第6話:『再会』
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深夜の「千代田陰陽相談所」で湊と別れた後、縁は暗い室内で一人、プライベート回線の端末を開いた。
呼び出し音は2回。繋がった相手は、縁が昔からよく知る人物だった。
『……深夜に何の用だ。千代田』
「やあ、お疲れ様。寮の実務部隊様は、今頃中等部の掃除で大忙しかい?」
『……あれは、貴様の仕業か』
電話越しに、相手の溜息が聞こえる。
「人聞きの悪いことは言わないでくれよ。俺はただ、後始末を手伝っただけさ。おかげで、君たちの報告書には『律くんの霊素暴走』って書くだけで済むだろ?」
『……現場に残された不自然な沈静化と不思議な霊素のようなもの、私以外の部下が不審に思っていた。データ上では、こちらで「律自身による抑制」として書き換えておいた。さらに、部下にはうまく話を通しておく。……だが、これ以上はできないぞ』
「恩に着るよ、相変わらず仕事が早いね。……例のデータ解析したから、非公式に共有する」
縁は通話を切り、窓の外の夜景を眺めた。
元同僚である彼の隠蔽工作により、今晩の出来事は律の暴走として公には片付けられた。しかし、寮の幹部たちはすでに、紙代家への事情徴収を開始していた。さらに、「管理強化」のコンタクトを開始しているはずだ。
翌日。国立八雲大学のキャンパス。
湊は、いつも通り目立たないように隅の席で「現代呪理学」の自習をしていた。
(……この術式はこういう効果があるのか)
そう勉強しながら昨夜のことを思い出す。
湊が、昨日の事件がどう処理されたかを確認するため、端末で学園の掲示板を確認する。ニュースの項目を確認すると「中等部の設備点検に伴う結界の不具合」として処理されていた。
しかし、その平穏は突然破られることになる。
「――あ、あの!」
中等部と大学を隔てる並木道の近く。
本来、大学生しかいなさそうな場所に、中等部の制服を着た少年が立っていた。
周囲の大学生たちが「中等部の子がなんでこんなところに?」「あの子、三大家の……」とざわつき始め、少年に注目する。
湊は教科書を閉じ、立ち去ろうとしたが少年の真っ直ぐな視線に逃げることはできなかった。
「……湊先輩ですよね」
紙代 律だった。
昨夜の恐怖に怯えた表情とは異なり、強い決意を感じるような雰囲気を感じる。
「……何か用?ここは、中等部の生徒が来るところじゃないよ」
湊はあえて突き放したが、律は一歩踏み出した。
「お礼が言いたかったんです。それと……昨日先輩が僕にしてくれたこと。ずっと考えていたんです。」
律の声が少し震える。
「あれは……ほんとにただの標準術式なんですか?僕には分かります。先輩は一体何を使ったのですか?」
周囲の学生が聞き耳を立てる。
湊は心のなかで舌打ちをした。寮の目は誤魔化せても、助けた紙代家の後継者までは誤魔化しきれなかったのだ。
「……場所を変えよう」
湊は律の腕を引き、人目のない講義棟の裏へと急いだ。
一方で、その様子を遠くから見つめる不審な影があった。
陰陽寮の制服を着た人物が2名……。おそらく、縁の元同僚とは別の調査員たちだろうが、湊は気づかない。
しかし、彼らの持つ高感度スキャナが、湊と律が接触した瞬間に僅かな異常な霊素を感知した。その瞬間、調査員は不気味な笑みを浮かべるのだった。
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