第11話:『天の星、地の言葉』
すみません!投稿が遅れました!
深夜、千代田陰陽相談所。
運び込まれた律は、縁が用意した霊素を安定化させることができるベッドに横たわっていた。幸い命に別状はなかったが、式神の核を破壊された影響で、深い昏睡状態が今も続いている。
湊は、自らの掌を見つめていた。
(あれは……霊言なのか?)
「……湊くん。コーヒーだ。ちゃんと作ったぞ。今度はブラックでいいな」
縁が静かにカップを差し出す。その横顔には、いつもの軽薄さと笑顔の欠片もなかった。
「……千代田さん。現場にあった天道家の紋章、どう思いますか。星占術を司る三大家が、あのような影に関わっているなんて思いたくないんですけど」
「……慎重に考えよう。天道家の予報は八雲の治安維持に貢献しているものだ。もし一族が組織的に動いているなら、今頃俺たちは狙われているはずだ。だが、全く狙われていない。ここに襲撃が来てないからだ。……考えられるのは、天道家の術を扱うことができる人間、それも天道家の中心近くにいる人物可能性だ」
縁はデスクの椅子に深く沈み込み、録画した画面に浮かぶ流星の紋章を睨んだ。
「紋章だけじゃ証拠にならない。だが、奴らが『天道家の力』を利用しているのは影が展開した術式を見るに間違いないだろう」
その時、ベッドの上で律が小さく呻き声を上げた。
「……う、……ぁ……」
「律くん!」
湊が駆け寄ると、律はうっすらと目を開けた。だが、その瞳にはまだ影が見えているのか。恐怖の色が焼き付いている。
「……湊、先輩……? 逃げ、てください……」
「大丈夫だ、ここは千代田陰陽師相談所だから安全だよ。何があったか、覚えているか?」
律は震える唇を噛み締め、途切れ途切れに、奴らが漏らした言葉を口にした。
「……あの影、たちが、言っていました……。『次は、天の観測が終わる前に、言ノ葉を潰さなければならない』……って」
「言ノ葉家……。確か、以前千代田さんが仰ってたすごい一家のことですよね。」
湊は冷静に、言葉を漏らした。大学生として、千代田さんに教えてもらった知識だけで答えるよう心がけた。だが、その内心は穏やかではない。どこかにある葉を探すように、敵の矛先は自分へ確実に自分たちを捉えようとしている。
「ああ。奴らは言ノ葉家を狙っている。律くんを狙ったのは術式を手に入れて探すためだろう。でなければ、探し出せないからな。」
縁の言葉に、湊は静かに拳を握った。敵は言ノ葉家に対して、明確な敵意を持って動いている。それは、今の自分たちだけではなく、かつての栄光を失いつつある言ノ葉の「歴史」さえも、完全に消し去ろうとする意志に思えた。
「千代田さん。まだ天道家そのものが黒幕だと決まったわけじゃないですが……このままじゃ律くんも、言ノ葉家の人たちも危ない」
「ああ。だが、闇雲に突っ込んでも返り討ちだ。しかも、もし天道家自体関わりがなければ、俺たちの命が狙われる。まずは奴らがどうやって天道家の術式を『流出』させているのか、もしくはどう扱っているのか、そのルートを叩く。……湊くん、御雲の星見台地区付近で、最近非公式な霊素の売買が行われているって情報がある。そこから洗うぞ」
湊は静かに立ち上がり、上着を羽織った。
敵は言ノ葉家の力を封じ、八雲にある懸念される最大の脅威を潰そうとしている。ならば、その前に自分ができることをやるしかない。
「……行きましょう。八雲の悲劇が起きる前に」
「ははっ、その意気だ。バイト代、しっかり稼いでもらうぞ」
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