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三題噺もどき4

吸血鬼さんと蝙蝠くん

作者: 狐彪
掲載日:2025/12/27

三題噺もどき―はっぴゃく。

 




 ピタリと閉じられたカーテンの向こう側は、まだきっと暗く冷たい。

 朝日が昇り、暖かな陽が差し込むのはもう少し後だろう。

 それでも、遠くから電車の走る音が聞こえてくる。

 車が通り過ぎる音が聞こえてくる。

「……」

 あまりにも早すぎやしないかと、初めて聞いた時は思ったが、もう慣れてしまった。

 むしろこの音が聞こえてこないと、眠りにもつけないと言ってもいいかもしれない。

 ……まぁ、それは言い過ぎなのだけど。

「……」

 眠っていた彼らが、これから紡ぎ出す今日は果たしてどんな一日なのだろう。

 楽しいことがある?嬉しいことがある?

 悲しいことや、辛いこと、苦しいことばかりがある?

「……」

 いいことばかりではないだろう。

 辛い事ばかりの連続かもしれない。

 誰かにとってのいい日は、他の誰かにとっての最悪の日だったりする。

「……」

 私の今日は、いつもと変わらない平凡な一日だった。

 起きて、ベランダに出て。

 休日だからか、いつもより静かな住宅街を眺めて。

「……」

 部屋に戻って、家の従者が作った朝食を食べて。

 ―昨日は和食だったのに、今日は味噌汁にパンだった。いいのだけど。味噌汁は好きだしパンも嫌いなわけではないから。

「……」

 それから、仕事をして。

 ―あれじゃないこれじゃないと頭を抱えたり、急ぎで飛び込んできた仕事を軽く恨みながら進めたり、連絡が着たタイミングでえんぴつが折れてちょっとイラっとしたり。

「……」

 今日の昼食は、軽めのパスタだった。

 最近色々と食べ過ぎていますからね、だと。

 ―作っているのはお前だし、その量を食べさせているのはお前だと言おうと思ったが、言わなかった。そんなこと言ったら納豆パスタが出てくる。美味しいのは分かるが、苦手なものは苦手なのだ。

「……」

 それから、二人で散歩に出かけた。

 まだ、一人で行くのは少し心細い。

 それに、二人の方が暖かで、楽しいことを知った。

「……」

 3日ぶりに、あの公園に行った。

 桜の木はなんだか、更に寂しく見えて仕方なかった。

 真っ白な亡霊は、まだたまに顔を出すけれど、もう。

「……」

 帰宅して、ほんの少しだけ仕事をして、いつもの休憩時間になった。

 呼ばれて、リビングに行けば、何を間違えたのかチョコレートの滝が机の上に置かれていた。その周りには、苺やましゅまろ、ケーキの生地のようなもの……などなど食材が並んでいた。

 ―昼食を軽くしたのは、実はコレのためなのではと思った。

「……」

 そして、それがどうにも楽しくて、食べ過ぎてしまって。

 ただでさえ甘いものには、アイツ程耐性がないから、胸焼けした気分になった。

 その後も仕事をするつもりだったけど、急ぎの仕事は終わったし、他の仕事は明日でもいいようなものだったから、見送った。

「……」

 いつもは仕事をしている時間に、リビングで読書をしていた。

 それもまぁ、チョコレートの食べ過ぎで、胸焼けして集中はできなかったけど。

 直前まで食べていたのに、そろそろと夕食の支度を始めるアイツが凄いと思った。

「……」

 それから、風呂に入って体を温めた。

 ジワジワと広がる熱に、ほどけていく体が、心地よかった。

 風呂は心の洗濯―とてもいい言葉だ。

「……」

 最後に、夕食を食べた。

 出汁で味付けされた、あっさりとしたミルフィーユ鍋だった。

 体の中から温まり、あぁ、今日もいい一日だったと、なんとなくそんなことを思った。

「……ふぁ……ご主人、」

 欠伸をしながら部屋に入ってきたのは、片づけを終え、寝る準備を整えた、家の従者だった。

 後ろ手に戸を閉め、次の瞬間には蝙蝠がそこに飛んでいた。

 眠たそうにふらふらとしながらも、器用に鳥籠の中に入っていく。

 あの羽でどうしているのか、ご丁寧に扉まで閉めるのだから、本当に器用なものだ。

「……」

 その中で、逆さにとまり、羽をたたむ。

 むにゃむにゃとしていて、なんだか可愛らしい。

 いつも見慣れている光景ではあるけれど。

「……おやすみ」

「おやすみなさい……」

 私も静かに、布団に入る。



 また、明日。













 お題:えんぴつ・チョコレート・桜

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