ルイーダの酒場はどこですか?
異世界転生モノになりますか。
初めての投稿なので、お手柔らかに。
今や社会現象ともなったRPGゲーム。
その舞台は中世をイメージして、
剣や魔法を駆使してモンスターと戦い、
時に平和を取り戻し、時に栄誉を手に入れ、
あるいは、更なる冒険を求める。
・・・そういったところだろうか。
では舞台が中世であるのに、
魔法が使われていたという確かな痕跡が
世間一般に知られるべくして知られていないのは、
話題にするには、敬遠されがちな史実や、
また問題を孕んでいるからなのかもしれない。
自分もゲームをして育った世代。
ド@クエやファイナル@ンタジーといったものには、
たくさんの時間を費やした記憶がある。
現実世界にあったら便利だなーと思うのは、
やはり回復系の呪文。
唱えるだけであっという間に回復できたら、
どんな病気もへっちゃらで、スタントから
長距離走の息切れまで、すぐに回復できて、
まさしく超越した人間「スーパーマン」になれる。
そういう幻想を良く抱いたものだ。
あれから20年以上経った現代でも、
未だにゲームや小説が大人向けに支持されていることを考えると、
幻想を捨てきれない大人も少なくないのでは?と思ってしまう。
では現代社会においては、その幻想・・・つまり、
本当に魔法、あるいは魔法使いは存在しないのか?
ひょっとすれば多くの人の日常とは、
かけ離れた場所にいるのかもしれない。
それを期待し、また信じている人も少なくないだろう。
身近なところではどうか?
下水道に魔法使いが潜んでいるだろうか?
山奥で修行している魔法使いがいるだろうか?
いやいやもっと日常生活に目を向けてみよう。
意外な場所に魔法使いは存在するのである。
呪文とは、呪術的な効果を得るために使われる言葉らしい。
ということは、言葉により何らかの効果が発生すれば、
それは呪文といえるのではないだろうか。
まさか私がこの身で体験することになるとは、思いもしなかった。
あれはもうどのくらい前の夏になるのだろう。
記憶の彼方にあるその魔法は、バシルーラ。
敵(ときには味方)をどこか遠くへ吹っ飛ばす呪文(魔法)。
私が勤務していた一部上場のとある商社が上半期の決算を終え、
次の株主総会で、私は約束された新しい役職とともに、
新しい子会社で新しい門出となるはずだった。
そう、私は40も近い年になりはしたが、
まだまだ人生はバラ色に輝くはずだった。
気せずして悲劇は起こった。
本社が外国企業のTOBを受け、過半数の株式を取得。
それを受けた経営陣が総辞職。
私は新しい経営層の主だったメンバーが集う会議室へと呼ばれていた。
英語はある程度理解できたはずなのだが、彼らの言葉はよく聞き取れない。
通訳の人から告げられたのは、
新設部門の廃止と、聞いたこともない国への出向。
そう。
名立たる熟練の知恵者(=会社の役職者)達が集い、
会議という場で議論という集団呪文を唱え、
一介の冒険者(=サラリーマン)を転移(転勤)させる効果が発動したのだ。
これをバシルーラと言わずになんと言おう?
まさしく魔法使いの所業ではないか。
しかも国外を転移先に指定するとは、
かなり高位な呪文に属するといえるだろう。
現実逃避まがいに苦笑いを噛み締めながら、
私は会議室を後にした。
それから程なくして、聞いたこともない異国の地で、
私の新しい生活はスタートするのだった。
言葉もわからない異国の地で、
また、新しい体で。
新しい体で?
そう、残念ながらそうなってしまった。
行き先もわからぬ片道切符を手にした帰り道に、
いつものスーパーで缶ビール6本パックを買って、
片手には焼き鳥の入ったビニール袋を下げて、
家に向かっていた。
「ふぅう。よう分からんが、やてみるしかなかね。」
そう呟いた直後、
いきなり後頭部に痛みを感じ、視界がなくなった。
意識を失ってしまったのだ。
気がつくと見知らぬワラ小屋に横たわっていた。
満天の星空がとても綺麗で、遠くに虫の声が聞こえるくらいで、
車や電車の音は全く聞こえない場所に私はいた。
誘拐されたのか?
いや、こんなおっさんを攫う酔狂な連中もいないだろう。
あるいはオヤジ狩り?に遭遇してしまったのか?
それにしては手が込みすぎだ。
もしくは何か知ってはいけない秘密をしって、監禁されたのか?
思い当たる節はないが、誰かに恨みを買っていたのか?
いやいや、そもそも転勤を言い渡されただけだ。
なぜワラ小屋に横たわっている?
冷静に考えようとするが、このシチュエーションに、
私自身が存在する理由に辿り着くことが出来なかった。
まずは自分を見てみる。
服装は乱れてない。焼き鳥はなくなっているが、
ビール缶は残っている。正確には5本のみだが。
起き上がろうとすると、後頭部に確かな痛みを感じる。
「参ったな。焼き鳥とビール欲しさの暴漢に襲われたのか。いつか、仕返ししちゃるけんね!」
そう決意はしたものの、取りあえずこの場から逃げないと危なそうだ。
後頭部の痛みを我慢しながら立ち上がり、ワラ小屋を出てみる。
そこには今までに見たこともない景色が広がっていた。
カンフーものにしたいのです。