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林春来来

長らく間が空いてしまいました。すみません。

ストーリーには影響ないですが、一部文言と描写修正しました。

程なくしてサンソウの街に着いた。

この辺りで1番栄えている宿場町ということもあり、

大勢が通りを行き交っている。


虚雲は初めて目にするその光景に言葉を失う。

目に入ってくる全てのものに興味をそそられる。

美味しそうな匂いを漂わせる食べ物は、どれも初めて見るものばかりだ。


気が付けば、お腹の音が鳴っている。

(いかん、いかん。食べ物に気を取られるのは後で良い。今はやるべきとこをやろう。)

…虛雲は来来客銭へと急いだ。


道ゆく人々は思いの外、親切だった。

来来客銭を尋ねると、誰もが快く教えてくれた。

どうやら街の住人達にも人気のあるところらしい。


程なくして、少し古びた構えの料理屋にたどり着いた。


(ここが来来客銭か。モノを食べるところのようだが)

虛雲がそう心の中でつぶやいたと同時に、威勢の良い声を掛けられる。


「いらっしゃい、食事にしますか?それとも宿もご入用ですか?」

恰幅の良い30代くらいの店員に声を掛けられた。


虛雲は恭しく、番頭に会わせてくれるように頼んでみる。

「ここは来来客銭で間違いないですか?番頭の林春さんにお引き合わせ願いたい。」


「それはまた、どんな用事で……って、林の旦那!どうしてそんな姿に!

おい、あんた、これはどういうことなんだ!説明してもらおうか!」


やれやれとため息交じりに虚雲は話す。

「それは林春さんに会わせて頂いたら、お話しましょう。」


だが恰幅の良い男はそれでも一歩も引く気配はない。

顔を赤くして続ける。


「そんなこと言ってお嬢様にも酷いことをするつもりだな!騙されないぞ!

おい、みんな出て来てくれ。林の旦那が大変だ!」


恰幅の良い店員がそう叫ぶと、瞬く間に8人ほどに取り囲まれてしまった。

虛雲は改めて説明しようと試みる。


「事情を説明したいのだが、聞いてはもらえぬか?」

「問答無用、縄で縛り上げてからゆっくり聞かせてもらうことにするよ!」


店員がそう言い放つなり、一斉に8人が襲って来た。


虛雲は林史の安全だけは確保しようと、馬の尻を軽く押し、

自分から遠ざける。


前回のようにならない様、刀を布に包めたままで多少の手心を加え、

自分の周りを軽く一周させるように舞わせると、

強烈な風圧が発生し、襲いかかって来た8人は、

堪らずそれぞれの方向に飛ばされた。


「騒がしいね!あんたたちなにやってんだい!」

突如、辺りを甲高い声が鳴り響く。


その女性は馬にグッタリと寝そべっている林史を視界に捉え、

この刀を持った男が運んで来たのだろうと見当をつけた。


地面に尻餅を着いた格好の8人は、大方早合点で襲いかかり、

返り討ちにあったのだろう。しかし、1人も傷ついてないところをみると、

相手の男はかなりの達人で、手心を加えても8人を吹っ飛ばす程の力量があるのだろう。


おそらく武林でも名を轟かせる程に力を持つこの男は、只者ではない。

しかも、自分をじっと見つめてくる。

何となく大体の事情を察し、大事にせぬ為、部下達に命じる。


「あんたたち、命が惜しかったらすぐにおやめ!

あんたたちが100人揃っても勝てないだろうよ。まずはこの男の話を聞こうじゃないか」


齢20前後のすらっとした、顔に険ある美人がそこに立っていた。

8人はすぐさま武器を地面に置き、その場に立ちすくむ。


「お聞き届け下さり感謝する。貴女が林春殿でよろしいか?」


これ幸いとばかり、難を逃れた虛雲はすぐにお礼を述べる。


「そうとも、私が林春さ。どうやら兄が世話になったようだね。」


女番頭を務めるだけあって、林春は誰に対しても言葉は畏まらない。

それが良く悶着を起こすことになりもするのだが、それにも増して

使用人たちの林春への忠義はまっすぐなものだった。


「妹君でしたか。私は虛雲と申す者。故あって各地を旅しております。

林史どのとはこの先の街道で偶然出会い、この来来客銭の林春さんの

ところまで護衛する約束でした。確かに約束は果たしました!

これにて失礼。」


虛雲はなるべく関わり合いを避けようと立ち去ろうとする。

もう少し街を見て回りたかったのもあるが。


「ちょいと待ってくれないか!少し話を聞かせちゃくれないかい?

それに天下の林家がお礼もせずに恩人を追い出したとあっちゃ、

とてもじゃないが世間に顔向けできないね。

せめて今晩は食事くらい一緒に取るのが礼儀ってもんさ。」


「しかし、そこまでの恩に着るものでもないですし…」


「お若いの、武林にはルールって奴があるんさね。

それを知らずに旅を続けるよりも、一緒に食事をしながら、

そのルールってもんを知ってから旅する方が、得だと思うけどどうだい?」


「確かに。それではご厄介になります。」


断っても埒が明かないと判断した虛雲は、林春の申し出を受け、

来来客銭へ招かれることになった。


なお、林史はそのまま隣の屋敷へ運び込まれて行った。

重症だが一命は取り留めているようで、街一番の医者が診てくれるらしい。


少し安堵した虛雲は、使用人に案内されるまま、林史が運びこまれた屋敷の別部屋へと通された。来来客銭とは違い、また素晴らしい趣のある豪華な屋敷だった。


先ほど早合点して虚雲を襲って来た恰幅の良い使用人は、典満と言った。

早合点による無礼をしこたま謝った後、林家に着いて教えてくれた。


林家とは国家に使える武家でも有名な家らしく、

先代の林史心は黒衣隊の隊長を勤めていたが、

とある奸臣に貶められて、無実の罪を着せられ引退したらしい。


それでも先代の人望は厚く、武林という裏社会においても

一目置かれていたため、蒼志会という無下な役人たちを取り締まる

裏の結社を作り、その会長を勤めていたとか。


しかしながら、この動きを謀反ではと勘繰られてしまう密告があり、

その情報を先に得た林史心は、家族には迷惑をかけまいと失踪してしまった。


蒼志会の集会に参加するには、特別な青い花飾りが必要で、

この謀反の企みを確実なものとしてどうにか証拠を得たい役人が、

林史を襲ったというわけである。


蒼志会は集会を行おうとする度に役人の襲撃を受け、

今回も林史以外の参加者はみな殺されてしまった。

幸い青い花飾りは、全て林史が回収済みであり、

逃げ延びたため、役人に証拠は掴まれてない。


次回以降の蒼志会の集会はしばらく難しいだろうが、

林史さえ生き残っていれば、またいつの日か復活できる。

良くぞ命を助けてくれたと、典満に感謝された。


またまた、いろんな事に巻き込まれてしまったなと、

庭の花木を眺めると、ため息一つつく虛雲だった。

なるべく早く書きたいですが、小説って意外と推敲に時間がかかるんですね。

少し侮ってました。

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