第2話:『事務所への依頼と事件』
一応、話の流れとしては、第一章が終わるところまではできているんですけど……投稿しきれますかね……?
「……お待たせしました。『千代田陰陽相談所』の千代田です」
御雲の郊外にある、幾分か昔に建てられたようなアパートの一室。
湊は大学の講義を終え、そのまま縁が指定する現場へ向かった。手には、先程縁から渡された事務所のロゴ入りの派手な、陰陽師らしからぬお掃除バックを持っていた。
「あ……すみませんね。こんな小さなところで」
出てきたのは、一人暮らしをしているご老人だ。依頼内容は『台所の勝手口から、変わった感覚のするところがある』という、典型的な民間の「微細な怪異」だ。「いいんですよ、奥さん。こういうのは早めに対処するのがいいですから。湊くん、準備しようか」
縁はすでに奥の居間に上がり込み、茶菓子を食べながら端末をいじっている。
湊は無言でバックから、安価な素材で作られてそうな符を取り出した。
(……霊素密度、極低。残留思念の塊か)
大学で学ぶ「対怪異戦闘」の理論では、放置するレベルのあまり害のない怪異のレベルだ。しかし、縁の事務所ではそうはいかない。
「湊くん。ただ祓うだけじゃダメだよ。この仕事はお客様から依頼されたもの。だから、不安を除くまでが人セットだ。まずは、この塊を消臭スプレー……じゃなくてこの清浄液で拭いてから、標準術式の『浄化』を最小出力で取り除く」
「……分かりました」
湊は言われた通りに、清浄液を雑巾に湿らせ、勝手口の隙間を掃除した。傍から見ればただの清掃業者だが、実際には湊が拭き取っているのは、こびりついた「負の感情の塊」だった。
掃除を終えた湊は八雲端末を取り出し、かざす。
『――標準術式・浄化。出力0.5%に設定』
端末から柔らかな光を放ち、勝手口を包み込む。大学の試験では「無駄遣い」と大幅に減点されるような、あまりに弱く、しかし隅々まで行き届く術。
「……あら、なんだか急に明るくなったみたい」
ご老人が自然と笑みをこぼす。縁は満足げに頷き、バックから「盛り塩セット」を取り出した。
「仕上げにこれを。1週間毎に取り替えると良いですよ」
アパートを出た後、縁は本日の給料を手渡した。
「はい、これ今日の取り分。五千雲。初仕事お疲れ様」
八雲の通貨、雲。湊はそれを受け取りカバンに入れる。
「……千代田さん。さっきの依頼、術式だけではだめですか。掃除しなくても、祓えたと思うのですが」
「湊くん。お客さんが求めているのは祓うことだけじゃない。『安心』させるとこまでだ。あんた前みたいに、一瞬で消してしまったら、奥さんは納得すると思う?不安を感じるかもしれないんだ」
「……」
湊は昨日の路地裏の件を思い出す。
あの時、自分が口にした「霊言」。縁はそれを目にしていたのかもしれない。しかし、彼はそれに触れようとはしない。それは、縁なりの配慮なのだろうか。
湊もまた、自らの知識に叩き込んだ「言葉」について、あえて確認することはなかった。
その時、湊の端末から大学からの緊急通知が鳴った。
【緊急:国立八雲大学・中等部にて、大規模な結界不具合が発生。付近の学生の立ち入りを禁じ、校内にいる学生は避難をしてください】
「……中等部?」
湊の視線が鋭くなる。
中等部。そこには、特殊三大家が一人。「紙代」家の御子息がいるらしい。
彼は、毎日修行を学校でしているらしくもしかしたらこの事態に気づいてないかもしれない。
「おい、湊くん!?どこに行くんだよ!」
湊は返事を待たず、夜の街へと消えていく。
縁の声も遠ざかっていく。
一人残された縁は、湊が走っていった方向を見つめた後ポケットから端末を取り出した。画面にはかつての同僚――陰陽寮の人間からの着信だった。
「……そういうことか。まったく、元気な学生さんだ。さてと、こっちは湊くんを追いかけるか」
縁は溜息をつくと、先程見せていた笑みを消し真剣な顔つきで湊の後を追い、夜の闇に消えた。
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