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《Over World》Online 改   作者: 川岸雑草
第一章 はじまり
3/7

予感

ブチュッ   グジュル   ズチュッ


おっと失礼、俺は今スライムと戦闘中だ。

早速、買ったばかりの「ロングソード」の試し切りをしようと思ったはいいが、いかんせん相手がスライムじゃそうもいかない。

いまでも斬撃ダメージが通りにくく、なかなかHPが減らない。しかも斬ってる感触がおかしいから試し切りにもならない。

うーん・・・、と悩んでいるうちに5匹のスライムに囲まれていた。

幸いなことにスライムは、「のしかかり」しかして来ないため躯しやすい。


スライムの「のしかかり」を横に避けながら「ロングソード」を振るい、ダメージで怯んだ隙に斬りつけて倒す、というのを繰り返し、全て倒した終える。

 公式サービスが始まっていないため経験地を得ることも無い。

 現在、このヴァーチャル・リアリティに慣れるためにスライムと戦ってきたが、経験地も得られず、ドロップも無い、なのに敵は弱いという暇の循環に囚われた俺の熟考の末の答えは、


「・・・そうだ、ゴブリンを狩ろう。」

思い立ったが吉日と、草原の深部を目指す。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ギィン  ガァン


 現在、ゴブリンと戦闘中である。

 体長90cmほどの緑色の怪物は、鉈を持っていた。

 スライムと違って攻撃のバリエーションもあるし、序盤の敵といえどこちらのレベルは所詮1だ、はっきり言って勝てるかどうかと言ったところである。


 今も鉈で「ロングソード」を防がれたところだ。


 ゴブリンが鉈を振りかぶった瞬間に間合いを詰め、胴を一閃し、背後に回り込みさらに二撃加える。

 ゴブリンのHPを3分の1程削ったところで、ゴブリンの攻撃を掠め五分の一程のHPを削られる。

(うっわ、掠っただけでこれかよ!)

 急いで体制を立て直すと、「グギグァギィ」と叫びながら、さらに一撃加えようとするゴブリンの攻撃を剣でガードする、ノックバックで隙だらけになったゴブリンのの手首を斬り付け鉈を弾き飛ばす、そして急所、首筋に二連撃を叩き込むとゴブリンのHPは底を尽いた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 


 ウィンドウを開いて時間を確認すると右上に「12月31日(土) PM11:42」、左上には「ログイン数 95869」と表示されている。

 朝、昼、晩は現実世界とリンクしているため、辺りはすでに真っ暗だった。


「いや序盤といえども、やっぱりスライムを狩って地道にレベル上げてからじゃないときついなぁ。でもレベルは上がらないしなぁ。」

 考えてはみるもののいい考えは浮かばない。

「ま、ゲームなんだし玉砕覚悟でいっちょやってやりますか!」

 その後、複数体で行動しているゴブリンを避け、単体で行動しているゴブリンを数体ほど狩っていたが、そううまく続くはずも無く、3体のゴブリンに見つかってしまった。

「こりゃあ死に戻りだ。」

 自重するように呟くと共にゴブリンが距離を詰めてくる。


 振り下ろされた鉈を剣を盾にして防ぐと、そのまま左肩からタックルするように体を突き出し、ゴブリンを仰け反らせると、左足で突き飛ばす。すると後ろに控えていたゴブリンも巻き込んで転がったため、無防備なゴブリン達をできる限り攻撃する。だが、平均3分の1のHPを減らしたところで体制を整えられてしまった。

 二の轍は踏まない、とでも言うように自分を取り囲むように広がり、3方向からの同時攻撃を受ける。だが恭也は剣の柄を逆手に持つと、刃を脇にしまいこむようにし後ろへ跳んだ。前方からの二攻撃を避けるとほぼ同時に、グシャッ、という音と共にダメージを受ける。後ろから迫ったゴブリンの眉間に逆手に持った刃が突き刺さり、ゴブリンの攻撃が背中を掠ったのである。恭也は後ろを確認することも無く残りの二体に斬りかかった。

 しかし、片方のゴブリンに鉈で弾かれてしまい、無防備となったところへもう片方のゴブリンが渾身の力を込めて叩き切ろうとするのが見える。

「ありがとうございます、喜んでー。」

 と致死の一撃に、半ばあきらめた声を発した。だが、その瞬間不可解な現象が起きた。

 ゴブリンのその致死の一撃の斜線上に白銀の鷲が割り込んできたのである。

「なんっ!?」

だ、と続けようとしたところでその一撃が繰り出された。だがその一撃は鷲を切り裂くことも無く、そこに透明な壁があるかのように弾かれた。瞬間、いきなり視界が暗転したかと思うと、次には中央広場に移動していた。

 緊迫した状態から、いきなりの景色の変貌に、なにがなんだか分からず、周りを見回してみるが、誰もが顔を左右にキョロキョロと動かしていた。

 奥には、エンドとサキの姿も確認することができた。

 そして、右肩には先ほどの白銀の鷲がちょこんと止まっていた。

 すると、ざわめきが広場を覆い始める。

 空を仰ぐ人々に吊られ、見上げてみると口元だけが見える真っ黒なローブに身を包んだ、人が浮いていた。



「---サプライズの始まりだよ...」



そいつは、口の端を吊り上げ笑いながら呟く。


恭也は背筋に悪寒が駆け抜けるのを感じた...


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