第3話:『神代の継承者』
本日は第三話公開します!
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夜の帳が下りた中等部では、異様な空気が敷地内を包みこんでいた。湊が息を切らして正門に着いたときから、違和感を覚えていた。そこはすでに、結界の不具合で片付けられないような警戒態勢が敷かれていた。さらに、校舎内からは、密度の濃い霊気が渦巻いていた。
「……ほんとうに結界の不具合なのだろうか」
湊は八雲端末をかざし、周囲の霊素密度をスキャンした。通常、学校にある結界は五大家と呼ばれる5つの権力を持つ陰陽師らが、結界を展開させている。しかし、現在の結界の状態は極めて不安定でしばらくしたら崩壊しそうなものであるが……。
「――止まれ。ここは現在、陰陽寮の管轄下にある。ここから離れていただきたい」
背後から鋭く低い声が響いた。
振り返ると、陰陽寮の制服を着ている数人の男たちがいた。――陰陽寮の「実務部隊」がそこに立っていた。実務部隊なので、おそらく四位から六位の数多くの経験を積んだ人たちだろう。
「僕は八雲大の学生です。実習の一環で近くにいて……」
「学生か。なおさら帰れ。今の結界の状態は非常に危険だ。崩壊したら命はないかもしれないぞ」
湊はその言葉を聞き、素直に踵を返した。しかし、ふと目を校舎の方に向けると紙代の後継者、紙代 律が立っていた。湊は驚いて、よく目を凝らすと紙代の術式を制御できなくなっている。しかも、霊気の中心は律だ。
「よし、止めに行くか」
湊がそう言いかけたとき、律のいる校舎の3階、理科室の窓が内側から砕け散った。
そこから溢れ出してくる無数の紙の欠片。それは、雪のように舞い、月光に反射し、刃のようにきらめく。
「――総員、防御結界を張れ!」
寮の陰陽師が慌ただしく符を構える中、湊は紙吹雪の中に入る。
中等部の制服を着る少年、律が床に膝をつき、必死に右腕を押さえる。
彼の周囲には、折られたばかりの「式神」が持ち主の制御から外れて暴れまわっている。味方のはずの式神が、怪物となって人に危害を加えようとしている。
(あれが、紙代家の……)
紙代家はかつて「神代」と呼ばれたほど、式神の扱いに長けていた一家だ。ただ、今現在後継者不足に陥り律ただ一人となってしまった。彼がここで潰れれば、式神術の継承は途絶えてしまう。
「……来るな!近寄るな!」
少年――律が血の気の引いた声で叫ぶ。その瞬間、式神が一斉に湊を襲う。
湊は迷わず、八雲端末を操作し、限界まで「標準術式」の出力を高める。
「標準術式・『円界』!出力最大!」
白銀の幕を形成し、式神の攻撃を防ぐ。
しかし、式神の勢いを殺すことはできず更に圧力が高まる。
制御の失った式神の核はどす黒く膨れ上がってきた。
(標準術式じゃ、防ぎきれない……!)
湊は歯を食いしばり、一歩、一歩と前進する。
寮の連中はまだ校内に突入しておらず、ここに自分と律しかいない。
湊は、脳内にある「言ノ葉」の術式を呼び起こし、式神に存在への霊言を下す。
「(……鎮まれ)」
その一言が発せられた瞬間、理科室を満たしていた重い霊気が、まるで時を止めたように凍りつかせた。
一方、校舎の外。
「……おい、今何が起きた?測定値が安定したぞ」
陰陽寮の隊員たちが顔を見合わせながらざわつき始める。
理科室を中心に漏れ出ていた霊気が一瞬にして落ち着いたのだ。
「……やれやれ。湊くん少しやり過ぎやしないか」
縁は息を軽く吐き、誰にともなく呟いた。
その手には昔、仕事で使っていたであろう、古いが手入れの行き届いた一振りの刀が握られていた。
縁は刀をバッグに仕舞い直すと、警察の規制線を通り抜け、湊と律がいるであろう校舎へと歩き出した。
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