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言ノ葉の陰陽師  作者: 東宮 千暁
第一章 覚醒編
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第7話:『見えない壁』

本日も投稿しました!

「……湊先輩。僕、昨夜のことが頭から離れないんです」

 講義棟の裏、人影が少ない場所で、律は湊に真っ直ぐ見つめた。

 「あの時、先輩が何か言った瞬間、(ことわり)みたいなものが変わったような気がした。あれが、本当に標準術式なら、僕は自分の家系の術に自信を失ってしまいます」

 湊は、律の真剣すぎる眼差しを真っ向から受け止めることはできなかった。しかし、冷たく突き返すことは、同じ「特殊三大家」を背負うものとして、することができない。

 「……君がどう感じたって構わない。でも、今はこれ以上探らないでほしい。今後わかることだ」

 「紙代家として伺ってもですか?」

 「ああ、だからこそだ。まだ、知るべきではない」

 自分の力に否定をしてない湊は、暗に自分が他の人よりも()()()()()()と認め得たようなものだった。

 しかし、律はこの言葉を聞いても落ち込むことはなく、むしろ尊敬の念が強まったように感じられた。

 その二人が接触しているところを見ていた、遠く離れた陰陽寮の監視ルームが捉えようとしていた。

 監視員の一人が湊のIDにアクセスし、身元の調査を開始する。だがその瞬間、端末が凍りついたように動かなくなった。

 湊の身元は誰にも閲覧できるようなものではなかったのだ。

 その理由は言ノ葉家によるものだった。

 言ノ葉につかえている陰陽師の一人が、入学当初から湊の身辺に寮の最上位セキュリティに相当する呪理的な隠蔽が施されていた。

 『……馬鹿な。アクセスが拒絶(リジェクト)された』

 同時刻、キャンパスの門近くで潜伏している、パンフレットを配るふりをした縁の耳にも、その一方が入る。元同僚の声だ。彼は、調査員とは別に湊の身辺にアクセスした結果できなかったのだ。

 「ん?君の権限でもダメなのかい?」

『違う、権限の問題じゃない。……湊の戸籍、学籍、過去の履歴……その全てに、えげつないほどの()()が施されている。無理にこじ開けたら端末経由で反射術式によって気絶させられる可能性も出てきた』

 「へえ……」

 縁は足を止め、空を見あげた。

(ただの学生じゃないってわけか……どこの誰かは知らないが、とんでもないバックがついてるだろう)

 結局、監視員は「端末の不具合」として処理し、調査を断念した。

 湊の身元は、見えない壁によって守られることとなった。今だ、誰一人として湊がどういう人かを掴めてるものはいなかった。

 その後、縁は湊を探しに行き、講義棟の裏で見つけた。

 縁は2人の間に割って入り、律の頭を軽く叩いた。

「千代田さんですよね!」

 律の顔がパッと明るくなり、縁の方へと顔を上げた。

 「そうだよ。さては、名前を湊くんから聞いたね?」

 そう言いながら、縁は湊を引き寄せ「ちょっともらっていくね」と別の場所に移動した。

 「湊くん、今日の晩に事務所へ来てくれ。()()()()について更にわかったことと、思い当たることがある」

 湊はそれを聞いて静かに頷いた。

 そうして、今晩事務所に訪れたとき1つの可能性について湊は知ることになる。

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