そして騙される
ザンサイドです
【精神干渉系スキルによる攻撃を受けました レジスト判定 ……失敗】
【MP減少判定 対象無し 無効】
【状態異常判定 恐慌 混乱 幻痛 幻視 それぞれレジスト判定 ……失敗】
【10分間のバッドステータスが付与されます】
「……っは!?」
気が付くと俺はざらざらとした地面の上に横たわっていた。
なんだかひどくリアルで、おぞましい恐怖体験をしたような気がする。
しかも生理的なタイプの。
「目は覚めたか?」
声のした方向を見るとユッグが珍しくも心配したような表情で、
こちらを見ながら近くにあった岩に腰掛けていた。
「あ、ああ……」
「そうか」
それは何よりだ……と、ほっとしたような調子で呟いた。
「えっと……」
自分の状態を確認すべく体を起こそうとすると、足元に違和感があった。
というか。
「まだ埋まってたのか……」
アスファルト全盛期の現代では、ある程度田舎でもないと
学校のグラウンドぐらいでしかお目にかかれないような硬く踏みしめられて乾いた土の道に、
ずっぽりと俺の両足が脛の半ばまで埋まっていた。
我ながらどんな勢いで降って来たのやら……。
まあ、幸いなことに先程見たときよりも亀裂が入り、
すき間が広がっているので今度は力任せに引っこ抜けそうだ。
「……ん?」
「どうした?」
「いや、なんだか記憶が曖昧でな……
さっき足を抜こうとしゃがんだあたりまではおぼえてるんだが、何があったんだ?」
苦心しつつも片足を引き抜き、一息つきつつユッグの方を見ると、
さっきのほっとしたような表情をまた深刻そうな面持ちに傾けつつ
「お前が俯いたと思ったら急に苦しそうに呻いて凄い勢いでもがき始めたんだ、
異世界特有の病気かと思って流石の私も心配したぞ」
出っぱなしでいい加減に慣れたと思っていたが
ユッグのスキルによる威圧感と雰囲気に、情けなくもその言葉を信じきれない自分がいる。
ああ……くそ、情けない。
……いやでも仕方ないじゃないか、某吸血鬼の旦那みたいなオーラ纏って、
顔が悪巧み中の大司教なんだから……などと心中で言い訳してしまう自分が情けなくて
ユッグの顔を見れない。
この時、少しでも顔をあげていれば、ユッグの笑いを噛み殺したような表情を見て
早期に猿芝居が見抜けたのにと、せめてもの償いにと散々雑用働きをした後で
本人よりネタばらしを受けて、非常に後悔するのは別の話。
ふと、何気なくスッと伸ばされるユッグの右手。
連動するようにスッと仰け反る俺の上半身。
「……どうした?」
「いや、なんでもない。心配かけて悪いな、悪夢でもみたように体はだるいが、
それ以外の異常は感じられないし、大丈夫だ」
スキルによる威圧感のせいか、反射的にユッグを避けるように動いてしまった体に
またも申し訳なく、やりきれない思いをしつつも言葉を返す。
(人を顔とか見た目の雰囲気で判断してはいけないって、そう考えてたはずなのに俺って奴は……)
自分の顔もお世辞にも善人面とは言えない以上、
人は見た目ではないということを主義にしていたはずなのに、その考えも揺さぶられるような気分だ。
残りの足も後退りするように引き抜き立ち上がると、ユッグも岩から腰をあげ
「よし、では行くとしようか……と、言いたい所だが」
「ん?」
言葉につられて顔をあげると、ユッグはなんとも言い難い微妙な表情で座っていた岩に目を向けていた。
「いや、今更なのだが、この岩」
一拍おき。
「これもモンスターだった」
「……え?」
ユッグの頬を、一筋の汗が伝ったのが妙に印象に残った。
話しが遅々として進まない・・・