第4話:『言葉の勇者』
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「(……鎮まれ)」
その一言が、荒れ狂っていた式神をただの折り紙のように変えた。
理科室を埋め尽くしていたどす黒い霊気が霧散する。
このあたり一体が静寂となり、耳に痛みを覚える。
「……あ、あ……」
膝をついた少年――紙代 律が、震える瞳で湊を見上げた。
「誰……?今、何を……。術式使ってた?」
湊は激しく打つ鼓動を必死に抑え、自らを縁のときと同じように、「湊」とだけを名乗る。
さらに、何が起きたかの説明として
「……驚きすぎて、僕の術式が展開されているのが見えなかったよ。僕が使ったのはただ、どこにでもある標準術式だ」
とだけ答え、律に手を貸した。
その時、背後の窓から一人の男が飛び込んできた。
「はいはい、そこまで!早く脱出しないといけないよ?湊くん」
「千代田さん……!?」
「いいか湊くん、今俺達が行っていることは不法侵入と同意義だ。このまま寮に見つかると、俺ら逮捕だぞ?さっさと退散しようぜ」
縁は湊を壁の影へ引き寄せ、更に顔をしかめながら低い声で言葉を続ける。
「いいかい。寮は後に精密な霊素スキャンをかけるだろう。湊くんが放ったであろう霊素を特定しにかかる。今回は俺が誤魔化しておくが、これ以上やると何かしら疑いをかけられる。なら、ここはいっそのこと退散したほうがいい。バレる前に。」
「……身元を特定されるのを避けるためですか」
「それもあるが、目立ち過ぎたら大学生活に支障が出るぞ。……さて、紙代 律くんだったかな」
縁は呆然としている律の前でしゃがみこみ、彼が落とした「式神の核」を拾い上げた。
「……これ、細工されてないか。不純物が混じっている気がする」
「えっ?」
「君の修行不足とかではなく、外的要因で式神が暴走させられたのかもしれない。……湊くん、これスキャンしといてくれないか。寮の連中がここまで踏み込んでくるまでもう時間がない。寮に証拠を渡せば、無効に主導権が握られる。真実を知りたければこっちが保管するしかない。いいかい?律くん」
「はい、スキャンだけなら大丈夫です」
律はそう返事しながら、「湊」という大学生らしき青年と、その上司のような男をただ見つめることしかできず、やり取りをただ聞き流すだけだった。
「あの……湊先輩。助けてくれてありがとうございます。ただ……」
「お礼は言いよ。ただ、律くんのことを知っていて、助けただけだからね。だから、気にしないでね!」
「うちは民間業者だから、これは宣伝活動みたいなもんだ。……湊くんそろそろ撤収するぞ!寮の連中に見つかって顔が見られる前に、俺達はいなかったとして消えるぞ!」
その数分後、陰陽寮の人間が現場にやってきて、捜査を始めた。異常な霊素は、律から出てきたものと判断され、湊や縁の存在はバレなかった。律は、湊たちが来たことを伏せながら事情徴収に応じた。しかし、一部の隊員は疑問に思うことがある。到着する前に見た、月光に照らされた外で散る白銀の霊素と窓越しにいる二人の姿を。
一方、湊と縁は律の「式神の核」から拝借した術式のデータを寮に見つからないように急いで事務所まで持ち込み、解析をすることにした。
縁は「……この部分の術式に違和感がある。まるで、獣が内側から食いちぎったような」と感じたのだった。
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