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eyes on me  作者: DOGOON
11/11

旅館にて〜魚の間の夜〜

「あの時のことだけど…」

「忘れたよ」

初日の晩飯は魚をふんだんに使った超豪勢なメニューだった。俺は鯛の尾頭付きなんて初めて食べた。もちろん他の料理も絶品だった。しかし、あまりにも量が多すぎたため、食べきることはできなかった。(残すと悪いと思いみんな限界まで食べたのだが…)残りは旅館の職員さんたちと、麻弥のじいさん、ばあさんが食べるらしい。

そのあとすぐ風呂に入った。風呂というより温泉だった。

俺たち以外の客の姿はなく、貸し切り状態だった。

「ひゃっほー!誰もいねーじゃん!」

と、宮晴は腰に巻いていたタオルをとっぱらって駆け出した。

「…お前は子供か、宮晴」

「よし!俺、泳ぐ!」

ここにも子供が一人いた。「…どいつもこいつも」

俺は先に体を洗ってから入ることにした。

ごっ

「あでっ!」

…男の証明物を隠さない子供な高校生が、盛大にこけて頭を打った音が男湯に響き渡った。




「…あーきもちいー」

「まったくだー」

麻弥と宮晴がやっとおとなしく湯に浸かった。

「麻弥ー、良介ー、誘ってくれてありがとなー」

「なーに人数が足りなかったからお前を呼んだんだよ。な、良介?」

「じゃなきゃお前なんか誘わねーよ」

「うっわーひッでぇー」

わはは、と男湯に今度は三人の笑い声が響いた。

「それはそうと、あの空ちゃんとか緋奈ちゃんとかさ、何であんなかわい子ちゃんも一緒にきてるんだ?」

と宮晴が言った。

「緋奈は俺がつれてきたけど、この間まで入院してたからさ、全快祝いとしてな」

「空は…ちょっとわけがあってだな…とにかく、やっぱり花がないと旅行も楽しくないだろ?」

と麻弥があわてながら言った。空のわけありが妙に気になった。が俺は何も聞かないことにした。

「…でいきなりだけどさー、良介が羨ましいよ、俺」

宮晴が俺を羨ましげにみていた。

「は?何が?」

「空ちゃんと部屋が一緒だってことだよ」

「しかも二人っきり」

と麻弥が付け加えた。

「こっちはいい迷惑だよ」

「…まさか知らなわけがないとは思うけど、空は学年でも三本指に入る女子だからな?」

麻弥が驚愕の新事実を言いやがった。

「あいつが!?そんなに可愛いか…?」

「ばっか!お前…」

麻弥が呆れながら俺を見る。

「…今俺はお前に殺意を抱いたよ」

と宮晴が言う。

「幼なじみだからってそいつぁ鈍すぎるってもんだ。見た瞬間可愛い!と宮晴は思っただろ?」

「おうよ、ビビビッときたよ」

「…何じゃそりゃ」

あーよく分かんねー…

「俺、そろそろあがるから」

体も十分暖まり、リラックスもできたので先にあがることにした。

「こらー逃げるなー」

「待てよー鈍感男ー」

俺は二人を無視して先にあがった。




部屋にもどると布団が二つ並んで敷いてあった。

「気持ち良かったよねー」

と、空がこちらを見ずに言った。奥の窓辺に向かって空は暗くなった窓に自分を映し、しっとりと濡れた髪をとかしていた。普段は結んでいて降ろさない髪が、肩に真っすぐおりている。それを丁寧にくしでとかしている。ただそれだけなのに何だか妙に色っぽくて、どきっとした。

俺はそれを悟られないように空の後ろに歩み寄り、肩に手をついて

「今日はどのようになさいますか?」

と美容師になりきることにした。

ちらっと窓に映る俺を見て少し笑ったあとに

「そうねー…カットはいいから髪をとかしてくれませんか?」

とのご要望があったのだがもちろんさっきのは

「…冗談だったんだけど」

というわけだったんだが…

「髪とかすぐらいやってくれてもいいでしょー?」

空にくしを押しつけられてしまった。

「…少しだけだぞ?」

俺は空の髪をくしでとかし始めた。




「…なぁもういいか?」

窓に映る空を見ながら言った。少しって言っときながら、空がもう少し、あと少し、と延長し続けたため、かれこれ二十分も過ぎている。

「んー、あと三分」

「…了解」

もー三分ね…ウルトラマンが活動できなくなる時間だなー…とか考えていると

「ねぇ良介」

「ん?」

「プリント持ってきてくれたときのことだけどさ…」

い゛っ…何でいきなり…

「お、おうあの時か…」

夏祭りの次の日のことだが…空に好きだと言われたあの日…

「…あの時のさ」

と言って空が窓に映る俺を見る。

かぁぁぁ、と音が聞こえてきそうなくらいの勢いで空は顔を赤らめた。

……きっとそれは俺もだったと思うけど。

「あの時のこと…」

「覚えてないぞ」

と空が言う前に俺は答えていた。

「え…」

「あの時のことは忘れたよ…つーかお前が忘れてって言ったんだろ?」

「それは、そうだけど…」

「もう…忘れたよ」

本当に忘れることなんかできないけど。忘れたくても忘れられないけど。

「そう…なんだ」

と空が小声でつぶやく。

「そうだよ…よし、これで終わり」

俺は空の頭に「ぽん」と手を置き、

「これにて今日の営業時間は終わりになります」

と、おどけた感じで言った。しかし、空は笑わない。窓に映っている空はうつむいていて表情は見えない。

「そろそろ寝ようか」

と、俺は言ったが空は頷くだけだった…


今回も読んでいただきありがとうございます!

旅館編は四話です。とか言っておきながらもっと長くなりそうです。(´・ω・`)だって書いてる途中で書きたいことどんどん増えるんだもん!というわけ(?)でお楽しみください。次回は空の中学生時代の過去が明らかに…ではこの辺で!

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