第12話:『星見台の怪しき影』
本日も遅れました!今後はなるべく同じ時間帯に上げるよう心がけます!
御雲の北端、星見台。天道家が管理するこの地区は、深夜でも星々の光を遮らぬよう、清浄な霊素で満たされている。
湊と縁は、観測所を見下ろす古い公園の茂みに潜んでいた。
「……あそこだ」
縁が指差す先。観測所の裏門付近で、数人の影が蠢いている。その中心に立つのは、天道家の現当主に酷似した男
――兄の天道 晴景だった。
「……天道家の人間が、なぜあんな連中と」
湊は八雲端末を操作し、その光景を記録する。
晴景は自らの星占術を使い、影たちが「観測」を終えるための結界を維持しているようだった。彼は霊言を使っているわけではない。だが、彼が守るその影たちが放つ歪な気配に、湊は生理的な嫌悪感を覚えた。
(……あの術式。父さんの事件の夜に見た、あの澱みと似ている)
奪われた言ノ葉の術式が、不完全な形で再構成され、目の前で利用されている。その事実が、湊の胸を静かに焦がした。
「湊くん、潜るぞ。相手が誰であれ、この異常な霊素の動きを放っておくわけにはいかないからね」
縁の合図とともに、二人は影の隙を突いて裏門へと滑り込んだ。
夜のひんやりとした空気。中央には浮遊する巨大な水晶があり、その周りを「寮の制服を着た偽物」たちが囲んでいる。
「……誰だ」
晴景が水晶から視線を外し、二人を冷たく射抜いた。
「天の観測を邪魔する不届き者がいるとは。……ほう、そこの学生。八雲大の者か」
晴景の瞳が、湊の持つ霊素の質を値踏みするように細められる。
ある程度の強さの陰陽師は、相手が保有する霊素を見極めることができるが、それができる人物は数少ない。
「……素晴らしい密度だ。寮のエリートでもこれほどのものは珍しい。主が求めていた『器』の候補として、申し分ないな。ここで捕らえ、研究の糧としてやろう」
「……研究?」
湊は短く問い返したが、晴景は答えず、印を結んだ。
「星の導きに、抗うことなどできん。消えろ」
晴景の術式が、無数の光の矢となって放たれる。
同時に、周囲の影たちが不完全な霊言を纏い、湊へと殺到した。不完全な術式は霊言にも似ているが、防御系や攻撃系の術式とも似ている。
「(……『断て』)」
湊は口を開かない。ただ、心の中でその言葉を強く心の中で紡ぎ、右手に持った標準符に意識を集中させた。
傍目には、符を使った標準術式が光の矢を叩き落としているように見えるだろう。だが、実際には湊の放つ無音の霊言が、空間そのものを切り裂き、敵の術式を根元から解体していた。
「湊くん、ここは俺が引き受ける! 君は奥の晴景を叩け!」
縁が自身の端末から雷光の鎖を放ち、晴景の動きを足止めする。
「了解」
湊は一気に踏み込み、偽物の寮員へと肉薄した。
目の前の敵が、奪われた自分の家系の力を使っている。
その傲慢さを、今はただ、拳と「言葉」で粉砕したかった。
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