えて悶えていても、高野は高野。

実はイケメンの類まで行かなくても、それなりに平凡には埋没しないくらいの容姿を持つこいつは、すでに小さな紙袋をいくつか机に無造作に置いていた。

それに気付きながらも教室のドアのところでじっとこっちを見ている女の子がいる事を、こいつはわかっているのだろうか。


「高野、僕のことよりもお前宛の客なんじゃない? ドアのところの」

「んぁ?」

抱えていた頭を上げて高野が振り返ると、ドアのところにいた女の子が顔を真っ赤にしてうつむいた。

「んー、俺かぁ? つか、そーだとしてもなんか俺から行ったら確実に自意識過剰の嫌な奴じゃんか。相手が来るの待つしかないでしょ、こういう場合」

勘違い野郎にはなりたかねーよ、と笑うと、ドアから顔を背けた。

その途端、がくりと肩を落とす女の子。

こんなみえみえな態度なんだから、気遣ってやればいいものを。

「それよか、お前こそすみに置けねーなぁ。脳内乙女変態ドMのくせして、チョコもらっちゃったの? お前、あの変態彼女のこと諦めたの?」

にやにやからかうように笑う高野を、僕は荷物を片手にがっちりとつかんで見上げた。



「もらってないよ、これは僕から和紗さんにあげるバレンタインの贈り物だから!」




教室中がシーンと静まり返ったのは、なぜでせう。











和紗さんと待ち合わせしている、駅前の喫茶店へと急ぐ。

本日はネタ集めの為に、和紗さんは喫茶店で趣味のお仕事中。

その忙しい合間を縫って会うわけだからして、あまり待たせたくないわけだ。

ってのに高野が引き留めるから、和紗さんと会える時間が減っちゃったじゃないか!

一分一秒でも惜しい、高野の顔より和紗さんの顔を見てたいのに!

目当てのものもコンビニで買えたし、贈り物と一緒に渡せば僕は満足さ。

いいんだよ、それ以上の期待とかしない方がいいんだよorz

落ち込むじゃないか!


「……あれ?」

目指す喫茶店まであと少しというところで、なぜかドアを押しのけて和紗さんが飛び出してきた。

俯き加減で足早に歩きだした和紗さんを、追いかけて引き留める。


「和紗さん?」

「……っ!」

びくりと震えたのが、掴んで手首から伝わってくる。

和紗さんは僕を見ると、ホッとしたようにこわばった体から力を抜いた。

「変態、来たんだ」

「……うん、なんか微妙に落ち込むフレーズだけど、来ましたよ」

いい加減、名前で呼んでもらえないもんでしょうかね。

がくりと肩を落とす僕のことはそのままに、和紗さんはとめた足を再び動かす。

手首を掴んでいた僕も、引かれるように歩き出した。

「和紗さん、どうしたの?」

今日はネタ集めなんじゃ……。

その僕の疑問に答えたのは、後ろから掛けられた……怒鳴り声にも近い男の声だった。


「和泉!」


その声に振り向いたのは、僕。

和紗さんは、相変わらず足を止めずに歩き続けている。


和紗さんが止まらないことに気付いたのか、後ろから声をかけた男……和紗さんと同じ高校の制服を着た見覚えのある野郎……は僕を通り越して和紗さんの前に立とうとして……むっと眉間に皺を寄せた。

そりゃそうだ、僕がその邪魔をしたから。

「こんにちは、唯のクラスメートさん」

こいつは、以前土手で和紗さんに話しかけてきた男だ。

その時の和紗さんの態度を見れば、こいつと仲がいいか悪いかなんてすぐにわかる。


「和泉に話がある」

奴は俺を睨みつけながら、それでもちらちらと前を歩く和紗さんに視線を向ける。

それさえもイラついて、思わず和紗さんを隠すように体をずらした。

眉間に皺を寄せたまま対峙している僕達を余所に、足を止めない和紗さんは俯いたまま顔を上げない。

それだけを見ても、やはりこの男は僕にとって排除対象らしい。

「和紗さんはないみたいだよ。いい加減、邪魔なんだけど」

僕と和紗さんとの逢瀬を、何の権利があって邪魔するかなこの人。


奴はいらっとした表情を隠すことなく、僕に真正面から向ける。

「あんた、いったいなんなんだ。前も一緒にいたよな」

……それ覚えてるなら、推測位できないかな。

僕はちらりと和紗さんをみてから、視線を戻した。

「和紗さんの彼氏です!」

「……」

それから、奴が追ってくることはなかった。








そして再びの。



「適当に座って」



和紗さんちご訪問~~~~~≧▽≦

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